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2015 10,12 11:44 |
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■認知症・高次脳文献レビュー Lite版
2015年10月2週号 目次 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件 02. 失語症・・・・・・レビュー1件 03. 前頭葉ほか・・・・レビュー1件 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory 【am010】外傷性脳損傷患者における段階的ノイズ妨害刺激トレーニングによる聴覚的な選択的注意の改善 ☆ 「Impaired auditory selective attention ameliorated by cognitive training with graded exposure to noise in patients with traumatic brain injury 」 Neil M. DundonSuvi P. DockreeVanessa ほか Neuropsychologia Vol.75 August, 2015, p74-87 外傷性脳損傷患者に対し無関係なノイズとターゲットを同時に聴かせる段階的注意トレーニング(APT)を実施、事象関連電位により変化を測定したという研究。 結果、無関連ノイズトレーニングを行った群では事象関連電位の増加や他課題への転移がみられたのに対し、未トレーニングの群では変化が見られなかったとのことです。 attention process training(APT)は注意トレーニングの代表的なプログラムですが、視覚的注意課題の方が使いやすいので、ついそちらばかりになってしまいがちです。 著者らも述べていますが、ノイズの多い環境では気が散ってうまく判断や行動ができないというケースは意外に多いと考えられます。 このような聴覚系の注意トレーニングの必要性を再認識させてくれる報告です。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a024】失語症への長期的対処:会話パートナープログラムはどこまで届くか? ☆ 「 Addressing the long-term impacts of aphasia: how far does the Conversation Partner Programme go? 」 Ruth Mc Menamin, Edel Tierney and Anne Mac Farlane ほか Aphasiology Vol 29 Issue 8, 2015, p889-913 12ヶ月間会話パートナープログラムを受けている失語症者5名から心理面・社会面の問題について実情を聴取したという報告。 その結果、失語症者としての生活経験から(1)就学前への逆戻り感、(2)疲労感、(3)刑務所のよう、(4)感情、(5) 言葉を話すことができない、(6)疎外感、(7)変化と適応、(8)家族、の8つのテーマが得られたとのこと。 そして家族外の人と接する会話パートナープログラムが「就学前への逆戻り」のようなコミュニケーションの負の感情や「言葉を話すことができない」という感覚を軽減することが明らかとなり、 社会的なプログラムが疎外感や刑務所のような感情を軽減することができると考えられた、と著者らは結んでいます。 会話パートナープログラムはコミュニケーションの不便さの解消やコミュニケーションスキルの向上などがその意義として挙げられますが、患者本人が抱くさまざまな心理・社会的問題の軽減に役立つことを示す報告です。 特にコミュニケーションというだけで言えば相手は家族でも良いことになりますが、家族外の人間とコミュニケーションとることの意義と効用を教えてくれています。 ◆03. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others 【f014】脳卒中後の代謝、脳、身体、および認知機能へのコミュニティ運動療法の効果 ☆ ☆ 「Effects of Community Exercise Therapy on Metabolic, Brain, Physical, and Cognitive Function Following Stroke 」 Sarah A. Moore, Kate Hallsworth, Djordje G. Jakovljevic ほか Neurorehabil Neural Repair Vol.29 August, 2015, p623-635 50歳以上で脳血管障害後6ヶ月の40名を19週・3回/週、コミュニティベースで運動をさせる群とストレッチのみ行うコントロール群に分け、グルコース制御と脳血流、心肺機能、血圧、脂質、身体組成、脳萎縮、脳代謝、認知機能を評価し比較したという研究。 結果、内側側頭葉の血流量が運動で増加し、また灰白質の萎縮・心肺機能・拡張期血圧・コレステロールおよび認知機能も運動で改善がみられた、とのことです。 脳血管障害後の患者の生活はどうしても家に閉じこもりがちになってしまうと考えられます。そこで運動をというわけですが、運動拠点をコミュニティに設定してあるところがミソと考えられます。 これにより家から出ることになるだけでなく、近隣住民との交流も含まれる可能性があるからです。 このほど多様な効果は単に運動のためというだけでなく総合的な刺激の可能性があるのではないでしょうか。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号では「脳卒中後の代謝、脳、身体、および認知機能へのコミュニティ運動療法の効果」が興味深い内容を含んでいました。 最近、運動が認知機能の促進に効果的という報告がラッシュのように次々となされていますが、率直に感想を述べると、結論はそれほど単純なのだろうか、という気がしています。 なぜなら運動にも色々なタイプのものがあり、単純な筋トレ的運動もあれば、周囲に合わせたり適切な運動コントロールが不可欠など注意や認知能力をかなり要する運動まであるからです。 さらにこの論文のように場所や環境による影響もあるでしょう。ゲーム的要素が強く楽しさが溢れ出てくる運動もあれば、単調で退屈な繰り返し運動もあると思います。 認知面・コミュニケーション面・心理面などひとくちに運動といっても多種多様な要素を含んでいるわけで、これらの要素を明確にせず単に運動が良いという結論には疑問を感じざるを得ません。 ◎認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年10月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ◎次号 発行予定日 2015年10月26日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク PR |
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2015 09,28 13:17 |
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■認知症・高次脳文献レビュー Lite版
【2015年9月4週号 目次】 01. 失語症・・・・・・レビュー2件 02. 前頭葉ほか・・・・レビュー1件 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 失語症 ◆ Aphasia 【a022】失語症を背景とした選考に基づく健康関連QOL ☆ 「Preference-based health-related quality of life in the context of aphasia: a research synthesis」 David G. T. Whitehurst, Nicholas R. Latimer, Aura Kagan ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p763-780 8つの出版物・6研究から失語症者の健康関連QOL(HRQOL)の評価状況を調査した報告。 結果、幾つかではEQ-5Dが使われていたが、HRQOLの評価がなされていなかったり、一つでは画像に基づいたEQ-5Dバージョンが考案され用いられていたとのこと。 失語症でのHRQOL評価の妥当性や実証研究には不足があり、今後開発や大規模な検証が必要だろうと著者らは結んでいます。 HRQOLは様々な疾患の患者さんや健康な方のQOLを測定する質問紙です。 これにはSF-36、SF-12、SF-8など様々なバリエーションがありますが、EQ-5Dは「移動,身の回りの管理,普段の活動,痛み/不快感,不安/ふさぎ込み」の5項目からなるバージョンです。 今の状態と完全に健康な状態との比を計算することで効用値を算出します。日本版も出ていて世界中で広く用いられていますが、当然失語症は想定されていません。 失語用に改変バージョンを作っても信頼性に欠けてしまいます。失語症者に用いたいなら、可能かどうかは分かりませんが著者らの言うように何らかの抜本的な対策が必要です。 【a023】意味障害と動詞過去形の産生:不規則動詞の過去時制産生の近接と頻度 ☆ 「Semantic impairment and past tense verb production: neighbourhood and frequency modulation of irregular past tense production」 Lara Harris and Glyn Humphreys Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p799-825 後頭葉皮質萎縮および意味的障害を持つ一症例に動詞産生テストを実施、動詞過去形の産生で意味的に曖昧な場合に音韻的近接が手助けになるかどうかを調査したという研究。 結果、単語頻度や意味の手助けが低い場合に音韻的近接の効果は非常に強く働いたとのことです。 英語動詞の不規則な過去形の生産は意味との関連で単一機構モデルで説明可能と考えられる、と著者らは結んでいます。 英語では動詞が過去形になる場合にgo-wentのように全く変化してしまう不規則動詞がありますが、その中でもsleep–sleptのように音が似ているものがあります。 不規則動詞でも意味がしっかり想起できている場合や高頻度語では過去形想起に差はないが、意味が曖昧な場合・低頻度後の場合には似ているものが想起しやすかったということです。 日本語とは全く異なる体系ですので動詞の不規則変化といっても馴染みのないところですが、音韻類似効果そのものは日本語でもあり、語頭音ヒントもこれと似たようなものです。 意味と音韻の単一機構モデルも、そもそも同一機構で構築して問題ないものと思われますし、そのようなモデルもあります。特に新規性はみられないように思われますがどうでしょうか。 ◆02. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others 【f013】片麻痺の病態失認における危機意識とエラーベーストレーニング ☆ 「Error-based training and emergent awareness in anosognosia for hemiplegia」 V. Moro, M. Scandola, C. Bulgarelli, ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 4, 2015, p593-616 4名の慢性期片麻痺病態失認患者に「エラーフル」または「エラー分析」のリハビリ訓練プログラムを実施したという報告です。 