2024 11,23 11:12 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2016 04,24 05:49 |
|
【d025】進行性の意味性呼称障害の訓練語彙をどう統制すればいいのか ☆
「How to constrain and maintain a lexicon for the treatment of progressive semantic naming deficits: Principles of item selection for formal semantic therapy」 Jamie Reillya, Eleanor M. Saffran Center for Cognitive Neuroscience, and Department of Communication Sciences and Disorders, Temple University, Philadelphia, USA Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016 p126-156 著者によると「アルツハイマー病と原発性進行性失語症における意味記憶の訓練として、誤りなし学習条件での呼称課題がよく用いられる。 しかし具体的な材料や方法は定まっていない。そこで意味記憶を5年間維持することを目標に100の単語からなる基本マイクロ語彙セットを提唱した」とのこと。 著者らはさらに語彙の使用頻度と概念構造を生かした繰り返しトレーニング法も提案しています。 米国では失語症治療に当たって、目的別に段階的教材が非常に豊富に市販で用意されています。いかにも失語症治療の歴史が長く合理的な米国らしいといえます。 同様に意味記憶の訓練教材も整備したいというのは当然の流れです。目標が機能の5年間維持というのも少し長いですが比較的妥当なところです。 効果の実証はこれからでしょう。 PR |
|
2016 04,24 05:45 |
|
【a038】読みの改善:後天性失読症のためのマルチ要素訓練:ケーススタディ ☆
「Reading recovery: a case study using a multicomponent treatment for acquired alexia」 Jessica Browna, Karen Huxa, Stephanie Fairbanksa Department of Special Education and Communication Disorders, University of Nebraska-Lincoln, USA Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016 p23-44 左半球脳血管障害により失読症を呈し発症後5ヶ月の86歳女性に、一回1時間、計40回5ヶ月間の治療セッションを実施、 (a)子音・母音・子音(CVC)の言葉の復号化、(b)文字認知、呼称、および関連音素の書記素-音素変換、(c)斉唱・復唱、 (d)アナグラムの解読・模写・想起、(e)機能性教材の読み、を実施したもの。 結果、文字認知、書記素-音素変換、および単一単語の復号化のスキルを向上させるのに有効であったとのこと。 症例は全般に改善し独力で読み書きが可能となったが、時に絵の手がかりが必要であったとのことです。 読みに関するかなり多様な課題を行っています。入力・出力・難易度・特殊規則などほぼ全ての面にアプローチすることにより全般的な改善を図ろうとするものと思われます。 対極には、文字認知・書記素-音素変換・特殊読みなどの情報処理過程のどこに問題があるか分析してピンポイントにアプローチするやり方があります。 どちらが効果的でしょうか。現時点ではなんとも言えません。比較検討が望まれます。 【a039】意味性失語における可逆文の理解 ☆ 「Comprehension of reversible constructions in semantic aphasia」 Olga Dragoy, Mira Bergelson, Ekaterina Iskra ほか National Research University Higher School of Economics, Neurolinguistics Laboratory, Moscow, Russian Federation Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016, p1-22 ロシア語話者の意味失語6名、運動失語12名、感覚失語12名、非脳損傷者12名に文章と画像のマッチング課題を実施、前置詞や可逆文の理解状況について比較したという研究。 結果、意味失語群では可逆文の理解は良好だが非可逆文の理解で困難を示す傾向がみられたとのこと。 意味失語では語順で理解がなされており、ステレオタイプな感覚-運動方略によって障害を補っていると考えられた、と著者らは述べています。 意味失語とは語義失語とも呼ばれ、ある物品の意味理解や呼称ができなくなる障害です。 健忘失語のようですが、意味が失われたように言語理解も呼称もできなくなるのが特徴。意味記憶障害に分類されないのは物品の使用などができるからです。 この研究はあまり言及されない意味失語の文法能力について調べたものですが、理論的に考えてあまり腑に落ちない結果です。 症例数も少ないですし、もう少し慎重に検討したいところです。 |
|
2016 02,08 05:49 |
|
■認知症・高次脳文献レビュー Lite版 2016年2月2週号
