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2015 09,28 13:13 |
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【f013】片麻痺の病態失認における危機意識とエラーベーストレーニング ☆
「Error-based training and emergent awareness in anosognosia for hemiplegia」 V. Moro, M. Scandola, C. Bulgarelli, ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 4, 2015, p593-616 4名の慢性期片麻痺病態失認患者に「エラーフル」または「エラー分析」のリハビリ訓練プログラムを実施したという報告です。 「エラー分析」とは特定の実行行動について戦略とエラーを分析し、その失敗の理由を議論するという方法です。結果、すべての患者で改善がみられたとのこと。 著者らは病態失認患者でも危機回避は可能、としています。 たいへん正攻法な取り組みで結果も良かったようですが、このような病態失認患者の問題はトレーニングするとその課題はクリアできるものの、他には全く広がらない、というところにあります。 トレーニング課題を増やしていってもその傾向は変わらず、そこに大きな壁があると言わざるを得ません。 この4例も特定の実行行動のトレーニングを行い、その結果が良かったということで、決して障害が軽減したわけではありません。 もっと根本からの改善を目指すならやはり注意・認知トレーニングも必要と考えられます。 PR |
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2015 09,14 05:41 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年9月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年9月2週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 注意・記憶系・・・レビュー1件 02. 失語症・・・・・・レビュー2件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※ 注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 注意・記憶系◆ Attention & Memory ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【am009】Googleカレンダー:重度記憶障害者による単一実験デザインスタディ ☆ ☆ 「Google Calendar: A single case experimental design study of a man with severe memory problemsm」 Victoria N. Baldwin and Theresa Powell Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 4, 2015, p617-636 重度記憶障害と遂行機能障害を伴う外傷性脳損傷の43歳男性に記憶補助として携帯電話のGoogleカレンダーの使用を試みたという報告。 6週間のベースライン期の後、6週間使用し、改善度合いを評価したところ、3ターゲットを使った記憶課題・主観的尺度ともに改善がみられたとのこと。 著者らはGoogleカレンダーの有効性を強調するとともに、症例が他の記憶補助手段にはとても消極的であったことから、個人のライフスタイルや信念に合う記憶補助手段の選択が重要としています。 これまでにも記憶補助手段として携帯電話のスケジュール機能を利用したという報告は複数ありましたが、今回はより具体的にGoogleカレンダーを用いたという報告です。 この種のものはどれが優れているかということよりも、どういうものに慣れていてその人が使いやすいか、ではないかと思います。 症例は43歳と若くIT機器にも馴染みがある世代と考えられ、それゆえGoogleカレンダーが用いやすかったのでしょう。 判に押したように従来機器を推奨することなく、世代に合わせた対応は確かに必要です。 ただ今後IT機器は全世代に普及していくと考えられますので、記憶補助手段はより高機能で利便性の高いものの導入が容易になっていくことでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a020】失語症における動詞産生上の個人ー社会性指向グループ療法の効果 ☆ 「Effects of impairment-based individual and socially oriented group therapies on verb production in aphasia」 Elizabeth Louise Hoover, David Caplan, Gloria Waters ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p781-798 12名の慢性失語症者に6週間の間隔を置き個人・グループ・混合の条件で動詞訓練を行ったという研究。 