「エラー分析」とは特定の実行行動について戦略とエラーを分析し、その失敗の理由を議論するという方法です。結果、すべての患者で改善がみられたとのこと。 著者らは病態失認患者でも危機回避は可能、としています。 たいへん正攻法な取り組みで結果も良かったようですが、このような病態失認患者の問題はトレーニングするとその課題はクリアできるものの、他には全く広がらない、というところにあります。 トレーニング課題を増やしていってもその傾向は変わらず、そこに大きな壁があると言わざるを得ません。 この4例も特定の実行行動のトレーニングを行い、その結果が良かったということで、決して障害が軽減したわけではありません。 もっと根本からの改善を目指すならやはり注意・認知トレーニングも必要と考えられます。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号は特にこれといった目立つ論文はありませんでしたが、病態失認に関することでひとつ。 転倒など危険行動を防止することは非常に重要ですが、認知的な危険防止能力と行動的な危険防止能力は別物と考えられます。 病態失認の評価は認知的な課題でなされやすいのですが、実際の危険は行動的な能力に左右される面が大きいのではないでしょうか。 病態失認へのアプローチにこれといった決め手がないのが現状ですが、このあたりの研究がもう少し進めば新たな展開がありうると思われます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年9月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ◎次号 発行予定日 2015年10月12日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 09,14 05:41 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年9月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年9月2週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件 02. 失語症・・・・・・レビュー2件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※ 注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am009】Googleカレンダー:重度記憶障害者による単一実験デザインスタディ ☆ ☆ 「Google Calendar: A single case experimental design study of a man with severe memory problemsm」 Victoria N. Baldwin and Theresa Powell Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 4, 2015, p617-636 重度記憶障害と遂行機能障害を伴う外傷性脳損傷の43歳男性に記憶補助として携帯電話のGoogleカレンダーの使用を試みたという報告。 6週間のベースライン期の後、6週間使用し、改善度合いを評価したところ、3ターゲットを使った記憶課題・主観的尺度ともに改善がみられたとのこと。 著者らはGoogleカレンダーの有効性を強調するとともに、症例が他の記憶補助手段にはとても消極的であったことから、個人のライフスタイルや信念に合う記憶補助手段の選択が重要としています。 これまでにも記憶補助手段として携帯電話のスケジュール機能を利用したという報告は複数ありましたが、今回はより具体的にGoogleカレンダーを用いたという報告です。 この種のものはどれが優れているかということよりも、どういうものに慣れていてその人が使いやすいか、ではないかと思います。 症例は43歳と若くIT機器にも馴染みがある世代と考えられ、それゆえGoogleカレンダーが用いやすかったのでしょう。 判に押したように従来機器を推奨することなく、世代に合わせた対応は確かに必要です。 ただ今後IT機器は全世代に普及していくと考えられますので、記憶補助手段はより高機能で利便性の高いものの導入が容易になっていくことでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a020】失語症における動詞産生上の個人ー社会性指向グループ療法の効果 ☆ 「Effects of impairment-based individual and socially oriented group therapies on verb production in aphasia」 Elizabeth Louise Hoover, David Caplan, Gloria Waters ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p781-798 12名の慢性失語症者に6週間の間隔を置き個人・グループ・混合の条件で動詞訓練を行ったという研究。 結果、言語機能・コミュニケーション能力・QOLで有意な変化がみられたが、個人・グループ・混合の条件による差はなかったとのことでした。 個人訓練とグループ訓練のいずれが優れているか、というのはずっと議論されている問題です。 いまだに結論は出ておらず、今回の報告でも差はなかったとのことですが、グループにはグループの長所、個人には個人の長所があるのは間違いないと思われます。 そして外向的な人と内向的な人があるように、個々人の性質によってグループに向いているケースと個人に向いているケースがあるというのが本当のところではないでしょうか。 もうひとつ、グループ訓練はファシリテーターの技量や構成員の資質によって治療効果が大きく左右されます。 盛り上げ役やムードメーカーというような存在の有無です。そのあたりをどのようにコントロールするか。 これはこうした調査を行うには考慮されるべき重要な問題と考えられます。 【a021】 脳卒中後の早期失語症訓練:急性期と亜急性期における行動および神経生理学的変化 ☆ 「Aphasia therapy early after stroke: behavioural and neurophysiological changes in the acute and post-acute phases」 Annelies Aerts, Katja Batens, Patrick Santens, ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p845-871 脳血管障害で発症した47歳中程度非流暢性失語の男性。 急性期に7週間で30時間の従来的言語訓練、亜急性期の3週間に30時間の集中的言語訓練、さらにあと3週間に30時間の第2期集中的言語訓練を実施したという研究。 それぞれの期ごとにN400およびP300の事象関連電位を測定し行動および神経生理学的変化をみています。 結果、症例はどの訓練後でも全般に事象関連電位に改善を認め、非治療期にも改善は維持されたが、N400でみると集中的言語訓練の方が従来的訓練に比べ良好であった、とのことでした。 事象関連電位 (ERP) とは、計測される脳波の中で思考や認知などの結果と考えられる波形です。 P300やN400がよく用いられ、N400 とは刺激提示から約 400 ミリ秒後に発生する陰性の電圧変位、P300 成分とは刺激提示から 300ミリ秒後に発生する陽性の電圧変位です。これが現れるとなんらかの高次脳活動がなされたということになりますが、もちろん詳細なことまではわかりません。 この研究では改善指標として事象関連電位を使っていますが、これで分かるのはあくまで何らかの高次の脳活動がみられたということだけです。 詳細は分かりませんから、やや割り引いて考える必要があります。 それでこの集中的言語訓練は3週間に30時間ですから1日平均で約1.5時間という計算になります。 比較対象になっている従来的訓練の方は7週間で30時間ですから1日平均0.6時間です。 集中的言語訓練は従来的訓練の2.5倍行っている計算になりますね。 これだけではなんともいえませんが、発症からの時期よりも実施の合計時間の方が改善要素として大きい可能性もあります。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 「Googleカレンダー:重度記憶障害者による単一実験デザインスタディ」は急速に生活スタイルが変わりつつある現代を反映した論文であったと思います。 テレビをほとんど見ず、スマホを使って動画サイトや音楽を楽しみ、LINEを中心にコミュニケーションをとる世代と、IT機器をほとんど使わずテレビと新聞と電話で生活する世代とでは、嗜好も馴染みも生活スタイルも全く異なると考えられます。 これからの世界では人々の生活スタイルはもっともっと細分化し、好みも生き方も多様になってくることでしょう。 当然ニーズも様々になってきますので、これを一括りに考えず、それぞれに合わせた数多くの選択肢を用意することが望ましいでしょう。 普段からの世情の情報収集と相応の準備が求められます。 ◎次号 発行予定日 2015年9月28日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。 QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 08,24 07:34 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年8月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年8月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 失語症・・・・・・レビュー2件 02. 前頭葉機能ほか・・レビュー1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a020】健忘失語症における意味プライミング:クロスモダール方法論を用いた調査 ☆ 「Semantic priming in anomic aphasia: a focused investigation using cross-modal methodology」 Simone R. Howells and Elizabeth A. Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p744-761 11名の健忘失語症者と11名の健常者に語彙判断課題を実施、ターゲット語と関連語・無関連語・非語のペアで意味プライミング効果の有無を調べたという研究。 結果、健忘失語症者はコントロール群に比べ反応時間は遅いが、より短い潜時でプライム効果がみられたとのことでした。これらは新たな評価や技法に繋がる可能性があると著者らは結んでいます。 意味プライミング効果とは、事前に脳に入った刺激により脳の意味判断機能が活性化、つまりエンジンがかかった状態になり、次に入った刺激の意味把握がされやすくなるという現象です。 これを利用したトレーニング法としては意味セラピーという健忘失語症者の喚語訓練が有名です。