2024 11,23 18:15 |
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2015 08,24 07:31 |
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【a020】健忘失語症における意味プライミング:クロスモダール方法論を用いた調査 ☆
「Semantic priming in anomic aphasia: a focused investigation using cross-modal methodology」 Simone R. Howells and Elizabeth A. Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p744-761 11名の健忘失語症者と11名の健常者に語彙判断課題を実施、ターゲット語と関連語・無関連語・非語のペアで意味プライミング効果の有無を調べたという研究。 結果、健忘失語症者はコントロール群に比べ反応時間は遅いが、より短い潜時でプライム効果がみられたとのことでした。これらは新たな評価や技法に繋がる可能性があると著者らは結んでいます。 意味プライミング効果とは、事前に脳に入った刺激により脳の意味判断機能が活性化、つまりエンジンがかかった状態になり、次に入った刺激の意味把握がされやすくなるという現象です。 これを利用したトレーニング法としては意味セラピーという健忘失語症者の喚語訓練が有名です。今回の論文ではプライミングの状況を詳しく調べてはいますが、正直なところ意味セラピーを上回るような新たな評価や訓練法に繋がるデータとはいいがたい印象です。 著者らも具体的なビジョンは呈示していません。新たな評価や訓練法に繋げるにはなんらかのもうひとひねりが必要と思われます。 【a021】失語症における音声セグメンテーション ☆ 「Speech segmentation in aphasia」 Claudia Peñaloza, Annalisa Benetello, Leena Tuomiranta ほか Aphasiology Vol 29 Issue 6, 2015, p724-743 120名の若者と14名の慢性失語症者、そして14名の高齢者に人工言語を用いたセグメントテストを行い、セグメント能力を調べた研究。 結果、失語症者は全体ではセグメントはできており、高齢者と差はなかったが、個別にみると左下前頭領域損傷の4例がチャンスレベルを下回っていたとのこと。また、セグメント能力は失語症の重症度と関連はなく、言語性短期記憶と相関していたとのことでした。 セグメント能力とは「そこにいぬがいる」と連続して耳に聴こえた音に切れ目を入れ、「そこ」「に」「いぬ」「が」「いる」という言葉の連なりだな、と判断できる能力のことです。 これができなければ聴いた音を単語に分解できず意味の理解はできなくなってしまいます。セグメント能力から失語の理解障害を考えるというのはレアな視点ですが、問題はなぜセグメントが困難になるかということです。 著者らは言語性短期記憶の問題を指摘していますが、これのみに原因を帰するだけで良いのかは疑問です。理論的には、言語性短期記憶の問題だけでなく、音の認知が悪い場合、語彙判断が悪い場合、いずれも考えられます。ここは重要な点ですのでもう一段深い検証が必要でしょう。 PR |
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