結果、言語機能・コミュニケーション能力・QOLで有意な変化がみられたが、個人・グループ・混合の条件による差はなかったとのことでした。 個人訓練とグループ訓練のいずれが優れているか、というのはずっと議論されている問題です。 いまだに結論は出ておらず、今回の報告でも差はなかったとのことですが、グループにはグループの長所、個人には個人の長所があるのは間違いないと思われます。 そして外向的な人と内向的な人があるように、個々人の性質によってグループに向いているケースと個人に向いているケースがあるというのが本当のところではないでしょうか。 もうひとつ、グループ訓練はファシリテーターの技量や構成員の資質によって治療効果が大きく左右されます。 盛り上げ役やムードメーカーというような存在の有無です。そのあたりをどのようにコントロールするか。 これはこうした調査を行うには考慮されるべき重要な問題と考えられます。 【a021】 脳卒中後の早期失語症訓練:急性期と亜急性期における行動および神経生理学的変化 ☆ 「Aphasia therapy early after stroke: behavioural and neurophysiological changes in the acute and post-acute phases」 Annelies Aerts, Katja Batens, Patrick Santens, ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p845-871 脳血管障害で発症した47歳中程度非流暢性失語の男性。 急性期に7週間で30時間の従来的言語訓練、亜急性期の3週間に30時間の集中的言語訓練、さらにあと3週間に30時間の第2期集中的言語訓練を実施したという研究。 それぞれの期ごとにN400およびP300の事象関連電位を測定し行動および神経生理学的変化をみています。 結果、症例はどの訓練後でも全般に事象関連電位に改善を認め、非治療期にも改善は維持されたが、N400でみると集中的言語訓練の方が従来的訓練に比べ良好であった、とのことでした。 事象関連電位 (ERP) とは、計測される脳波の中で思考や認知などの結果と考えられる波形です。 P300やN400がよく用いられ、N400 とは刺激提示から約 400 ミリ秒後に発生する陰性の電圧変位、P300 成分とは刺激提示から 300ミリ秒後に発生する陽性の電圧変位です。これが現れるとなんらかの高次脳活動がなされたということになりますが、もちろん詳細なことまではわかりません。 この研究では改善指標として事象関連電位を使っていますが、これで分かるのはあくまで何らかの高次の脳活動がみられたということだけです。 詳細は分かりませんから、やや割り引いて考える必要があります。 それでこの集中的言語訓練は3週間に30時間ですから1日平均で約1.5時間という計算になります。 比較対象になっている従来的訓練の方は7週間で30時間ですから1日平均0.6時間です。 集中的言語訓練は従来的訓練の2.5倍行っている計算になりますね。 これだけではなんともいえませんが、発症からの時期よりも実施の合計時間の方が改善要素として大きい可能性もあります。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 「Googleカレンダー:重度記憶障害者による単一実験デザインスタディ」は急速に生活スタイルが変わりつつある現代を反映した論文であったと思います。 テレビをほとんど見ず、スマホを使って動画サイトや音楽を楽しみ、LINEを中心にコミュニケーションをとる世代と、IT機器をほとんど使わずテレビと新聞と電話で生活する世代とでは、嗜好も馴染みも生活スタイルも全く異なると考えられます。 これからの世界では人々の生活スタイルはもっともっと細分化し、好みも生き方も多様になってくることでしょう。 当然ニーズも様々になってきますので、これを一括りに考えず、それぞれに合わせた数多くの選択肢を用意することが望ましいでしょう。 普段からの世情の情報収集と相応の準備が求められます。 ◎次号 発行予定日 2015年9月28日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。 QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 09,14 05:36 |
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【am009】Googleカレンダー:重度記憶障害者による単一実験デザインスタディ ☆ ☆