目次 01. 認知症・・・・・・【d023】 02. 失語症・・・・・・【a037】 03. 頭部外傷・・・・・【ht007】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d024】日常生活活動における手続き記憶利用:意味性認知症におけるスマートフォン使用 ☆☆☆ 「Relying on procedural memory to enhance independence in daily living activities: Smartphone use in a case of semantic dementia」 N. Bier, S. Brambati, J. Macoirde, G. ほか School of Rehabilitation, Université de Montréal, Canada ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25, Issue 6, 2015, p913-935 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a037】言語聴覚学科学生の失語症グループ療法体験 ☆ 「Student speech pathologists’ experiences of an aphasia therapy group」 Laura Cubirka, Scott Barnes & Alison Ferguson School of Humanities and Social Science, University of Newcastle, Newcastle, Australia ほか Aphasiology Vol 29, Issue 12, 2015 p1497-1515 ◆03. 頭部外傷 ◆ Head trauma 【ht007】重度頭部外傷者の脳損傷の特異的パターンと選択的認知機能障害の関連 ☆ 「Selective Cognitive Dysfunction Is Related to a Specific Pattern of Cerebral Damage in Persons With Severe Traumatic Brain Injury」 Di Paola Margherita, Phillips Owen, Costa Alberto ほか Journals of head trauma rehabilitation Vol 30 Issue 6, 2015, p402-410 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号では何と言っても意味性認知症にスマートフォン使用を試みた研究が注目されました。 多くの場合、重度の記憶障害があっても手続き記憶は保持されますので、手続き記憶を利用して日常生活活動を改善させようとする試みは既にありました。 しかしこれをさらに進めて意味記憶障害にも適応しようとするアイデアは非常に斬新なものです。まして新規学習の余地があるとはなかなか発想できないところでしょう。 人と物との認知的インターフェイス、つまり道具の無意識的使いやすさを高めていくとこのような可能性が高まるということを教えてくれる素晴らしい研究でした。 ◎認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年2月2週号(通巻19号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
|
2016 02,08 05:47 |
|
【d024】日常生活活動における手続き記憶利用:意味性認知症におけるスマートフォン使用 ☆☆☆
「Relying on procedural memory to enhance independence in daily living activities: Smartphone use in a case of semantic dementia」 N. Bier, S. Brambati, J. Macoirde, G. ほか School of Rehabilitation, Université de Montréal, Canada ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25, Issue 6, 2015, p913-935 意味性認知症の55歳の男性が手続き記憶を利用してスマートフォンを学習できるか否か追跡した研究。 結果、スマートフォンの機能のうち利便性の高い15機能が操作可能になり、介入終了半年後でも、15の機能のうち8つを使用していたとのこと。 ただし呼称や意味想起には改善は見られなかったとのことです。著者らは手続き記憶を利用することの可能性を推奨しています。 手続き記憶とは、泳ぎ方とか自転車の乗り方などの、習得内容を言葉で表現することは難しいながら明らかに学習である事柄の記憶です。 無意識に行う動作の記憶とも言えます。スマートフォンの操作が手続き記憶と言えるかどうかは若干微妙ですが、慣れれば無意識操作になるのかもしれません。 いずれにしろ意味性認知症でスマートフォン操作を習得できるとは驚きです。どのような仕組みで可能になるのか興味深いところですが、リハビリとしても大いに実用性が見込めます。 |
|
2016 02,08 05:41 |
|
【a037】言語聴覚学科学生の失語症グループ療法体験 ☆「Student speech pathologists’ experiences of an aphasia therapy group」