今回の論文ではプライミングの状況を詳しく調べてはいますが、正直なところ意味セラピーを上回るような新たな評価や訓練法に繋がるデータとはいいがたい印象です。 著者らも具体的なビジョンは呈示していません。新たな評価や訓練法に繋げるにはなんらかのもうひとひねりが必要と思われます。 【a021】失語症における音声セグメンテーション ☆ 「Speech segmentation in aphasia」 Claudia Peñaloza, Annalisa Benetello, Leena Tuomiranta ほか Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p724-743 120名の若者と14名の慢性失語症者、そして14名の高齢者に人工言語を用いたセグメントテストを行い、セグメント能力を調べた研究。 結果、失語症者は全体ではセグメントはできており、高齢者と差はなかったが、個別にみると左下前頭領域損傷の4例がチャンスレベルを下回っていたとのこと。また、セグメント能力は失語症の重症度と関連はなく、言語性短期記憶と相関していたとのことでした。 セグメント能力とは「そこにいぬがいる」と連続して耳に聴こえた音に切れ目を入れ、「そこ」「に」「いぬ」「が」「いる」という言葉の連なりだな、と判断できる能力のことです。 これができなければ聴いた音を単語に分解できず意味の理解はできなくなってしまいます。セグメント能力から失語の理解障害を考えるというのはレアな視点ですが、問題はなぜセグメントが困難になるかということです。 著者らは言語性短期記憶の問題を指摘していますが、これのみに原因を帰するだけで良いのかは疑問です。理論的には、言語性短期記憶の問題だけでなく、音の認知が悪い場合、語彙判断が悪い場合、いずれも考えられます。ここは重要な点ですのでもう一段深い検証が必要でしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f012】市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーションは、多発性硬化症における持続的注意と遂行機能を改善した ☆ ☆ 「A Low-Cost Cognitive Rehabilitation With a Commercial Video Game Improves Sustained Attention and Executive Functions in Multiple Sclerosis: A Pilot Study」 Laura De Giglio, Francesca De Luca, Luca Prosperini ほか Neurorehabilitation Neural Repair Vol 29, 2015, p453-461 52名のMS患者と17名のコントロール群に家庭で8週間の任天堂の脳トレゲームを行わせ、注意・処理速度・ワーキングメモリの変化を測定した研究。 結果、Stroop TestやSymbol Digit Modalities Testは有意な改善がみられ、PASATやQOL尺度でも有意ではなかったが改善がみられたとのことです。 日本でもひところ大はやりした脳トレゲームを利用した自宅トレーニング法です。これらは基本的に注意トレーニングを中心に構成されていますので、きちんと実施してもらえば、馬鹿にしたものでない、ある程度の効果はあると考えられます。 ただ対面で人が実施するのと比べると、やりやすいように大きさや操作などの工夫ができないとか、適切なタイミングで励ましたりできないとか、開始に向かって誘導できないとか、いろいろ使いにくいところがあるわけですが、それさえ問題視しなければ充分使える方法と思います。手間がかからない上に低コストはとても魅力的です。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号もちょっと不作気味ではありましたが、その中で「市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーション」は視点の転換により有益性を示した研究と言えるでしょう。 市販のゲームの利用というのは確かに簡便な方策であり、実際それを意図して市場投入されているものではありますが、逆にだからこそ専門家には欠点がみえやすく、安易という言葉が脳裏をよぎり、導入に二の足を踏みがちのように見受けられます。 しかし論文にもあったように一定の効果はあり、しかも費用・介護負担・労力・継続性全て含めたコストという視点からみれば、これほど優れたものはないと思われます。 治療の妥当性や成績で欠点はあっても、これからの時代は治療・介護のマンパワーが著しく不足し、理想的な条件を整えることは難しくなると予測されます。広い意味でのコストという概念なしに有効性の検討はありえなくなるのではないでしょうか。 ◎次号 発行予定日 2015年9月14日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。 その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。 QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 08,10 09:57 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年8月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年8月2週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 失語症・・・・・・レビュー3件 02. 前頭葉機能ほか・・概要1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a017】 言語理解とワーキングメモリの寄与:失語症タイプの差異効果 ☆ 「The contribution of working memory to language comprehension: differential effect of aphasia type」 M.V. Ivanova, O.V. Dragoy, S.V. Kuptsova, ほか Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p645-664 アイトラッキングを利用してワーキングメモリー課題を流暢性失語19名、非流暢性失語16名、健常者36名に実施、失語と認知機能障害の関連を検討した研究。結果、失語群はワーキングメモリー課題成績が有意に低下しており、非流暢群では言語理解との関連が見られた、とのこと。これらから著者らは失語には認知障害が合併する可能性があり、それらは言語症状をより悪化させる傾向がある、と結んでいます。 アイトラッキングは視線移動を可視化してくれる装置、ワーキングメモリーは数十秒〜数分間だけ作動する記憶の一時避難機構です。ワーキングメモリーの障害の有無は失語があるとよく分からないのですが、アイトラッキングという非言語的な手段を使えば失語の影響を受けないのでその障害を検出できるということです。ただ結果はどうもすっきりしません。結果からは失語とワーキングメモリーが関連するということになりますが、記憶を一時避難させておく際に言語的なバックアップができないために生じたワーキングメモリーの低下なのか、損傷部位が失語とワーキングメモリーで重なる面があるから生じた低下なのか、単に失語だと脳の損傷量が大きいために生じたーワーキングメモリーの低下なのか、このままでは色々な解釈が可能です。ここはやはり脳の損傷量をマッチングさせた脳損傷非失語群を設定し、そことの比較をすべきでしょう。アイトラッキングを用いた評価は有望ですが、議論はデータが揃ってからということになるでしょう。 【a018】流暢失語症の談話における語彙不足の影響 ☆ 「The effect of lexical deficits on narrative disturbances in fluent aphasia」 Sara Andreetta, Andrea Marini Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p705-723 流暢失語症20名と健常者20名に談話をさせ、ミクロ言語学な語彙・文法障害がマクロ言語学な談話産生にどう影響するか検討した研究。結果、語彙障害は談話の一貫性を低くし、語彙の減少は産生エラーの一貫性と相関がみられたとのこと。これらからミクロ言語学な困難はマクロ言語学な処理に影響すると考えられ、ミクロ言語学とマクロ言語学それぞれのレベルを評価する必要がある、と著者らは結んでいます。 マクロ言語学とは談話など人の言語行動に関するあらゆる事柄を対象とした研究で、ミクロ言語学とは社会とは切り離した個人の言語構造などを対象とした研究です。従来の失語症分析はミクロ言語学的な視点が中心でしたが、近年はマクロ言語学の勃興を反映して失語に対しても談話研究が比較的盛んになされるようになってきました。要するにコミュニケーションとか伝達性という視点を入れて考えようということで、著者らもその重要性を提言したいようですが、今のところまだエポックメイキング的な展開には至っていないようです。 【a019】 外傷性脳損傷後のジェスチャーの使用:予備的な分析 ☆ 「The use of gesture following traumatic brain injury: a preliminary analysis」 Min Jung Kim, Julie A.G. Stierwalt, Leonard L. LaPointe ほか Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p665-684 30名の外傷性脳損傷者と32名の非脳損傷者にAdolescent成人喚語テストを行い、ジェスチャーの使用頻度やパターン、使用手を調査したというもの。結果、外傷性脳損傷者では3倍多くジェスチャーを使用しており、特に指差しが多かったとのこと。外傷性脳損傷者でのジェスチャーは語彙検索を容易にしているのではないかと著者らは推測しています。 ジェスチャーというのは非言語的コミュニケーション方法の代表的なものですが、健常者でも多用する人もいれば、ほとんど使わない人もいます。注目させようとして使う人もいれば、自分の抽象概念を形にしたくて使う人もいます。無意識に使っている人も多いと思います。ジェスチャーとは実に多様な意図が込められた、決して一様ではない現象です。脳損傷者、特に失語症者でジェスチャーがどう使われているのか、一度徹底的に分析してみることは必要なことと思われますが、意図や方法、病前習慣や伝達内容など全て勘案して分析しないとせっかくの労力がもったいないことになってしまいそうです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f011】 「高次脳機能障害者の就労と神経心理学的検査成績との関係」☆総合リハビリテーション 43巻 7号、2015、p653-659 高次脳機能障害29名(平均32.1歳)に3か月間の注意力の認知訓練後、就労・未就労と神経心理学的検査の下位項目との関連を調べた研究。結果、認知訓練前ではWMS-R遅延、認知訓練後ではWAIS積木の得点が高いケースが就労者に多かったとのことです。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号は雑誌発刊の谷間時期に当たっているため掲載論文が大変少なく、分野も偏ったものになってしまっています。