「Google Calendar: A single case experimental design study of a man with severe memory problemsm」 Victoria N. Baldwin and Theresa Powell Neuropsychological Rehabilitation Vol 25 Issue 4, 2015, p617-636 重度記憶障害と遂行機能障害を伴う外傷性脳損傷の43歳男性に記憶補助として携帯電話のGoogleカレンダーの使用を試みたという報告。 6週間のベースライン期の後、6週間使用し、改善度合いを評価したところ、3ターゲットを使った記憶課題・主観的尺度ともに改善がみられたとのこと。 著者らはGoogleカレンダーの有効性を強調するとともに、症例が他の記憶補助手段にはとても消極的であったことから、個人のライフスタイルや信念に合う記憶補助手段の選択が重要としています。 これまでにも記憶補助手段として携帯電話のスケジュール機能を利用したという報告は複数ありましたが、今回はより具体的にGoogleカレンダーを用いたという報告です。 この種のものはどれが優れているかということよりも、どういうものに慣れていてその人が使いやすいか、ではないかと思います。 症例は43歳と若くIT機器にも馴染みがある世代と考えられ、それゆえGoogleカレンダーが用いやすかったのでしょう。 判に押したように従来機器を推奨することなく、世代に合わせた対応は確かに必要です。 ただ今後IT機器は全世代に普及していくと考えられますので、記憶補助手段はより高機能で利便性の高いものの導入が容易になっていくことでしょう。 |
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2015 09,14 05:28 |
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【a020】失語症における動詞産生上の個人ー社会性指向グループ療法の効果 ☆
「Effects of impairment-based individual and socially oriented group therapies on verb production in aphasia」 Elizabeth Louise Hoover, David Caplan, Gloria Waters ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p781-798 12名の慢性失語症者に6週間の間隔を置き個人・グループ・混合の条件で動詞訓練を行ったという研究。 結果、言語機能・コミュニケーション能力・QOLで有意な変化がみられたが、個人・グループ・混合の条件による差はなかったとのことでした。 個人訓練とグループ訓練のいずれが優れているか、というのはずっと議論されている問題です。 いまだに結論は出ておらず、今回の報告でも差はなかったとのことですが、グループにはグループの長所、個人には個人の長所があるのは間違いないと思われます。 そして外向的な人と内向的な人があるように、個々人の性質によってグループに向いているケースと個人に向いているケースがあるというのが本当のところではないでしょうか。 もうひとつ、グループ訓練はファシリテーターの技量や構成員の資質によって治療効果が大きく左右されます。 盛り上げ役やムードメーカーというような存在の有無です。そのあたりをどのようにコントロールするか。 これはこうした調査を行うには考慮されるべき重要な問題と考えられます。 【a021】 脳卒中後の早期失語症訓練:急性期と亜急性期における行動および神経生理学的変化 ☆ 「Aphasia therapy early after stroke: behavioural and neurophysiological changes in the acute and post-acute phases」 Annelies Aerts, Katja Batens, Patrick Santens, ほか Aphasiology Vol 29 Issue 7, 2015, p845-871 脳血管障害で発症した47歳中程度非流暢性失語の男性。 急性期に7週間で30時間の従来的言語訓練、亜急性期の3週間に30時間の集中的言語訓練、さらにあと3週間に30時間の第2期集中的言語訓練を実施したという研究。 それぞれの期ごとにN400およびP300の事象関連電位を測定し行動および神経生理学的変化をみています。 結果、症例はどの訓練後でも全般に事象関連電位に改善を認め、非治療期にも改善は維持されたが、N400でみると集中的言語訓練の方が従来的訓練に比べ良好であった、とのことでした。 事象関連電位 (ERP) とは、計測される脳波の中で思考や認知などの結果と考えられる波形です。 P300やN400がよく用いられ、N400 とは刺激提示から約 400 ミリ秒後に発生する陰性の電圧変位、P300 成分とは刺激提示から 300ミリ秒後に発生する陽性の電圧変位です。これが現れるとなんらかの高次脳活動がなされたということになりますが、もちろん詳細なことまではわかりません。 この研究では改善指標として事象関連電位を使っていますが、これで分かるのはあくまで何らかの高次の脳活動がみられたということだけです。 詳細は分かりませんから、やや割り引いて考える必要があります。 それでこの集中的言語訓練は3週間に30時間ですから1日平均で約1.5時間という計算になります。 比較対象になっている従来的訓練の方は7週間で30時間ですから1日平均0.6時間です。 集中的言語訓練は従来的訓練の2.5倍行っている計算になりますね。 これだけではなんともいえませんが、発症からの時期よりも実施の合計時間の方が改善要素として大きい可能性もあります。 |