Laura Cubirka, Scott Barnes & Alison Ferguson School of Humanities and Social Science, University of Newcastle, Newcastle, Australia ほか Aphasiology Vol 29, Issue 12, 2015 p1497-1515 言語聴覚学科教官の監督のもと、3名の失語症者と2名の配偶者、4名の言語聴覚学科学生で失語症グループ療法を実施、終了後半構造化インタビューを行い、成果を検討した、というもの。 結果、学生にとっては失語症グループ療法の理解やコミュニケーション方法の学習に約立つことがわかったとのこと。 失語症グループ療法への学生の参加は、学生・参加者いずれにもメリットがある、と著者らは結んでいます。 学生にとって実地での経験は何にも勝る、ということを如実に表した報告ですが、失語症グループ療法はメリットはあるものの治療機関では人員などの問題でなかなか実施しにくいのが現状です。 このように学生の学習の一環として行えば、一石二鳥なのではないかと思われます。ただし教官の監督は欠かせないでしょう。 |
|
2016 02,08 05:39 |
|
【ht007】重度頭部外傷者の脳損傷の特異的パターンと選択的認知機能障害の関連 ☆
「Selective Cognitive Dysfunction Is Related to a Specific Pattern of Cerebral Damage in Persons With Severe Traumatic Brain Injury」 Di Paola Margherita, Phillips Owen, Costa Alberto ほか Journals of head trauma rehabilitation Vol 30 Issue 6, 2015, p402-410 エピソード記憶障害の頭部外傷患者8名、遂行機能障害・エピソード記憶障害の頭部外傷患者患者7名、健常者16名を対象に、損傷部位と海馬の容量を関係を検討したという研究。 結果、エピソード記憶障害の頭部外傷患者は海馬の萎縮性変化を示したのに対し、遂行機能障害の頭部外傷患者は、前頭葉が関与する局所性病変を示したとのこと。 記憶は側頭葉の海馬、遂行機能障害は前頭葉と関連が深いことは周知のことですので、結果そのものには特にコメントはありません。 同じ部位の損傷でも頭部外傷と脳梗塞では予後が異なると思われますし、脳出血との差も知りたいところです。ぜひさらに踏み込んだ検討継続が期待されます。 |
|
2016 01,25 07:24 |
|
【d021】介護負担と患者の神経精神症状は、認知障害の介護者の評価に影響する ☆
「Burden of Care and Patient's Neuropsychiatric Symptoms Influence Carer's Evaluation of Cognitive Impairment」 Persson K, Brækhus A, Selbæk G ほか Norwegian National Advisory Unit on Ageing and Health, Vestfold Hospital Trust, Tønsberg, Norway ほか Dementia and Geriatric Cognitive Disorders Vol. 40, No. 5-6, 2015, 256-267 20名の前頭側頭型認知症者と介護者、30名のアルツハイマー病者と介護者にNPI・認知症障害評価(DAD)、コーネル認知症・うつ尺度(CSDD)、老人不安尺度(GAI)などを実施、 認知症介護者の負担と精神的苦痛に影響する要因を調査したという研究。 結果、両群ともに患者の精神症状の程度と介護者の精神的苦痛は相関していたが、前頭側頭型認知症の介護者の方がより介護負担感を感じていた、とのことでした。 患者の怒りや妄想などの精神症状が強いほど介護者の精神的苦痛が強まるのは納得のいくところです。 前頭側頭型認知症の介護者の方がより介護負担感を感じていたのは、前頭側頭型認知症では脱抑制や常同行動,被影響性の亢進などの行動障害が顕著にみられるためでしょう。 これら前頭葉損傷に特徴的な症状は実際の問題行動となって現れるため身体的な介護負担となってくるものと思われます。幻覚などの強いレビー小体性認知症との比較も知りたいところです。 【d022】前頭側頭型認知症とアルツハイマー病における神経精神症状および介護者の負担と苦痛 ☆ 「Neuropsychiatric Symptoms, Caregiver Burden and Distress in Behavioral-Variant Frontotemporal Dementia and Alzheimer's Disease」 Lima-Silva T.B, Bahia V.S, Carvalho V.A ほか de Pesquisa em Neurologia Cognitiva e do Comportamento, Brazil Dementia and Geriatric Cognitive Disorders Vol. 40, No. 5-6, 2015, 268-275 742名の軽度認知障害者と1090名の認知症者に、高齢者認知機能低下アンケート(IQCODE)、ロートンとブロディIADLスケール、神経精神評定アンケート(NPI-Q)、 ストレススケール(RSS)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、時計描画テスト(CDT)を実施、認知機能などIADLに関連する要因を調査したという研究。 結果、配偶者に評定してもらったIQCODE得点は客観評価に比べ低くなる傾向があったとのこと。 ここから介護者による認知機能やIADLの評定には負担感が大きく影響すると考えられた、と著者らは結論づけています。 