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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年4月2週号 目次 01. 失語症・・・・・・【a041】【a042】【a043】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 失語症 ◆ Aphasia 【a041】Eメールによるソーシャルネットワーク:失語症者のEメール使用パターンの研究 ☆☆ 「Social networking through email: studying email usage patterns of persons with aphasia 」 Abdullah Al Mahmud & Jean-Bernard Martens Center for Design Innovation (CDI), School of Design, Swinburne University of Technology, Melbourne, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p186-210「Digital Technology and Aphasia」 高齢失語症者とセラピストのコミュニケーションを促進するためにオランダ失語症連合が開発したソーシャルネットワーキングプログラムの使用パターンをログとアンケートにより調査した研究。 結果、登録のみのユーザー、すぐにやめてしまったユーザーもありましたが、9996件のメールのうち80.1%は失語症者からの送信であり、失語症者の大部分が送信と受信の両方をしていたとのこと。 現在の状況は第一歩としてなかなか良い、と著者らは結んでいます。 言語機能の改善に双方向のコミュニケーションは欠かせませんが、そのための電子メールの活用は身近で手軽であり、自己修正も可能、しかも楽しく、24時間可能。 ということで非常に有望な手段です。 オランダでも積極的に利用されているようですね。なんとか日本でも広めたいところですが、日本では保険診療の枠組みの中で行うことになるので、なかなか難しいと思われます。 一部のデイサービスなどでは行われていますが、オランダのようにNPOが主体となって推進するなど、なんらかのシステム構築が必要でしょう。 【a042】コンピュータによる失語症リハビリの効果:文献的検討 ☆☆ 「Effect of computer therapy in aphasia: a systematic review」 Carmen Zheng, Lauren Lynch & Nicholas Taylor Speech Pathology Department, Eastern Health, Peter James Centre, Burwood East, Victoria, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p211-244 失語症に対するコンピュータによるリハビリと臨床家によるリハビリの有効性を比較するために文献的検討を行った研究。 結果、コンピュータによるリハビリの効果は6つの研究で報告されており、臨床家によるリハビリと比較した3つの研究では双方で改善がみられ、有意な差はなかったとのこと。 コンピュータによるリハビリは有効であり、さらなる研究が必要だろうと著者らは述べています。 コンピュータ的なものを使ったリハビリは以前から少しずつなされていましたが、あくまで教材の一部という位置づけでしかありませんでした。 しかしテクノロジーの進化によりコンピュータで双方向的なやりとりが可能になってきた現在では、臨床家によるリハビリとの完全互換もありうるところまで来ています。 近い将来、失語症リハビリにおける言語聴覚士の役割はプログラムの選択とチェックのみになり、実際のリハビリはコンピュータで自動化されるでしょう。 【a043】動詞健忘性失語症へのスマートタブレットを使った自主トレーニング:2例のケーススタディ ☆☆☆ 「Smart tablet for smart self-administered treatment of verb anomia: two single-case studies in aphasia」 Sonia Routhier, Nathalie Bier & Joël Macoir a Département de réadaptation, Université Laval, Québec, Québec, Canada Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p269-289 脳卒中後の慢性期動詞健忘性失語症2名にスマートタブレットを使った自宅での自主トレーニングを試みた研究。方法は以下の4過程。 1) ベースライン評価、2)タブレット使用訓練、3)タブレットでの自主トレーニング、4)20回の自主トレーニング後評価。 結果、2名とも動詞の呼称で大幅な改善がみられたが、未訓練語への般化はみられなかった、とのこと。また、両者ともタブレットでの自主トレーニングには非常に満足していたとのことでした。タブレットの使用は、リハビリを強化するために興味深い方法である、と著者らは結んでいます。 未訓練語への般化困難はこのような症例に通常見られる現象です。 そこからするとタブレットと通常訓練には特に差はなく、タブレットでまるまる代行が可能ということになります。 しかも満足度が高かったとのことで、いつでもどこでも利用できるタブレットの利便性がその背景にあるのでしょう。 これまでコンピュータといえばマウスとキーボードのついたパソコンでしたが、今後はタブレットやスマホが中心となり、より簡単な操作でいつでも使えるようになるでしょう。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号はAphasiologyで特集「Digital Technology and Aphasia」が組まれていましたので、そこから文献を選択しました。 今後高齢化社会になるにつれ、リハビリのニーズは爆発的に増加しますが、マンパワーとコストの問題でセラピストがそれを支えるのは不可能と思われます。 そこでデジタルテクノロジーが代わってそれを支えることになるでしょう。 運動障害系はアシストロボット、高次脳障害系はコミュニケーションロボットが活用されることになるでしょう。 バーチャルリアリティや拡張現実も積極的に使われると思われます。セラピストはその中で管理と運用というエンジニアのような役割を果たすことになるでしょう。 IT技術の進化により今後リハビリも大きくその姿を変えて行くと思われます。 次号が最終号となります。よろしくお願い申し上げます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年4月2週号(通巻22号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ PR |
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