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2015 08,24 07:34 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年8月4週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年8月4週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 失語症・・・・・・レビュー2件 02. 前頭葉機能ほか・・レビュー1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a020】健忘失語症における意味プライミング:クロスモダール方法論を用いた調査 ☆ 「Semantic priming in anomic aphasia: a focused investigation using cross-modal methodology」 Simone R. Howells and Elizabeth A. Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p744-761 11名の健忘失語症者と11名の健常者に語彙判断課題を実施、ターゲット語と関連語・無関連語・非語のペアで意味プライミング効果の有無を調べたという研究。 結果、健忘失語症者はコントロール群に比べ反応時間は遅いが、より短い潜時でプライム効果がみられたとのことでした。これらは新たな評価や技法に繋がる可能性があると著者らは結んでいます。 意味プライミング効果とは、事前に脳に入った刺激により脳の意味判断機能が活性化、つまりエンジンがかかった状態になり、次に入った刺激の意味把握がされやすくなるという現象です。 これを利用したトレーニング法としては意味セラピーという健忘失語症者の喚語訓練が有名です。今回の論文ではプライミングの状況を詳しく調べてはいますが、正直なところ意味セラピーを上回るような新たな評価や訓練法に繋がるデータとはいいがたい印象です。 著者らも具体的なビジョンは呈示していません。新たな評価や訓練法に繋げるにはなんらかのもうひとひねりが必要と思われます。 【a021】失語症における音声セグメンテーション ☆ 「Speech segmentation in aphasia」 Claudia Peñaloza, Annalisa Benetello, Leena Tuomiranta ほか Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p724-743 120名の若者と14名の慢性失語症者、そして14名の高齢者に人工言語を用いたセグメントテストを行い、セグメント能力を調べた研究。 結果、失語症者は全体ではセグメントはできており、高齢者と差はなかったが、個別にみると左下前頭領域損傷の4例がチャンスレベルを下回っていたとのこと。また、セグメント能力は失語症の重症度と関連はなく、言語性短期記憶と相関していたとのことでした。 セグメント能力とは「そこにいぬがいる」と連続して耳に聴こえた音に切れ目を入れ、「そこ」「に」「いぬ」「が」「いる」という言葉の連なりだな、と判断できる能力のことです。 これができなければ聴いた音を単語に分解できず意味の理解はできなくなってしまいます。セグメント能力から失語の理解障害を考えるというのはレアな視点ですが、問題はなぜセグメントが困難になるかということです。 著者らは言語性短期記憶の問題を指摘していますが、これのみに原因を帰するだけで良いのかは疑問です。理論的には、言語性短期記憶の問題だけでなく、音の認知が悪い場合、語彙判断が悪い場合、いずれも考えられます。ここは重要な点ですのでもう一段深い検証が必要でしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆02. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f012】市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーションは、多発性硬化症における持続的注意と遂行機能を改善した ☆ ☆ 「A Low-Cost Cognitive Rehabilitation With a Commercial Video Game Improves Sustained Attention and Executive Functions in Multiple Sclerosis: A Pilot Study」 Laura De Giglio, Francesca De Luca, Luca Prosperini ほか Neurorehabilitation Neural Repair Vol 29, 2015, p453-461 52名のMS患者と17名のコントロール群に家庭で8週間の任天堂の脳トレゲームを行わせ、注意・処理速度・ワーキングメモリの変化を測定した研究。 結果、Stroop TestやSymbol Digit Modalities Testは有意な改善がみられ、PASATやQOL尺度でも有意ではなかったが改善がみられたとのことです。 日本でもひところ大はやりした脳トレゲームを利用した自宅トレーニング法です。これらは基本的に注意トレーニングを中心に構成されていますので、きちんと実施してもらえば、馬鹿にしたものでない、ある程度の効果はあると考えられます。 