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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年8月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年8月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 失語症・・・・・・レビュー2件 02. 前頭葉機能ほか・・レビュー1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a020】健忘失語症における意味プライミング:クロスモダール方法論を用いた調査 ☆ 「Semantic priming in anomic aphasia: a focused investigation using cross-modal methodology」 Simone R. Howells and Elizabeth A. Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p744-761 11名の健忘失語症者と11名の健常者に語彙判断課題を実施、ターゲット語と関連語・無関連語・非語のペアで意味プライミング効果の有無を調べたという研究。 結果、健忘失語症者はコントロール群に比べ反応時間は遅いが、より短い潜時でプライム効果がみられたとのことでした。これらは新たな評価や技法に繋がる可能性があると著者らは結んでいます。 意味プライミング効果とは、事前に脳に入った刺激により脳の意味判断機能が活性化、つまりエンジンがかかった状態になり、次に入った刺激の意味把握がされやすくなるという現象です。 これを利用したトレーニング法としては意味セラピーという健忘失語症者の喚語訓練が有名です。今回の論文ではプライミングの状況を詳しく調べてはいますが、正直なところ意味セラピーを上回るような新たな評価や訓練法に繋がるデータとはいいがたい印象です。 著者らも具体的なビジョンは呈示していません。新たな評価や訓練法に繋げるにはなんらかのもうひとひねりが必要と思われます。 【a021】失語症における音声セグメンテーション ☆ 「Speech segmentation in aphasia」 Claudia Peñaloza, Annalisa Benetello, Leena Tuomiranta ほか Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p724-743 120名の若者と14名の慢性失語症者、そして14名の高齢者に人工言語を用いたセグメントテストを行い、セグメント能力を調べた研究。 結果、失語症者は全体ではセグメントはできており、高齢者と差はなかったが、個別にみると左下前頭領域損傷の4例がチャンスレベルを下回っていたとのこと。また、セグメント能力は失語症の重症度と関連はなく、言語性短期記憶と相関していたとのことでした。 セグメント能力とは「そこにいぬがいる」と連続して耳に聴こえた音に切れ目を入れ、「そこ」「に」「いぬ」「が」「いる」という言葉の連なりだな、と判断できる能力のことです。 これができなければ聴いた音を単語に分解できず意味の理解はできなくなってしまいます。セグメント能力から失語の理解障害を考えるというのはレアな視点ですが、問題はなぜセグメントが困難になるかということです。 著者らは言語性短期記憶の問題を指摘していますが、これのみに原因を帰するだけで良いのかは疑問です。理論的には、言語性短期記憶の問題だけでなく、音の認知が悪い場合、語彙判断が悪い場合、いずれも考えられます。ここは重要な点ですのでもう一段深い検証が必要でしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f012】市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーションは、多発性硬化症における持続的注意と遂行機能を改善した ☆ ☆ 「A Low-Cost Cognitive Rehabilitation With a Commercial Video Game Improves Sustained Attention and Executive Functions in Multiple Sclerosis: A Pilot Study」 Laura De Giglio, Francesca De Luca, Luca Prosperini ほか Neurorehabilitation Neural Repair Vol 29, 2015, p453-461 52名のMS患者と17名のコントロール群に家庭で8週間の任天堂の脳トレゲームを行わせ、注意・処理速度・ワーキングメモリの変化を測定した研究。 結果、Stroop TestやSymbol Digit Modalities Testは有意な改善がみられ、PASATやQOL尺度でも有意ではなかったが改善がみられたとのことです。 日本でもひところ大はやりした脳トレゲームを利用した自宅トレーニング法です。これらは基本的に注意トレーニングを中心に構成されていますので、きちんと実施してもらえば、馬鹿にしたものでない、ある程度の効果はあると考えられます。 ただ対面で人が実施するのと比べると、やりやすいように大きさや操作などの工夫ができないとか、適切なタイミングで励ましたりできないとか、開始に向かって誘導できないとか、いろいろ使いにくいところがあるわけですが、それさえ問題視しなければ充分使える方法と思います。手間がかからない上に低コストはとても魅力的です。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号もちょっと不作気味ではありましたが、その中で「市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーション」は視点の転換により有益性を示した研究と言えるでしょう。 市販のゲームの利用というのは確かに簡便な方策であり、実際それを意図して市場投入されているものではありますが、逆にだからこそ専門家には欠点がみえやすく、安易という言葉が脳裏をよぎり、導入に二の足を踏みがちのように見受けられます。 しかし論文にもあったように一定の効果はあり、しかも費用・介護負担・労力・継続性全て含めたコストという視点からみれば、これほど優れたものはないと思われます。 治療の妥当性や成績で欠点はあっても、これからの時代は治療・介護のマンパワーが著しく不足し、理想的な条件を整えることは難しくなると予測されます。広い意味でのコストという概念なしに有効性の検討はありえなくなるのではないでしょうか。 ◎次号 発行予定日 2015年9月14日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。 その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。 QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク PR |
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