身近な介護者に認知機能や日常行動をチェック表やアンケートなどで評定してもらう形式の評価法は幾つかありますが、その客観性を検討した研究です。 同じ介護者でも配偶者は重めに判定してしまうとのことで、介護者を配偶者や家族など種類分けしたのは興味深い視点でした。 客観的テストと日常行動チェックは評価の両輪でどちらも不可欠なものですから、できるだけ正確な解釈ができるよう精度を高めていきたいものです。 【d023】経頭蓋直流電流刺激とアルツハイマー病のリハビリテーションにおける認知トレーニング:ケーススタディ ☆☆ 「Transcranial direct current stimulation and cognitive training in the rehabilitation of Alzheimer disease: A case study」 Barbara Penolazzi, Susanna Bergamaschi, Massimiliano Pastore, ほか Department of General Psychology, University of Padua, Italy ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25, Issue 6, 2015, p799-817 軽度アルツハイマー病の60歳男性に経頭蓋直流電流刺激 (tDCS)を行い認知機能の変化を測定したという研究。 第一サイクルでは10セッション・2mA刺激を20分に最も障害された認知機能に関する課題を実施。 第二サイクルではプラセポ刺激と同様の認知機能に関する課題を行ったというもの。結果、第一サイクル中は認知機能の低下速度が鈍ったように見えたとのこと。 さらなる確認を必要とするが、tDCSは認知リハの補助ツールとしての可能性がある、と著者らは結んでいます。 奏功すれば画期的と思われますが、問題は電流刺激をどのあたりにするかというところです。 最も認知障害の顕著な領域というところでしょうが、あまり特定できない場合や大きな差がない場合はどうすれば良いのか、そもそも刺激は本当にそのあたりで良いのか、疑問は尽きません。 まだ1症例に試しただけという段階ですから、今後が重要でしょう。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号では認知症関連のものばかりになってしまいました。この中では、アルツハイマー病に経頭蓋直流電流刺激を試みた研究が注目されました。 もともと脳に電流を流す治療はうつ病に対して1950年代以前から行われていたもので、いろいろと形を変えて今に至っているものです。 運動障害・認知障害のリハビリの補助ツールとして期待が高まっていますが、認知症に対しては未知数です。その分今後化けるかもしれません。 tDCSは経頭蓋磁気刺激法(TMS)との組み合わせが有効と言われていますので、そちらも期待されます。 |
|
2016 01,17 04:34 |
|
【a034】単語検索のための治療後の接続演説の中で測定効果:原発性進行性失語症の2名による研究 ☆
「Measuring gains in connected speech following treatment for word retrieval: a study with two participants with primary progressive aphasia」 Karen Croot, Cathleen Taylorcd, Stefanie Abele ほか The School of Psychology, University of Sydney, Sydney, Australia ほか Aphasiology Vol 29, Special Issue 11 Generalisation of Aphasia Intervention, 2015, p1265-1288 原発性進行性失語症の2名に、構造化インタビューと呼称課題による事前テストを行った後、自宅で2週間1日10〜15分、コンピュータを用いて目標語の復唱・音読・呼称・書字課題を実施したという研究。 結果、訓練語の呼称で改善がみられたが、構造化インタビューや非訓練語でも改善がみられたとのこと。 急性発症の失語症・進行性失語、双方の会話による喚語訓練の可能性と限界をさらに検討する必要がある、と著者らは結んでいます。 進行性失語症の改善は難しく進行を遅らせるのがやっとというのが一般的な認識です。 コンピュータを用いているとはいえ、ここで採用されているのは特に目新しい方法ではなく、どのような作用で改善が得られたのかよくわかりません。 対象も2名とごく限られたものですので、とりあえず多数例に実施した結果の報告が待たれます。 【a035】失語症における談話の文理解訓練の効果 ☆ 「The effect of a sentence comprehension treatment on discourse comprehension in aphasia」 Swathi Kiran, Carrie Des Roches, Sarah Villard ほか Aphasia Research Laboratory, Speech, Language & Hearing Sciences, Boston University, Boston, MA, USA Aphasiology Vol 29, Special Issue 11 Generalisation of Aphasia Intervention, 2015, p1289-1311 40名の失語症者に口頭命令または文と絵のマッチング課題と可逆文・非可逆文を含むストーリーの理解課題を実施、訓練前後での正答率・反応時間を測定したという研究。 