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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年6月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年6月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・タイトル1件 02. 認知症・・・・・・タイトル3件 03. 失語症・・・・・・レビュー2件、タイトル1件 04. 頭部外傷・・・・・レビュー1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am006】健忘症における記憶の連合:知識による言語性短期記憶のサポート ☆ 「Memory integration in amnesia: Prior knowledge supports verbal short-term memory」 Elizabeth Race, Daniela J. Palombo, Margaret Cadden, ほか Neuropsychologia Vol 70 April, 2015, p272-280 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 認知症 ◆ Dementia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【d010】前頭側頭型認知症における抑うつ症状の有病率 ☆ 「The Prevalence of Depressive Symptoms in Frontotemporal Dementia: A Meta-Analysis」 Chakrabarty T, Sepehry AA, Jacova C, ほか Dement Geriatr Cogn Disord Vol.39, No.5-6, 2015, p257-271 【d011】「前頭側頭型認知症(Frontotemporal degeneration:FTD)の構成課題における障害の検討」 ☆ 小林 知世、剣持 龍介、佐藤 卓也 ほか 神経心理学 31卷1号、2015、p47-55 【d012】「アルツハイマー病患者の単語再生課題における有関連および無関連虚再生の検討:Frontal Assessment Battery(FAB)の成績との関係」 ☆ 松川 悠、内山 千里、佐藤 卓也 ほか 神経心理学 30卷3号、2014、p224-232 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆03. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a009】 ブローカ野の障害に起因するフレーム失語症:ペルシャ人症例の報告 ☆ 「Frame aphasia due to Broca’s area impairment: a Persian case report」 Fariba Yadegari, Mohammadreza Razavi, Mojtaba Azimian Aphasiology. Vol 29, Issue 4, 2015, p457-465 【a010】失語症に対する意味特徴分析によるトレーニングのコミュニケーションへの効果 ☆ ☆ 「Effects on communication from intensive treatment with semantic feature analysis in aphasia」 Joana Kristenssona, Ingrid Behrnsa, Charlotta Salderta Aphasiology. Vol 29, Issue 4, 2015, p466-487 3例の慢性健忘失語症者に意味特徴分析を用いた集中的トレーニングを実施、効果をみたという報告。結果、呼称に変化はみられなかったものの、錯語の際の自己修正が増加し、会話のコミュニケーションスキルが3例中1例でわずかに増加、1例ではかなりの増加がみられたとのことです。著者らはこれにより日常会話を増加させる可能性が考えられるとしています。 意味特徴分析(semantic feature analysis:SFA)による失語症のトレーニングとは、Boyleや Wambaugh・Fergusonらによって90年代より提唱されてきた喚語訓練法で、SFAダイアグラムというターゲットの語から広がる意味的なネットワークの図式に沿って喚語を促していくという方法です。意味をヒントに使って喚語を促進する考え方ですが、意味ネットワークの活性化も図っているので意味プライミング効果で喚語しやすくなるという意味セラピー的な側面も併せ持っていると考えられます。ただ今回は慢性期症例であったので喚語を改善させるのはやはり難しかったようです。効果は自己修正の増加程度に留まっていますが、やらないよりはやった方がいいようではあります。 【a011】脳卒中後の失語症における動詞喚語のための観察ヒントの比較 ☆ ☆ 「The contrast between cueing and/or observation in therapy for verb retrieval in post-stroke aphasia」 Sonia Routhier, Nathalie Bier, Joël Macoir Journal of Communication Disorders. Vol 54, March-April 2015, p43-55 【a012】「失語症者における新造語の出現機序について」 ☆☆ 宮崎 泰広、種村 純、伊藤 絵里子 高次脳機能研究 Vol. 33 No.1, 2013, p20-27 新造語が目立つ失語症 10 例の呼称課題における反応を分析、初回評価時と発症1 ヵ月時で比較したという報告。