ただ対面で人が実施するのと比べると、やりやすいように大きさや操作などの工夫ができないとか、適切なタイミングで励ましたりできないとか、開始に向かって誘導できないとか、いろいろ使いにくいところがあるわけですが、それさえ問題視しなければ充分使える方法と思います。手間がかからない上に低コストはとても魅力的です。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号もちょっと不作気味ではありましたが、その中で「市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーション」は視点の転換により有益性を示した研究と言えるでしょう。 市販のゲームの利用というのは確かに簡便な方策であり、実際それを意図して市場投入されているものではありますが、逆にだからこそ専門家には欠点がみえやすく、安易という言葉が脳裏をよぎり、導入に二の足を踏みがちのように見受けられます。 しかし論文にもあったように一定の効果はあり、しかも費用・介護負担・労力・継続性全て含めたコストという視点からみれば、これほど優れたものはないと思われます。 治療の妥当性や成績で欠点はあっても、これからの時代は治療・介護のマンパワーが著しく不足し、理想的な条件を整えることは難しくなると予測されます。広い意味でのコストという概念なしに有効性の検討はありえなくなるのではないでしょうか。 ◎次号 発行予定日 2015年9月14日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。 その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。 QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 08,24 07:31 |
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【a020】健忘失語症における意味プライミング:クロスモダール方法論を用いた調査 ☆
「Semantic priming in anomic aphasia: a focused investigation using cross-modal methodology」 Simone R. Howells and Elizabeth A. Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p744-761 11名の健忘失語症者と11名の健常者に語彙判断課題を実施、ターゲット語と関連語・無関連語・非語のペアで意味プライミング効果の有無を調べたという研究。 結果、健忘失語症者はコントロール群に比べ反応時間は遅いが、より短い潜時でプライム効果がみられたとのことでした。これらは新たな評価や技法に繋がる可能性があると著者らは結んでいます。 意味プライミング効果とは、事前に脳に入った刺激により脳の意味判断機能が活性化、つまりエンジンがかかった状態になり、次に入った刺激の意味把握がされやすくなるという現象です。 これを利用したトレーニング法としては意味セラピーという健忘失語症者の喚語訓練が有名です。今回の論文ではプライミングの状況を詳しく調べてはいますが、正直なところ意味セラピーを上回るような新たな評価や訓練法に繋がるデータとはいいがたい印象です。 著者らも具体的なビジョンは呈示していません。新たな評価や訓練法に繋げるにはなんらかのもうひとひねりが必要と思われます。 【a021】失語症における音声セグメンテーション ☆ 「Speech segmentation in aphasia」 Claudia Peñaloza, Annalisa Benetello, Leena Tuomiranta ほか Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p724-743 120名の若者と14名の慢性失語症者、そして14名の高齢者に人工言語を用いたセグメントテストを行い、セグメント能力を調べた研究。 結果、失語症者は全体ではセグメントはできており、高齢者と差はなかったが、個別にみると左下前頭領域損傷の4例がチャンスレベルを下回っていたとのこと。また、セグメント能力は失語症の重症度と関連はなく、言語性短期記憶と相関していたとのことでした。 セグメント能力とは「そこにいぬがいる」と連続して耳に聴こえた音に切れ目を入れ、「そこ」「に」「いぬ」「が」「いる」という言葉の連なりだな、と判断できる能力のことです。 これができなければ聴いた音を単語に分解できず意味の理解はできなくなってしまいます。セグメント能力から失語の理解障害を考えるというのはレアな視点ですが、問題はなぜセグメントが困難になるかということです。 著者らは言語性短期記憶の問題を指摘していますが、これのみに原因を帰するだけで良いのかは疑問です。理論的には、言語性短期記憶の問題だけでなく、音の認知が悪い場合、語彙判断が悪い場合、いずれも考えられます。ここは重要な点ですのでもう一段深い検証が必要でしょう。 |
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2015 08,24 07:28 |