しかも質的にも今ひとつで全体にパッとしない内容であることをお詫び申し上げます。 今号の中ではアイトラッキングシステムが気になりましたので、ここで言及します。アイトラッキングシステムは実験装置としては何十年も前からある、既によく知られた存在ですが、昔の装置は大掛かりで高価でとても使いにくいものでした。それが今はテクノロジーの進歩により、以前とは比較にならないぐらい小型化して安価になり扱いやすくなりました。前号でもアイトラッキングシステムを用いた研究論文を紹介しましたが、臨床研究に応用しやすくなってきていることは確かです。ただ、安価とはいっても数十万円はしますので、まだ日常臨床で気軽に使えるほどではありません。現時点ではあくまで研究のための装置という位置づけなのは致し方ないところです。しかしおそらく10年以内にメガネ型のようなウェアラブルディスプレイが実用化されると予測されます。もしメガネ型ならそのl利点を活かすために必然的にアイトラッキングシステムがその中核機能として利用されるはずです。そうなれば日常臨床への応用はぐんと進むと考えられます。その時が待ち遠しいものです。 ◎次号 発行予定日 2015年8月24日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 07,27 10:38 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年7月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年7月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・概要1件 02. 認知症・・・・・・概要1件 03. 失語症・・・・・・レビュー2件 04. 前頭葉機能ほか・・レビュー1件、概要1件 05. 頭部外傷・・・・・レビュー1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am008】 中〜重度の記憶障害者におけるスマートフォンやPDA使用の長期維持 ☆ 「Long-term maintenance of smartphone and PDA use in individuals with moderate to severe memory impairment」 Eva Svoboda, Brian Richards, Christie Yao, ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 3, 2015, p353-373 スマートフォンやPDAの使用トレーニングを行った中〜重度記憶障害10例の12〜19ヶ月後の使用状況の調査。19ヶ月後でも記憶障害の高い信頼性で効果は継続されていたとのことです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 認知症 ◆ Dementia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【d015】「日本語版The Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の遅延再生における床効果の検討」☆ ☆ 追分千春、大日方千春、田畑千絵、塚田大剛、ほか 老年精神医学雑誌,26巻5号、2015、p0531-0538 記憶障害の評価として日本語版MoCA-Jの記憶と遅延再生を活用できないか234人の患者で検討した研究です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a015】 二重課題パラダイムを用いて、失語症者と非失語症者で注意配分を評価するための新規な視線追跡方法 ☆ ☆ 「A novel eye-tracking method to assess attention allocation in individuals with and without aphasia using a dual-task paradigm」 Sabine Heuer, Brooke Hallowell Journal of Communication Disorders Vol 55, May-June, 2015, p15-30 26名の失語症者と33名の健常者にシングルとデュアルタスクの注意課題を行いアイトラッキング指数との関係を検討したというもの。結果、アイトラッキング手法は失語症の有無にかかわらず注意配分を評価するために有効と考えられたとのことです。 アイトラッキングとは視線移動の軌跡を可視化する手法のことをいいます。注意機能の評価には通常TMTとかストループテストなどを主に使いますが、どちらも文字や言語を使いますので、失語症者では失語でできないのか注意障害でできないのか、判別がうまくできないのが現状です。これはそれを解決しようとするもの。 デュアルタスクを行っているので確かに注意機能の評価になっています。アイトラッカー装置はウェアラブルなものも出て便利になっていますが、結構な値段ですし簡便とはいえないところが問題です。ここが解決しないと普及にはなかなか至らないでしょう。 【a016】「失語症者に対する項目間の意味的関連性を統制した聴覚的理解課題の成績ー状況関連性とカテゴリー関連性を用いてー」☆ 津田 哲也、吉畑 博代、平山 孝子、ほか 高次脳機能研究 33卷4号、2013、p414-420 35名の失語症者と10名健常者に、目標項目1、状況・カテゴリー関連項目1、状況またはカテゴリー関連項目1、無関連項目2、の5択からなる「音声単語と絵のマッチング課題」27 問を実施したというもの。結果、軽度失語群では状況関連性のあるエラーのみがみられ, 中等度失語群ではカテゴリー関連性だけのエラーも出現し, 重度失語群では状況・カテゴリーとも関連のないエラーが出現したとのこと。 失語症者の理解課題の成績には状況関連性も影響を及ぼすことが明らかとなったと著者らは結んでいます。 カテゴリー関連とは「犬」と「猫」というような似たもの、状況関連とは「犬」と「首輪」のように同じ状況におかれるものです。 せっかく状況関連性の影響を指摘しても、この課題で見られるエラーが意味照合の際の状況関連性エラーなのか、音韻認知の際の状況関連性エラーなのか、そこがはっきりしないと議論がぼやけてしまいます。音韻認知に障害のあるケースとないケースに分けて解析すればもっと議論が進むと思われます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f009】 重度脳損傷によるコミュニケーション不可能患者のコバート認知の保持 ☆☆ 「Preserved Covert Cognition in Noncommunicative Patients With Severe Brain Injury?」 Caroline Schnakers, Joseph T. Giacino, Marianne Løvstad, ほか Neurorehabilitation Neural Repair Vol 29 May, 2015, p308-317 最小の意識状態・植物状態という条件に当てはまる126例と14名のコントロールに自分の氏名を100回聴かせ事象関連電位の変化をみた研究。結果、9例で前頭-頭頂葉に渡る広い範囲で他には見られない反応がみられたとのこと。 これらから患者は表には現れないコバート認知をしており、コミュニケーションに役立つ可能性が考えられたとのこと。 コバート認知とは自分では分からないながら、無意識に脳が情報を受け取って認知して影響を受けているということです。聴覚は五感の中でも最も保持されやすいといわれていますので、これはそれを利用した研究。 一見無反応なようでも脳波は反応しているということで、このような重度例でも快ー不快ぐらいであれば脳波から読み取って表示することができるようになるかもしれません。 【f010】「言語流暢性課題における品詞と加齢の影響」☆ ☆ 李 多晛, 澤田 陽一, 中村 光, ほか 高次脳機能研究 33卷4号、2013、p421-427 若年群(18~23歳)と高齢群(65~79歳)各35名に普通名詞・固有名詞・動詞の言語流暢性課題を実施し,品詞と加齢の影響を調べた研究。結果、高齢群は正反応数が少なく、動詞は特に少なかったとのこと。これは遂行機能の低下によるものではないかと著者らは推測しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆05. 頭部外傷 ◆ Head trauma ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ht005】 外傷性脳損傷後の感情認識のトレーニングの無作為化比較試験 ☆ ☆ 「A Randomized Controlled Trial of Emotion Recognition Training After Traumatic Brain Injury」 Neumann Dawn, Babbage Duncan R, Zupan Barbra ほか Journal of Head Trauma Rehabilitation Vol 30 Issue 3, 2015, pE12–E23 受傷後平均10年、203名の中〜重度の外傷性脳損傷者を3群に分け、1群はコントロール、残り2群には2名の成人の表情認知か、感情的な物語のテスト課題を9時間させ、共感、攻撃性を評価、3ヶ月、6ヶ月後の経過を追ったとのこと。 結果、表情認知はコントロール群に比べて成績はアップしたが、物語のテストは変化がなく、6ヶ月後も同様だったとのこと。今後は感情認識トレーニングと行動との関連を検討したいのことでした。 いわゆる劣位半球症状のトレーニング報告です。この種の報告は非常に少ないので貴重です。劣位半球症状には裏の意味がわからないとか、ユーモアが理解できないとか、感情が読み取れなくなる、などいろいろありますが、今回の報告は感情に絞ったものです。 ともかくも受傷後平均10年も経っていて成績アップがみられたというのは驚きです。ストーリー課題は表情に比べ複雑で、知的能力なども必要ですから変化が見られなかったのではないでしょうか。 著者らも述べている通り、この成績アップが日常生活行動にどのように影響したか知りたいところです。介護者に行動変化を訊いてみるのも良いと思います。続報が待たれます。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号では「重度脳損傷によるコミュニケーション不可能患者のコバート認知の保持」が最も今後が期待される論文であったと思います。論文にあるような重度意識障害例だけでなく、無動性無言や閉じ込め症候群などのコミュニケーション行動が一切みられないケースでは意思疎通は極めて難しく、また回復の手がかりも得にくいものでした。 脳波からYes-noを拾って表示する装置は既に開発されてALS患者などに用いられていますが、この種の症例ではそこまで高度な脳活動はされていないかもしれませんので、もっと何に反応するのか調べることが必要です。それにより快ー不快などの感情や若干の意思など読み取れるようになる可能性が考えられますし、最も反応の大きい刺激を脳波から選択し、それを繰り返すことで脳を活性化し回復させることができるかもしれません。回復への手がかりを感じさせてくれる研究です。 もうひとつ、「外傷性脳損傷後の感情認識のトレーニングの無作為化比較試験」は以前から指摘だけはされていましたが、取り組みとしてはごく少ない劣位半球症状へのリハビリの報告でした。 