結果、全般的に改善はみられたものの、口頭命令と文-絵マッチング課題の違いによる差はみられず、著者らの開発した談話理解テスト (TSEDC)でも大きな改善はみられなかったとのこと。 文理解訓練とTSEDCの差が文法能力の般化を妨げているのではないかと著者らは考察しています。 談話理解テスト (Test of Syntactic Effects on Discourse Comprehension:TSEDC)とはLevyらが2010年に発表したもので、 簡単な文と複雑な文、能動文と受動文、可逆文と非可逆文の理解を350〜400語からなる文を用いて調べる構成になっています。 口頭命令と文-絵マッチング課題で差がなかったとのことですが、これらは選択肢の作り方によって差が生じるようになったり生じないようになったりすると思われます。 談話理解テストで改善がみられなかったのは難易度・感度の問題と思われます。この差が実用性の差になるというのは著者らの言う通りと思われます。 【a036】失語症者の文の産生障害に対する前訓練の研究:般化のための動詞ネットワーク強化訓練による多様性の理解に向けて ☆☆ 「Investigation of pretreatment sentence production impairments in individuals with aphasia: towards understanding the linguistic variables that impact generalisation in Verb Network Strengthening Treatment」 Lisa A. Edmonds, Jessica Obermeyer, Brayleah Kernan Department of Communication Sciences and Disorders, Teachers College, Columbia University, New York, NY, USA ほか Aphasiology Vol 29, Special Issue 11 Generalisation of Aphasia Intervention, 2015, p1312-1344 失語症者11名に、動詞ネットワーク強化訓練(VNeST)を前訓練および後訓練として10週間で35時間行い、名詞・動詞の産生能力や文構成の正確さを評価した、という研究。 結果、全てのケースで喚語能力や文構成能力に改善がみられ、非訓練語・非訓練文についても簡略化がみられるなどの工夫はあったが般化がみられた、とのこと。 著者らは、VNeSTはタイプや重症度を問わず適応があり、非常に一般化に有用な手段であると結んでいます。 動詞ネットワーク強化訓練( Verb Network Strengthening Treatment : VNeST)は 動詞を中心とした意味ネットワーク(McRae, Ferretti, & Amyote, 1997) を活性化させることにより名詞・動詞の単語・文の喚語を促進することを目的とした失語症の治療法です。 イメージとしては意味セラピーと統語訓練をミックスしたような方法といった感じでしょうか。 意味セラピーはある程度注目された方法でしたが効果としてはあまり強くないのが残念でした。 これはそれよりもリーチする手がかりが多い分だけ有望と思われます。現時点では期待の方法です。 |
|
2015 12,28 09:08 |
|
■認知症・高次脳文献レビュー Lite版
2015年12月4週号 目次 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件 02. 認知症・・・・・・レビュー1件 03. 失語症・・・・・・レビュー1件 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory 【am011】認知機能低下を示さないパーキンソン病患者の健忘様の再認/再生記憶障害の研究 ☆ 「 Evidence of an amnesia-like cued-recall memory impairment in nondementing idiopathic Parkinson's disease」 Nicola M J, EdelstynChristopher M, JohnThomas A ほか Cortex Vol.71, 2015, p85-101 30名のパーキンソン病患者と22名の健常者に対し、誘導あり条件と誘導なし条件で再認/再生課題を実施、相関を調べた研究。 結果、再認/再生課題と抑うつ度、およびパーキンソン病患者の遂行機能と誘導なしの記憶再認課題にのみ相関がみられたとのこと。 これらからパーキンソン病患者の再認/再生課題の低下はおそらく不顕性うつ症状によるものであると考えられ、再認/再生課題における遂行機能障害の関与の可能性から、前頭前野の寄与がありうる、と著者らは結んでいます。 ちょっと分かりにくいのですが、記憶の再認/再生課題は方略を使うと有利であり、方略を使うためには遂行機能が必要という考え方に基づいている実験です。 パーキンソン病患者でうつ症状があると、遂行機能が低下し再認/再生課題が低くなる、という論理展開になっています。 あまりそのような印象はないのですが、認知低下がないのに健忘様の症状をみせるパーキンソン病患者がいる、とのことです。 ただパーキンソン病ではいずれ全般的に認知機能が低下してくるため、認知低下を示していなくとも注意を始めとする細かな認知機能のチェックは欠かせないでしょう。 ◆02. 