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【f012】市販のビデオゲームによる低コストの認知リハビリテーションは、多発性硬化症における持続的注意と遂行機能を改善した ☆ ☆
「A Low-Cost Cognitive Rehabilitation With a Commercial Video Game Improves Sustained Attention and Executive Functions in Multiple Sclerosis: A Pilot Study 」 Laura De Giglio, Francesca De Luca, Luca Prosperini ほか Neurorehabilitation Neural Repair Vol 29, 2015, p453-461 52名のMS患者と17名のコントロール群に家庭で8週間の任天堂の脳トレゲームを行わせ、注意・処理速度・ワーキングメモリの変化を測定した研究。 結果、Stroop TestやSymbol Digit Modalities Testは有意な改善がみられ、PASATやQOL尺度でも有意ではなかったが改善がみられたとのことです。 日本でもひところ大はやりした脳トレゲームを利用した自宅トレーニング法です。これらは基本的に注意トレーニングを中心に構成されていますので、きちんと実施してもらえば、馬鹿にしたものでない、ある程度の効果はあると考えられます。 ただ対面で人が実施するのと比べると、やりやすいように大きさや操作などの工夫ができないとか、適切なタイミングで励ましたりできないとか、開始に向かって誘導できないとか、いろいろ使いにくいところがあるわけですが、それさえ問題視しなければ充分使える方法と思います。手間がかからない上に低コストはとても魅力的です。 |
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2015 08,10 09:57 |
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認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年8月2週号 毎月第2・第4月曜日発行 発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2015年8月2週号 目次】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■ 01. 失語症・・・・・・レビュー3件 02. 前頭葉機能ほか・・概要1件 編集室より ■□■□■□■□■□■□■□■□■ ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆01. 失語症 ◆ Aphasia ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【a017】 言語理解とワーキングメモリの寄与:失語症タイプの差異効果 ☆ 「The contribution of working memory to language comprehension: differential effect of aphasia type」 M.V. Ivanova, O.V. Dragoy, S.V. Kuptsova, ほか Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p645-664 アイトラッキングを利用してワーキングメモリー課題を流暢性失語19名、非流暢性失語16名、健常者36名に実施、失語と認知機能障害の関連を検討した研究。結果、失語群はワーキングメモリー課題成績が有意に低下しており、非流暢群では言語理解との関連が見られた、とのこと。これらから著者らは失語には認知障害が合併する可能性があり、それらは言語症状をより悪化させる傾向がある、と結んでいます。 アイトラッキングは視線移動を可視化してくれる装置、ワーキングメモリーは数十秒〜数分間だけ作動する記憶の一時避難機構です。ワーキングメモリーの障害の有無は失語があるとよく分からないのですが、アイトラッキングという非言語的な手段を使えば失語の影響を受けないのでその障害を検出できるということです。ただ結果はどうもすっきりしません。結果からは失語とワーキングメモリーが関連するということになりますが、記憶を一時避難させておく際に言語的なバックアップができないために生じたワーキングメモリーの低下なのか、損傷部位が失語とワーキングメモリーで重なる面があるから生じた低下なのか、単に失語だと脳の損傷量が大きいために生じたーワーキングメモリーの低下なのか、このままでは色々な解釈が可能です。ここはやはり脳の損傷量をマッチングさせた脳損傷非失語群を設定し、そことの比較をすべきでしょう。アイトラッキングを用いた評価は有望ですが、議論はデータが揃ってからということになるでしょう。 【a018】流暢失語症の談話における語彙不足の影響 ☆ 「The effect of lexical deficits on narrative disturbances in fluent aphasia」 Sara Andreetta, Andrea Marini Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p705-723 流暢失語症20名と健常者20名に談話をさせ、ミクロ言語学な語彙・文法障害がマクロ言語学な談話産生にどう影響するか検討した研究。