この種の障害は退院後しばらく家庭などで日常生活を送ってから問題となってくることが多いために、集中的リハビリが入院中に設定されることの多い日本では構造的に取り組まれにくいもののひとつでした。今後の標準化が望まれます。 さて前号でもお伝えしましたが、姉妹版にあたるfullsize版は、諸事情により今月末で休刊させていただくことになりました。Lite版は今後も継続いたしますので、変わらずよろしくお願い申し上げます。 ◎次号 発行予定日 2015年8月10日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。 QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 07,13 11:24 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年7月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年7月2週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件 02. 認知症・・・・・・レビュー1件、タイトル1件 03. 失語症・・・・・・タイトル2件 04. 前頭葉機能ほか・・レビュー1件、タイトル1件 05. 頭部外傷・・・・・タイトル1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am007】 脳卒中後の視空間無視と運動覚障害の関係 ☆ 「Relationship Between Visuospatial Neglect and Kinesthetic Deficits After Stroke 」 Jennifer A. Semrau, Jeffery C. Wang, Troy M. Herter, ほか Neurorehabilitation and Neural Repair Vol 29 May, 2015, p318-328 脳卒中後の158例について視空間無視と四肢の運動覚障害の関連をBIT行動性無視検査等を用いて調べた研究。結果、視空間無視がある例では100%運動覚障害がみられたが、無視がない例になると運動覚障害は59%で、運動覚障害は必ずしも視空間無視を裏付けないが、視空間無視は運動覚障害を伴いやすいとのこと。著者らは運動覚障害の評価と治療の重要性を示唆しています。 この場合の運動覚の検出は健側で取らせた肢位を患側で模倣させる、という方法を採っています。これができない場合に運動覚障害と判定されていますが、これだと半側身体失認があっても同じようにできなくなると考えられます。また課題を閉眼で行っていないので視覚的な無視の影響や関節覚などの深部知覚も関連しうると考えられますので、それらを考慮するとこれだけでは必ずしも視空間無視は運動覚障害を伴いやすいとは言い切れないと思われます。ここはさらなる詳細な検討が望まれます。とはいえ100%という数字は無視できません。私たちはつい視空間のみに注目してしまいがちですが、無視に伴う問題はそれだけではないということはしっかりと押さえておくべきでしょう。むしろ無視が視空間のみに起こることはまれと考える方が現実的かもしれません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 認知症 ◆ Dementia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【d013】 多成分介入ランダム化比較試験による軽度アルツハイマー病患者のリハビリの成果への無意識の影響 ☆ ☆ 「Effect of unawareness on rehabilitation outcome in a randomised controlled trial of multicomponent intervention for patients with mild Alzheimer's disease 」 Bernardino Fernández-Calvo, Israel Contador, Francisco Ramos, ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 3, 2015, p448-477 61例の軽度アルツハイマー患者にマルチ介入プログラムを16週48セッション実施し、症状の自覚/無自覚が認知・行動等の変化に影響するか調査した研究。結果、自覚のある軽度アルツハイマー患者ではマルチ介入プログラムによる効果は全般に見られたが、無自覚であると効果は感情・行動などの非認知症状のみにとどまった、とのことです。 マルチ介入プログラムとは多様な認知課題や日常生活トレーニング・レクリエーション活動を組み合わせたものです。自覚がないと認知面には変化が見られず、自覚があると認知面含む全般に改善が見られたとのことで、やはり自覚の有無の影響は大きいと言わざるを得ません。自覚がなくても感情・行動などの非認知面が変化したのは、そもそも感情・行動はレクリエーションなどの環境により変化しうるもので、そこに自覚の有無はあまり関与していないためという可能性が考えられます。逆に言えば自覚のない症例でも、感情・行動などの非認知面なら変化しうるということが言えるでしょう。また、自覚/無自覚といってもかなり強く自覚しているケースから、言われればそうかな?ぐらいのケースまでかなり幅があると考えられます。このあたりの自覚の程度と変化の程度との相関はもっと知りたいところです。 【d014】「アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)とレビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies:DLB)における取込型closing-in現象 :最初期のDLBとADの分離における感受性と特異性の検討 」 ☆ 中島 翔子、阿部 浩之、佐藤 卓也、ほか 神経心理学 30卷2号、2014、p150-157 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a013】 音韻論的単純化、音韻論的-音声学的過程の相互作用と発語失行 ☆ 「Phonological simplifications, apraxia of speech and the interaction between phonological and phonetic processing 」 Claudia Galluzzi, Ivana Bureca, Cecilia Guariglia, ほか Neuropsychologia Vol 71 May, 2015, p64-83 【a014】 「純粋失読における改善経路の検討ー運動覚性記憶を用いた読みと心像性を手がかりとする読みについてー 」☆ 森岡 悦子、金井 孝典、高橋 秀典 高次脳機能研究 33卷 4号、2013、p395-404 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f007】「道具把握のみに障害を呈した道具使用失行の1例 症例報告 」 ☆ 早川 裕子、藤井 俊勝、山鳥 重、ほか BRAIN and NERVEー神経研究の進歩 67巻 3号、2015、p311-316 【f008】 病態失認のもうひとつの観点:ビデオ再生での自己観察による運動意識の向上 ☆ 「Another perspective on anosognosia: Self-observation in video replay improves motor awareness 」 Sahba Besharati, Michael Kopelman, enato Avesani, ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 3, 2015, p319-352 病態失認の2例に対し、急性期の1例はビデオを用いて上下肢麻痺の運動の自己観察を複数回実施、慢性期のもう1例はビデオを用いて自己および他者の上下肢麻痺の運動観察を1回のみ行ない自己観察による運動意識の向上を図ったという報告。結果、両例とも即時に劇的な効果がみられたが、一般化はされなかったとのことでした。著者らはビデオによる自己観察を、暫定的にリハビリテーションプログラムに含めることを推奨しています。 今回の研究はとにかく自己フィードバックを効かせて病識を出させようという試み。回数や刺激内容を工夫したものの根治には至らなかったようでした。病態失認はメタ認知、つまり客観的自己視という難しい概念が絡むため謎の多い症候ですが、脳機能全般に低下がないと出ないことは確かな症状であり、注意障害も必発です。結局、注意障害はなんらかの形で病態失認に絡んでおり、注意機能のアップ、引いては脳機能全般のアップがないと病態失認の改善は得られないか、得られても一時的なものに留まるという解釈が今回の研究の結果からも妥当のように思われます。単に事実を分かりやすく伝えればいいということではないことが分かる研究です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆05. 頭部外傷 ◆ Head trauma ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ht004】 外傷性脳損傷後の拡張自己記憶システムの損傷 ☆ 「Disruption of temporally extended self-memory system following traumatic brain injury 」 Cécile Coste, Béatrice Navarro, Claire Vallat-Azouvi, ほか Neuropsychologia Vol 71 May, 2015, p133-145 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号の中では、「多成分介入ランダム化比較試験による軽度アルツハイマー病患者のリハビリの成果への無意識の影響」が最も先進的かつ今後が期待できる論文であったように思われました。アルツハイマー病についての自覚の有無が認知リハの効果に差をもたらすという主旨でしたが、これはおそらく認知症に限らず全ての高次脳機能障害についても当てはまるのではないかと思います。リハビリが主体的に取り組むものであることは言うまでもありませんが、単に自覚があると課題に取り組む姿勢が違うというだけではなく、設定した課題以外にも、例えば空いた時間にちょっとでも自主訓練を行ったり、普段からいろいろと工夫したり、頭の中でその日の課題を復習したりというように、自覚があるからこそ時間を有効に使って色々な活動を行える可能性が出てきます。それも含めた効果の違いなのではないでしょうか。逆に言えば自覚をいかに引き出すかがリハビリの効果を高める大きくて大切な鍵といえるでしょう。昨今イメージトレーニングによるリハビリという新たな方法も出てきました。リハビリ効果を高めるための重要な要素として、これから病識や自覚の研究は重点的になされていくと予測されます。 なお当メルマガの姉妹誌であるfullsize版ですが、諸事情により次号で休刊させていただくことになりました。これまでのレビューや今後掲載予定のレビューは別の形で公開させていただく予定でおります。皆様にはご承知おきいただきたく存じます。このLite版の方は今後も変わらず発行継続させていただきますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。 ◎次号 発行予定日 2015年7月20日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 06,22 11:05 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年6月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年6月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・タイトル1件 02. 認知症・・・・・・タイトル3件 03. 失語症・・・・・・レビュー2件、タイトル1件 04. 頭部外傷・・・・・レビュー1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am006】健忘症における記憶の連合:知識による言語性短期記憶のサポート ☆ 「Memory integration in amnesia: Prior knowledge supports verbal short-term memory」 Elizabeth Race, Daniela J. Palombo, Margaret Cadden, ほか Neuropsychologia Vol 70 April, 2015, p272-280 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 認知症 ◆ Dementia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【d010】前頭側頭型認知症における抑うつ症状の有病率 ☆ 「The Prevalence of Depressive Symptoms in Frontotemporal Dementia: A Meta-Analysis」 Chakrabarty T, Sepehry AA, Jacova C, ほか Dement Geriatr Cogn Disord Vol.39, No.5-6, 2015, p257-271 【d011】「前頭側頭型認知症(Frontotemporal degeneration:FTD)の構成課題における障害の検討」 ☆ 小林 知世、剣持 龍介、佐藤 卓也 ほか 神経心理学 31卷1号、2015、p47-55 【d012】「アルツハイマー病患者の単語再生課題における有関連および無関連虚再生の検討:Frontal Assessment Battery(FAB)の成績との関係」 ☆ 松川 悠、内山 千里、佐藤 卓也 ほか 神経心理学 30卷3号、2014、p224-232 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a009】 ブローカ野の障害に起因するフレーム失語症:ペルシャ人症例の報告 ☆ 「Frame aphasia due to Broca’s area impairment: a Persian case report」 Fariba Yadegari, Mohammadreza Razavi, Mojtaba Azimian Aphasiology. Vol 29, Issue 4, 2015, p457-465 【a010】失語症に対する意味特徴分析によるトレーニングのコミュニケーションへの効果 ☆ ☆ 「Effects on communication from intensive treatment with semantic feature analysis in aphasia」 Joana Kristenssona, Ingrid Behrnsa, Charlotta Salderta Aphasiology. Vol 29, Issue 4, 2015, p466-487 3例の慢性健忘失語症者に意味特徴分析を用いた集中的トレーニングを実施、効果をみたという報告。結果、呼称に変化はみられなかったものの、錯語の際の自己修正が増加し、会話のコミュニケーションスキルが3例中1例でわずかに増加、1例ではかなりの増加がみられたとのことです。著者らはこれにより日常会話を増加させる可能性が考えられるとしています。 意味特徴分析(semantic feature analysis:SFA)による失語症のトレーニングとは、Boyleや Wambaugh・Fergusonらによって90年代より提唱されてきた喚語訓練法で、SFAダイアグラムというターゲットの語から広がる意味的なネットワークの図式に沿って喚語を促していくという方法です。意味をヒントに使って喚語を促進する考え方ですが、意味ネットワークの活性化も図っているので意味プライミング効果で喚語しやすくなるという意味セラピー的な側面も併せ持っていると考えられます。ただ今回は慢性期症例であったので喚語を改善させるのはやはり難しかったようです。効果は自己修正の増加程度に留まっていますが、やらないよりはやった方がいいようではあります。 【a011】脳卒中後の失語症における動詞喚語のための観察ヒントの比較 ☆ ☆ 「The contrast between cueing and/or observation in therapy for verb retrieval in post-stroke aphasia」 Sonia Routhier, Nathalie Bier, Joël Macoir Journal of Communication Disorders. Vol 54, March-April 2015, p43-55 【a012】「失語症者における新造語の出現機序について」 ☆☆ 宮崎 泰広、種村 純、伊藤 絵里子 高次脳機能研究 Vol. 33 No.1, 2013, p20-27 新造語が目立つ失語症 10 例の呼称課題における反応を分析、初回評価時と発症1 ヵ月時で比較したという報告。結果、新造語減少・音韻性錯語3例、無関連性錯語増加3例、意味性錯語増加2例, 音韻性錯語・語性錯語増加が2例だったとのこと。新造語が減少し種々の錯語タイプに分かれることから新造語は音韻・意味・語彙・その他の複合的な障害により生じることが示唆されたと著者らは結んでいます。 新造語が音韻性錯語+語性錯語の結果生じたものではないかというのは古くからある説です。意味・音韻のどこが改善していくかによって経過が分かれていくのでしょう。ぜひもっと症例を集め、どの部位の損傷であるとどのパターンになりやすいか予測できるように進めていただければと思います。そうなれば意味のトレーニングに重点を置くべきか、音韻のトレーニングに重点を置くべきか選択できるようになるでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 頭部外傷 ◆ Head trauma ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ht003】全国コホートによる重症外傷性脳損傷の神経心理学的機能:人口統計学と急性期関連の予測因子 ☆ 「Neuropsychological Functioning in a National Cohort of Severe Traumatic Brain Injury: Demographic and Acute Injury–Related Predictors」 Sigurdardottir Solrun, Andelic Nada, Wehling Eike, ほか Journal of Head Trauma Rehabilitation Vol 30 Issue 2, 2015, pE1-E12 105例の重度外傷性脳損傷者の1年間の遂行機能・記憶・処理速度などの認知機能の経過を調査した報告。結果、67%に何らかの認知障害があり、遂行機能障害は41%、記憶障害は58%, 処理速度低下は57%にみられたとのことです。さらにその中の記憶障害の持続期間が認知機能の程度と相関していたとのことです。 脳梗塞などと異なり、頭部外傷はMRI等でみられる損傷部位以外だけでなく脳全般に機能低下が起こることが少なくありません。その分、症状や経過が複雑ですので他と区別されこのように独立した分類になっています。今回、全例が重度の脳外傷であったにも関わらず1年後認知障害が残存したのが2/3であったのは意外に経過が良いケースがあるという印象です。記憶障害の持続期間が認知機能の程度と相関したとのことですが、やはり頭部外傷の影響が脳全般に及んでいたということでしょう。逆にいえば頭部外傷では記憶障害は改善しやすいが、遂行機能障害や処理速度は改善しにくいということになります。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号ではこれはという先進的かつ有用な論文は残念ながらありませんでしたが、「失語症者における新造語の出現機序について」がレビューにも書いたように今後が期待できる論文でした。リハビリは一日にできる量には制度的にも物理的にも制限がありますので、限られた時間の中で最大効果を発揮できるようなプログラムが必要ですが、まずどの障害要素を改善させると今後に繋がるのかといったことがデータから予測できるようになると、リハビリの確実性はぐんと上がるでしょう。錯語軽減プログラムの確立へ進めていける論文であると思われます。 他に「失語症に対する意味特徴分析によるトレーニングのコミュニケーションへの効果」は結果は今ひとつでしたが、日本ではほとんど知られていない意味特徴分析(semantic feature analysis :SFA)によるトレーニングについて書かれた論文ですので、一読の価値はあると思います。方法としては意味セラピーに類するもので、ここしばらくのトレンドに乗ったものですから一度は用いてみても良いのではないでしょうか。 なお掲載レビューの全てをご覧いただけるメルマガfullsize版は、通常月額540円のところ、現在、創刊記念特別価格 月額270円でご提供させていただいております。ぜひこの機会にご登録いただければと存じます。 なおレビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ◎次号 発行予定日 2015年7月13日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ◎fullsize版では掲載レビューの全てをご覧いただけます。 通常月額540円のところ特別価格月額270円。 申し込み月無料。 キャンセルも簡単にできます。 ◎月単位でバックナンバーもご購入いただけます。 バックナンバー掲載レビューのリストはこちら → http://brainmailnews.asukablog.net/ バックナンバーご購入はこちら → http://www.mag2.com/m/0001654905.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 06,08 21:08 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年6月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年6月2週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件、タイトル1件 02. 認知症・・・・・・レビュー1件、タイトル2件 03. 失語症・・・・・・レビュー1件、タイトル2件 04. 前頭葉機能ほか・・タイトル1件 05. 