結果、新造語減少・音韻性錯語3例、無関連性錯語増加3例、意味性錯語増加2例, 音韻性錯語・語性錯語増加が2例だったとのこと。新造語が減少し種々の錯語タイプに分かれることから新造語は音韻・意味・語彙・その他の複合的な障害により生じることが示唆されたと著者らは結んでいます。 新造語が音韻性錯語+語性錯語の結果生じたものではないかというのは古くからある説です。意味・音韻のどこが改善していくかによって経過が分かれていくのでしょう。ぜひもっと症例を集め、どの部位の損傷であるとどのパターンになりやすいか予測できるように進めていただければと思います。そうなれば意味のトレーニングに重点を置くべきか、音韻のトレーニングに重点を置くべきか選択できるようになるでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 頭部外傷 ◆ Head trauma ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ht003】全国コホートによる重症外傷性脳損傷の神経心理学的機能:人口統計学と急性期関連の予測因子 ☆ 「Neuropsychological Functioning in a National Cohort of Severe Traumatic Brain Injury: Demographic and Acute Injury–Related Predictors」 Sigurdardottir Solrun, Andelic Nada, Wehling Eike, ほか Journal of Head Trauma Rehabilitation Vol 30 Issue 2, 2015, pE1-E12 105例の重度外傷性脳損傷者の1年間の遂行機能・記憶・処理速度などの認知機能の経過を調査した報告。結果、67%に何らかの認知障害があり、遂行機能障害は41%、記憶障害は58%, 処理速度低下は57%にみられたとのことです。さらにその中の記憶障害の持続期間が認知機能の程度と相関していたとのことです。 脳梗塞などと異なり、頭部外傷はMRI等でみられる損傷部位以外だけでなく脳全般に機能低下が起こることが少なくありません。その分、症状や経過が複雑ですので他と区別されこのように独立した分類になっています。今回、全例が重度の脳外傷であったにも関わらず1年後認知障害が残存したのが2/3であったのは意外に経過が良いケースがあるという印象です。記憶障害の持続期間が認知機能の程度と相関したとのことですが、やはり頭部外傷の影響が脳全般に及んでいたということでしょう。逆にいえば頭部外傷では記憶障害は改善しやすいが、遂行機能障害や処理速度は改善しにくいということになります。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号ではこれはという先進的かつ有用な論文は残念ながらありませんでしたが、「失語症者における新造語の出現機序について」がレビューにも書いたように今後が期待できる論文でした。リハビリは一日にできる量には制度的にも物理的にも制限がありますので、限られた時間の中で最大効果を発揮できるようなプログラムが必要ですが、まずどの障害要素を改善させると今後に繋がるのかといったことがデータから予測できるようになると、リハビリの確実性はぐんと上がるでしょう。錯語軽減プログラムの確立へ進めていける論文であると思われます。 他に「失語症に対する意味特徴分析によるトレーニングのコミュニケーションへの効果」は結果は今ひとつでしたが、日本ではほとんど知られていない意味特徴分析(semantic feature analysis :SFA)によるトレーニングについて書かれた論文ですので、一読の価値はあると思います。方法としては意味セラピーに類するもので、ここしばらくのトレンドに乗ったものですから一度は用いてみても良いのではないでしょうか。 なお掲載レビューの全てをご覧いただけるメルマガfullsize版は、通常月額540円のところ、現在、創刊記念特別価格 月額270円でご提供させていただいております。ぜひこの機会にご登録いただければと存じます。 なおレビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ◎次号 発行予定日 2015年7月13日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ◎fullsize版では掲載レビューの全てをご覧いただけます。 通常月額540円のところ特別価格月額270円。 申し込み月無料。 キャンセルも簡単にできます。 ◎月単位でバックナンバーもご購入いただけます。 バックナンバー掲載レビューのリストはこちら → http://brainmailnews.asukablog.net/ バックナンバーご購入はこちら → http://www.mag2.com/m/0001654905.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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