結果、語彙障害は談話の一貫性を低くし、語彙の減少は産生エラーの一貫性と相関がみられたとのこと。これらからミクロ言語学な困難はマクロ言語学な処理に影響すると考えられ、ミクロ言語学とマクロ言語学それぞれのレベルを評価する必要がある、と著者らは結んでいます。 マクロ言語学とは談話など人の言語行動に関するあらゆる事柄を対象とした研究で、ミクロ言語学とは社会とは切り離した個人の言語構造などを対象とした研究です。従来の失語症分析はミクロ言語学的な視点が中心でしたが、近年はマクロ言語学の勃興を反映して失語に対しても談話研究が比較的盛んになされるようになってきました。要するにコミュニケーションとか伝達性という視点を入れて考えようということで、著者らもその重要性を提言したいようですが、今のところまだエポックメイキング的な展開には至っていないようです。 【a019】 外傷性脳損傷後のジェスチャーの使用:予備的な分析 ☆ 「The use of gesture following traumatic brain injury: a preliminary analysis」 Min Jung Kim, Julie A.G. Stierwalt, Leonard L. LaPointe ほか Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p665-684 30名の外傷性脳損傷者と32名の非脳損傷者にAdolescent成人喚語テストを行い、ジェスチャーの使用頻度やパターン、使用手を調査したというもの。結果、外傷性脳損傷者では3倍多くジェスチャーを使用しており、特に指差しが多かったとのこと。外傷性脳損傷者でのジェスチャーは語彙検索を容易にしているのではないかと著者らは推測しています。 ジェスチャーというのは非言語的コミュニケーション方法の代表的なものですが、健常者でも多用する人もいれば、ほとんど使わない人もいます。注目させようとして使う人もいれば、自分の抽象概念を形にしたくて使う人もいます。無意識に使っている人も多いと思います。ジェスチャーとは実に多様な意図が込められた、決して一様ではない現象です。脳損傷者、特に失語症者でジェスチャーがどう使われているのか、一度徹底的に分析してみることは必要なことと思われますが、意図や方法、病前習慣や伝達内容など全て勘案して分析しないとせっかくの労力がもったいないことになってしまいそうです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【f011】 「高次脳機能障害者の就労と神経心理学的検査成績との関係」☆総合リハビリテーション 43巻 7号、2015、p653-659 高次脳機能障害29名(平均32.1歳)に3か月間の注意力の認知訓練後、就労・未就労と神経心理学的検査の下位項目との関連を調べた研究。結果、認知訓練前ではWMS-R遅延、認知訓練後ではWAIS積木の得点が高いケースが就労者に多かったとのことです。 ────────────────────────── ◆編集室より ◆ ────────────────────────── 今号は雑誌発刊の谷間時期に当たっているため掲載論文が大変少なく、分野も偏ったものになってしまっています。しかも質的にも今ひとつで全体にパッとしない内容であることをお詫び申し上げます。 今号の中ではアイトラッキングシステムが気になりましたので、ここで言及します。アイトラッキングシステムは実験装置としては何十年も前からある、既によく知られた存在ですが、昔の装置は大掛かりで高価でとても使いにくいものでした。それが今はテクノロジーの進歩により、以前とは比較にならないぐらい小型化して安価になり扱いやすくなりました。前号でもアイトラッキングシステムを用いた研究論文を紹介しましたが、臨床研究に応用しやすくなってきていることは確かです。ただ、安価とはいっても数十万円はしますので、まだ日常臨床で気軽に使えるほどではありません。現時点ではあくまで研究のための装置という位置づけなのは致し方ないところです。しかしおそらく10年以内にメガネ型のようなウェアラブルディスプレイが実用化されると予測されます。もしメガネ型ならそのl利点を活かすために必然的にアイトラッキングシステムがその中核機能として利用されるはずです。そうなれば日常臨床への応用はぐんと進むと考えられます。その時が待ち遠しいものです。 ◎次号 発行予定日 2015年8月24日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク |
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2015 08,10 07:05 |
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【a017】 言語理解とワーキングメモリの寄与:失語症タイプの差異効果 ☆