頭部外傷・・・・・タイトル1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am004】日常生活における行動無視の解剖学的部位と心理測定の関係 ☆☆ 「Anatomical and psychometric relationships of behavioral neglect in daily living」 Marc Rousseauxa, Etienne Allarta, Thérèse Bernatia, ほか Neuropsychologia Vol 70 April 2015, p64-70 45例の大脳右半球損傷患者の発症1ヶ月時の無視の状態と日常生活上の行動的困難を分析し、ボクセルベースのマッピングシステムで損傷部位を特定したという研究。結果、日常生活上の無視は上側頭回後部と上縦束を含む側頭頭頂皮質接合部病巣、身体近傍空間無視は上側頭回と下頭頂状回を中心に拡張した皮質病巣、個人内空間無視は体性感覚野と上側頭溝を中心とした病巣、病態失認は後下側頭回および上側頭回病巣で生じていたとのことで、著者らは日常生活上の無視と身体近傍空間無視の強い関連を示唆しています。 個人内空間無視とか身体近傍空間無視というのは、身体を中心とした空間を、1)身体そのものである個人内空間 (personal space)、2)身体表面から数cmから数十cmの範囲で身体を直接取り巻く身体近傍空間(peripersonal space)、3)それ以上に離れた身体外空間(extrapersonal space)の3つに区分し、その考え方に基づいて無視空間を分類したものです。ヒトの空間把握には身体からの距離により差があるのではないかという考え方に基づいています。個人内空間無視は半側身体失認という名称ですと半側空間無視とは別のものというイメージになってしまいますが、この考え方通り連続的なものと捉えた方が合理的でしょう。日常生活上の無視が半側身体失認や病態失認とあまり関連がないというのは特に新しい知見ではありませんが、これらの新しい捉え方が新展開を生む可能性は充分あり今後が期待されます。 【am005】「『電子機器機能の重複現象』の発現機序についてー新たな妄想性誤認症候群の一徴候ー」☆ 高倉 祐樹、大槻 美佳、中川 賀嗣、ほか 神経心理学 31卷1号、2015、p56-69 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 認知症 ◆ Dementia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【d007】パーキンソン病における軽度認知障害と基準データの差異によるマチス認知症評価スケールの臨床的妥当性 ☆ 「Clinical Validity of the Mattis Dementia Rating Scale in Differentiating Mild Cognitive Impairment in Parkinson's Disease and Normative Data」 Bezdicek O, Michalec J, Nikolai T, ほか Dementia and Geriatric cognitive disorder Vol 39, No.5-6, 2015, p303-311 【d008】 高齢者の前頭側頭型認知症の普及における診断基準の効果 ☆ 「Effect of diagnostic criteria on prevalence of frontotemporal dementia in the elderly」 Thorsteinn B. Gislason, Svante Östling, Anne Börjesson-Hanson ほか Alzheimer's and Dementia Vol 11 Issue 4, 2015, p425-433 【d009】「多様な課題が含まれる「宿題帳」を継続することで農村地域住民の語の流暢性が向上した ─ 自治体主催の介護予防事業の有用性と評価法の検討」☆ 伊関 千書、ほか 日本認知症学会誌 27卷1号、2013、p62-69 40歳以上の農村地域住民26名に計9回の講義・軽体操・レクレーション・座談会等と、民話や童話の音読・簡単な計算・日記・ぬり絵や簡単な図画作成課題などの宿題帳(対象26名中16名)を介護予防事業として実施、認知機能低下やうつ気分を予防しうるか検討した調査の報告。介護予防事業に不参加の66名にも遂行機能障害やうつ気分を評価する自記式質問票を実施しています。結果、7か月間で参加者・不参加者とも遂行機能障害やうつ気分に変化はみられなかったそうですが、宿題帳を行った群では語の流暢性課題のカテゴリー課題にアップがみられたとのことでした。 著者らも述べていますが、40歳以上という年齢設定はどうみても適切ではなかったと思います。これでは差が出なくても仕方ありません。介護予防イベントも月1回程度ではちょっと間が空きすぎのように思われます。認知機能の評価に自記式質問票に遂行機能障害やうつ気分を反映する質問を選択していますが、これらはMMSEでも主な対象としてしない機能であり認知機能障害の検出力という点で疑問があります。宿題帳ではやや効果があったとのことですので、もう少し内容や方法を吟味して、検出課題を記憶や構成を中心としたものにしたり、日常生活行動のチェック表の形式にすればかなり違った結果になってくるのではないでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a006】復唱と音読障害を伴う伝道失語のマルチモダールマッピング研究 ☆☆ 「A multimodal mapping study of conduction aphasia with impaired repetition and spared reading aloud」 Barbara Tomasino, Dario Marin, Marta Maieron Neuropsychologia Vol 70 April, 2015, p214-226 【a007】 経頭蓋直流刺激治療後の失読症成人における改善読解力の測定 ☆☆☆ 「Improved reading measures in adults with dyslexia following transcranial direct current stimulation treatment」 Inbahl Heth, Michal Lavidor Neuropsychologia Vol 70 April, 2015, p107-113 発達性難読症(ディスレクシア)の成人を経頭蓋直流刺激(tDCS)を実施した群と偽の刺激を行った群に分け、効果を調査した研究。刺激部位はMT/V5野で2週間5セッション実施した結果、経頭蓋直流刺激群は大幅に音読速度と流暢性に改善がみられたとのこと。この部位が読みに重要であり、少なくとも経頭蓋直流刺激で音読速度と流暢性を改善させられると著者らはしています。 tDCSは頭に1-2mA程度の弱い直流電流を5-30分程度通すことにより神経活動を賦活する治療法です。従来のrTMSと補完的に使用し、脳卒中やうつ病、片頭痛のような多様な病態の治療とリハ効果を高めるための方法として応用と研究が広まっています。これまで前頭前野を刺激して言語流暢性が改善したという報告はありましたが、読みの改善のために側頭頭頂部にあるMT/V5野を刺激したという報告はありませんでした。MT/V5野は視覚の連合野ですが、視覚言語の中枢といわれている角回がその周辺にあるので、その部位を選択したのでしょう。選択は適切であったといえそうです。トム・クルーズやスピルバーグをはじめとして難読症でお悩みの方はかなりいらっしゃいます。リハとの組み合わせ効果など続報が大変期待されます。 【a008】「数唱や無意味音列の復唱は可能であるが複数単語の復唱に困難を示した失語症例 ~言語性短期記憶についての一考察~」 ☆ 宮崎 泰広、藤代 裕子、今井 眞紀、ほか 高次脳機能研究 34卷1号、2014、p17-25 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f006】多発性硬化症における体力と認知機能との関連 ☆ 「Association Between Physical Fitness and Cognitive Function in Multiple Sclerosis Does Disability Status Matter?」 Brian M. Sandroff, Lara A. Pilutti, Ralph H. B. Benedict, ほか Neurorehabilitation and Neural Repair Vol 29 March/April, 2015, p214-223 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆05. 頭部外傷 ◆ Head trauma ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ht002】 高齢者における外傷性脳損傷後の脳卒中発症率 ☆ 「Stroke Incidence Following Traumatic Brain Injury in Older Adults」 Albrecht Jennifer S, Liu, Xinggang, Smith Gordon S, ほか Journal of Head Trauma Rehabilitation Vol 30 Issue 2, 2015, p62-67 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号では「経頭蓋直流刺激治療後の難読症成人における改善読解力の測定」が最も先進的かつ今後が期待できる論文でした。経頭蓋直流刺激と似たものにrTMS(経頭蓋磁気刺激)もありますが、どちらも2週間程度の入院でリハと組み合わせることにより発症後何年も経った慢性期であっても効果が期待できるというところが大変画期的な治療法です。どちらも患者本人には侵襲も苦痛もなく、時間もMRIを撮るのと大差ない程度でできますので、もっと広まって欲しい方法です。導入の条件も、機器と刺激部位を特定し機器を操作できる脳外科医がいればできますので、脳外科とMRIがあるところなら考慮されることをお薦めします。ただし何に効果があるのか、どのような症例に効果があるのか、このあたりはこれからの研究によります。今回ディスレクシアを選ばれたところは出色でした。今後の研究の進展が非常に期待されます。 他に「日常生活における行動無視の解剖学的部位と心理測定の関係」において提示されている無視の分類と新しい画像診断による損傷部位の関係も注目されます。半側無視についての治療研究は上でも触れたrTMSを用いるもの以外は近年ややいき詰まりを見せていますので、このような新たな方法の導入は突破口のひとつとなるやも知れません。今後の展開を見守りたいところです。 さて、掲載レビューの全てをご覧いただけるメルマガfullsize版は、通常月額540円のところ、現在、創刊記念特別価格 月額270円でご提供させていただいております。ぜひこの機会にご登録いただければと存じます。 なおレビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ◎次号 発行予定日 2015年6月22日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。 