認知症 ◆ Dementia 【d020】logopenic型原発性進行性失語症と軽度アルツハイマー病患者における音韻性短期記憶 ☆ 「 Phonological short-term memory in logopenic variant primary progressive aphasia and mild Alzheimer's disease」 Aaron M. MeyerSarah F. SniderRachael E. ほか Cortex Vol.71, 2015, p183–189 音韻ループ障害の有無を明らかにするために、logopenic型原発性進行性失語症(lvPPA)者と軽度アルツハイマー病患者および健常者について、音韻性短期記憶課題と視空間性短期記憶課題を実施、比較したという研究。 結果、視空間性短期記憶課題では有意差はみられなかったが、lvPPAでは音韻性短期記憶課題が有意に低下していたとのこと。lvPPAは音韻ループ障害を持つという仮説通りであった、と著者らは結んでいます。 logopenic型原発性進行性失語症とは、健忘タイプ、非流暢タイプに次ぐ第三のタイプの進行性失語症と言われています。 脳血管障害による失語症の中でもある種の伝導失語が音韻性短期記憶障害によるものと考えられていますが、このタイプは伝統的に言われる入力側の障害ではなく出力側であるところがポイントです。 理論的には進行性失語でもありえますが、症状や進行具合などまだよくわからない点も多いと思われます。続報が期待されます。 ◆03. 失語症 ◆ Aphasia 【a033】SECTとMAST:原発性進行性失語症の文法的能力を評価するための新しいテスト☆ 「 SECT and MAST: new tests to assess grammatical abilities in primary progressive aphasia」 Ornella V. Billette, Seyed A. Sajjadi, Karalyn Patterson ほか German Centre for Neurodegenerative Diseases (DZNE), Magdeburg Site, Magdeburg, Germany ほか Aphasiology Vol 29 Issue 10, 2015, p1135-1151 原発性進行性失語症(PPA)の下位分類のために、簡単に文法的能力を評価できる文章理解テスト(SECT:聴覚バージョン・視覚バージョン)と文産生テスト(MAST)を作成、 41名のPPA患者と21名のアルツハイマー病患者、30名の健常者に実施したという研究。 結果、患者群ではSECT・MASTとも有意に低下がみられ、自発語・文の省略数との間には強い相関がみられたとのこと。 話し言葉で文法的な難しさをみることのできる簡単なテストとしてSECT・MASTは妥当と著者らは結論づけています。 SECTとMASTは話し言葉に文法的な難しさを反映することのできる簡単なテストです。 進行性失語症では文の省略はあっても文法的能力はあまり低下しないと思われており、文法的能力による下位分類が妥当かどうか分かりません。 このあたりを明らかにするためにも簡便なテストは歓迎すべきでしょう。とりあえず続報が待たれます。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今回は進行性失語症の評価についての論文が二つ挙がりました。 進行性失語については90年代頃に盛んに研究されて以降はあまり目立った進展がない状況が続いていますが、そろそろ新たな展開がみられる時期かもしれません。 認知症は今最も注目される病態ですし、二つともまだこれからの研究ではありますが、今後の展開が期待されます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年12月4週号(通巻16号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ◎次号 発行予定日 2016年01月11日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
|
2015 12,28 09:06 |
|
【am011】認知機能低下を示さないパーキンソン病患者の健忘様の再認/再生記憶障害の研究 ☆
「 Evidence of an amnesia-like cued-recall memory impairment in nondementing idiopathic Parkinson's disease」 Nicola M J, EdelstynChristopher M, JohnThomas A ほか Cortex Vol.71, 2015, p85-101 30名のパーキンソン病患者と22名の健常者に対し、誘導あり条件と誘導なし条件で再認/再生課題を実施、相関を調べた研究。 結果、再認/再生課題と抑うつ度、およびパーキンソン病患者の遂行機能と誘導なしの記憶再認課題にのみ相関がみられたとのこと。 これらからパーキンソン病患者の再認/再生課題の低下はおそらく不顕性うつ症状によるものであると考えられ、再認/再生課題における遂行機能障害の関与の可能性から、前頭前野の寄与がありうる、と著者らは結んでいます。 ちょっと分かりにくいのですが、記憶の再認/再生課題は方略を使うと有利であり、方略を使うためには遂行機能が必要という考え方に基づいている実験です。 パーキンソン病患者でうつ症状があると、遂行機能が低下し再認/再生課題が低くなる、という論理展開になっています。 あまりそのような印象はないのですが、認知低下がないのに健忘様の症状をみせるパーキンソン病患者がいる、とのことです。 ただパーキンソン病ではいずれ全般的に認知機能が低下してくるため、認知低下を示していなくとも注意を始めとする細かな認知機能のチェックは欠かせないでしょう。 |
|
忍者ブログ [PR] |