「The contribution of working memory to language comprehension: differential effect of aphasia type」 M.V. Ivanova, O.V. Dragoy, S.V. Kuptsova, ほか Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p645-664 アイトラッキングを利用してワーキングメモリー課題を流暢性失語19名、非流暢性失語16名、健常者36名に実施、失語と認知機能障害の関連を検討した研究。結果、失語群はワーキングメモリー課題成績が有意に低下しており、非流暢群では言語理解との関連が見られた、とのこと。これらから著者らは失語には認知障害が合併する可能性があり、それらは言語症状をより悪化させる傾向がある、と結んでいます。 アイトラッキングは視線移動を可視化してくれる装置、ワーキングメモリーは数十秒〜数分間だけ作動する記憶の一時避難機構です。ワーキングメモリーの障害の有無は失語があるとよく分からないのですが、アイトラッキングという非言語的な手段を使えば失語の影響を受けないのでその障害を検出できるということです。ただ結果はどうもすっきりしません。結果からは失語とワーキングメモリーが関連するということになりますが、記憶を一時避難させておく際に言語的なバックアップができないために生じたワーキングメモリーの低下なのか、損傷部位が失語とワーキングメモリーで重なる面があるから生じた低下なのか、単に失語だと脳の損傷量が大きいために生じたーワーキングメモリーの低下なのか、このままでは色々な解釈が可能です。ここはやはり脳の損傷量をマッチングさせた脳損傷非失語群を設定し、そことの比較をすべきでしょう。アイトラッキングを用いた評価は有望ですが、議論はデータが揃ってからということになるでしょう。 【a018】流暢失語症の談話における語彙不足の影響 ☆ 「The effect of lexical deficits on narrative disturbances in fluent aphasia」 Sara Andreetta, Andrea Marini Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p705-723 流暢失語症20名と健常者20名に談話をさせ、ミクロ言語学な語彙・文法障害がマクロ言語学な談話産生にどう影響するか検討した研究。結果、語彙障害は談話の一貫性を低くし、語彙の減少は産生エラーの一貫性と相関がみられたとのこと。これらからミクロ言語学な困難はマクロ言語学な処理に影響すると考えられ、ミクロ言語学とマクロ言語学それぞれのレベルを評価する必要がある、と著者らは結んでいます。 マクロ言語学とは談話など人の言語行動に関するあらゆる事柄を対象とした研究で、ミクロ言語学とは社会とは切り離した個人の言語構造などを対象とした研究です。従来の失語症分析はミクロ言語学的な視点が中心でしたが、近年はマクロ言語学の勃興を反映して失語に対しても談話研究が比較的盛んになされるようになってきました。要するにコミュニケーションとか伝達性という視点を入れて考えようということで、著者らもその重要性を提言したいようですが、今のところまだエポックメイキング的な展開には至っていないようです。 【a019】 外傷性脳損傷後のジェスチャーの使用:予備的な分析 ☆ 「The use of gesture following traumatic brain injury: a preliminary analysis」 Min Jung Kim, Julie A.G. Stierwalt, Leonard L. LaPointe ほか Aphasiology Vol 29, Issue 6, 2015, p665-684 30名の外傷性脳損傷者と32名の非脳損傷者にAdolescent成人喚語テストを行い、ジェスチャーの使用頻度やパターン、使用手を調査したというもの。結果、外傷性脳損傷者では3倍多くジェスチャーを使用しており、特に指差しが多かったとのこと。外傷性脳損傷者でのジェスチャーは語彙検索を容易にしているのではないかと著者らは推測しています。 ジェスチャーというのは非言語的コミュニケーション方法の代表的なものですが、健常者でも多用する人もいれば、ほとんど使わない人もいます。注目させようとして使う人もいれば、自分の抽象概念を形にしたくて使う人もいます。無意識に使っている人も多いと思います。ジェスチャーとは実に多様な意図が込められた、決して一様ではない現象です。脳損傷者、特に失語症者でジェスチャーがどう使われているのか、一度徹底的に分析してみることは必要なことと思われますが、意図や方法、病前習慣や伝達内容など全て勘案して分析しないとせっかくの労力がもったいないことになってしまいそうです。 |
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2015 08,10 07:03 |
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【f011】 「高次脳機能障害者の就労と神経心理学的検査成績との関係」☆
総合リハビリテーション 43巻 7号、2015、p653-659 高次脳機能障害29名(平均32.1歳)に3か月間の注意力の認知訓練後、就労・未就労と神経心理学的検査の下位項目との関連を調べた研究。結果、認知訓練前ではWMS-R遅延、認知訓練後ではWAIS積木の得点が高いケースが就労者に多かったとのことです。 |
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