その旨必ずご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 05,25 11:34 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年5月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年5月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件 02. 認知症・・・・・・レビュー1件、タイトル2件 03. 失語症・・・・・・レビュー1件、タイトル2件 04. 前頭葉機能ほか・・タイトル3件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am003】 半側空間無視症状の客観的把握のための評価ツールの開発☆☆☆ 河島 則天、鴨志田 敦史、中川 雅樹、ほか 総合リハ 43巻 3号、2015、p251–257 半側空間無視の評価ツールとして色や点滅によって無視空間への注意を促しタッチパネルで操作できるアプリを試作、右半球病変脳卒中患者8名に試用したという研究。結果、色・点滅・順序性によって見落とし数,所要時間が変化した、とのこと。著者らは反応時間の空間分布特性を評価することで,無視症状の客観的把握と軽微な無視症状検出が可能と結んでいます。 順序や刺激密度によって見落としの程度が変わることはこれまでにも知られていましたが、色や点滅というのは刺激として新しいと思います。タッチ式のアプリというのも利便性やデータ収集・解析を考えると非常に発展性があります。欲を言えば現実場面では人や車などの動的な対象への注意が安全面からも欠かせませんが、おそらく動的なものと静的なものでは無視の度合いも異なるでしょうから、ぜひこれに動的な対象も加えて欲しいものです。静的な対象との比較データがあると興味深いですね。まだデータ数が圧倒的に少ないようですが、多量のデータを集め完成度を高めていただければ、評価ツールとしてだけでなく、自主トレーニング機器としてなど今後大きな展開が期待できると思います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 認知症 ◆ Dementia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【d004】身体活動とよりよい服薬コンプライアンスは、高齢者のMMSEスコアを改善する☆ Physical Activity and Better Medication Compliance Improve Mini-Mental State Examination Scores in the Elderly Guimarães F.C.a、Amorim P.R、Reis F.F.a、ほか Dementia and Geriatric cognitive disorder Vol.39, 2015, p25-31 【d005】「記憶の城」:アルツハイマー病における自伝的記憶のための認知トレーニングプログラムからの新しい洞察 ☆☆ “The Castle of Remembrance”: New insights from a cognitive training programme for autobiographical memory in Alzheimer's disease Jennifer Lalanne, Thierry Gallarda and Pascale Piolino Neuropsychological Rehabilitation Vol.25, Issue 2, 2015, p254-282 【d006】遅くなく速い。健忘傾向の軽度認知障害患者の既知感の保持☆ Fast, but not slow, familiarity is preserved in patients with amnestic mild cognitive impairment Gabriel Besson, Mathieu Ceccaldi, Eve Tramoni, ほか Cortex Vol.65, April, 2015, p36-49 健忘傾向のある軽度認知障害患者19例と健常群22名にエピソードのYes-No再認課題を行い、エピソード記憶のうちの詳細情報と既知感のどちらが保持されるかを調べた研究。結果、健忘軽度認知障害患者はエピソードの詳細は覚えていないものの既知感は保持されており反応時間も速かったとのことでした。著者らは既知感が保たれているのは既知感が潜在記憶と顕在記憶の境界の存在だからではないか、と結んでいます。 エピソードの記憶は「いつ」「どこで」などのエピソードの詳細情報(recollection)の部分と、経験したことがあるか否かという既知感(familiarity)の部分から構成されるとされており、高齢者では詳細情報は忘れても既知感は保たれることが近年わかってきました。これはそれを認知障害例で調査した研究です。やはり同傾向だったということで、予測通りの結果というべきでしょう。反応時間が健常群より速かったそうで、著者らは健常群には難しすぎたためではないかとしていますが、となると課題の難易度設定に検討の余地がありそうです。それはともかくとして、エピソード記憶の詳細情報が既知感と全く別に保持されているとすると、既知感を強化しても詳細情報に影響しうるのかどうか、さらに他の記憶や認知機能、日常行動にもどう影響するか、このあたりは全く未知数です。とりあえず研究が進むのを待つしかありません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a003】失語症者との会話における具体化練習としての指差し☆ Pointing as an embodied practice in aphasic interaction Anu Klippi Aphasiology Vol.29, Issue 3, 2015, p337-354 【a004】会話に焦点を当てた失語症セラピー:文法障害に対する工夫の検討☆ Conversation focused aphasia therapy: investigating the adoption of strategies by people with agrammatism Suzanne Beeke, Firle Beckley, Fiona Johnson,ほか Aphasiology Vol.29, Issue 3, 2015, p355- 377 失語症者と会話パートナーによる会話セラピーの6ヶ月の経過を追った研究。評価のためのプレセラピー期、セラピー期、フォローアップのためのポストセラピー期の3期8週ごとに分けられています。結果、1例は会話の質・量ともに変化を示したが、1例は量的な変化のみを示し、両例とも会話パートナーの行動に障壁的な行動の減少がみられたとのことです。これらから会話セラピーは工夫による困難の低減というよりは、会話パートナーの障壁的な行動の減少と思われた、と著者らは結んでいます。 言語聴覚士が会話で改善を図ろうとするやり方は日本では随分下火になってしまいましたが、1970年代にはかなり中心的な方法でした。問題は話者の技量を要することで、それを広めることが難しく下火になっていったと思われます。今は会話パートナーを言語聴覚士が養成することで実用コミュニケーションをアップさせようというやり方に変化しています。会話パートナーが長く綿密に患者と付き合うことで会話パートナーの技量が向上しコミュニケーションが促進されるという仕組みになっています。この研究結果もそれを表しています。ただ会話パートナーによる会話セラピーを推すなら他のセラピーを行った比較対象が欲しいところです。 【a005】 左側頭頭頂葉皮質下出血により失語症を呈した慢性期症例に対する音韻符号化訓練ーSelf-generated cueとしての五十音表活用☆ 鈴木 恒輔 言語聴覚研究 12巻 1号、2015、p33-41 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f003】 模擬的買い物訓練が要介護高齢者の認知機能に与える影響☆ 小枝 周平、澄川 幸志、小池 祐士、ほか 作業療法ジャーナル 49巻 4号、2015、p361-367 【f004】 立方体透視図模写の定量的採点法の開発 ―当院脳神経外科患者による描画から―☆ 依光 美幸、塚田 賢信、渡邉 康子、ほか 高次脳機能研究 33卷 1号、2013、p12-19 【f005】 パーキンソン病・アルツハイマー病における時間認知障害☆☆ 本間 元康、黒田 岳志、二村 明徳、ほか BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 67巻 3号、2015、p297-302 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号で取り上げた論文の中では「半側空間無視症状の客観的把握のための評価ツールの開発」が最も先進的で今後の発展が期待できる注目論文と言えるでしょう。同じリハビリプログラムを実施していても、練習量が違うと効果に差が出ることが近年の研究で分かってきています。いかに練習時間を確保するか、それが大きな鍵となってきますが、現状ではマンツーマンのリハビリには色々な制約があり、足りない時間は自主トレーニングで補うのが最も現実的な方法です。その自主トレーニングをいかに確実にしかも有効に行うか、これがリハビリ効果を高めるために今後求められていくでしょう。そのためのツールとしてのタブレット端末や携帯通信機器を使った自主トレーニング方法は大きな可能性を秘めています。 なおレビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ところで掲載レビューの全てをご覧いただける当メルマガのfullsize版ですが、通常月額540円のところ、ただ今、創刊記念特別価格として月額270円とさせていただいております。この機会にぜひfullsize版をご購読下さい。 お申し込みは http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ より。 ◎次号 発行予定日 2015年6月8日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。 その旨必ずご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年5月4週号 (通巻2号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ─────────────────────────── ◎普段忙しくて認知症・高次脳機能障害の医療・看護・リハビリ関連の 文献に 目を通すことができない医療・福祉職の方へ、主な和・洋文献から 注目の 最新論文を意義や背景を解説しつつご紹介するメルマガです。 ブラッシュアップ・キャリアアップにお役立て下さい。 ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ◎fullsize版では掲載レビューの全てをご覧いただけます。 月額540円(1号当たり270円)。 申し込み月無料。 キャンセルも簡単にできます。 ◎月単位でバックナンバーもご購入いただけます。 バックナンバー掲載レビューのリストはこちら → http://brainmailnews.asukablog.net/ バックナンバーご購入はこちら → http://www.mag2.com/m/0001654905.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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