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2016 04,25 06:20 |
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【a044】急性期病院における言語聴覚士はの失語症マネージメントの理解 ☆☆
「“Communication is taking a back seat”: speech pathologists’ perceptions of aphasia management in acute hospital settings」 Abby Fosterac, Robyn O’Halloranbc, Miranda Rosebc & Linda Worrallac* School of Health and Rehabilitation Sciences, The University of Queensland, Brisbane, Australia Aphasiology Vol 30, Issue 5, 2016, p585-608 脳血管障害急性期担当の14名の言語聴覚士に半構造化インタビューを実施、彼らの経験や思考、マネージメントが失語症治療にどのような影響を与えるか調査した研究。 結果、(1) 急性期言語聴覚士の役割の理解が急性期失語症マネージメントに関連、 (2) プログラムの優先順位の検討がプロ意識に関連、 (3) 失語症に嚥下障害が合併した場合の嚥下障害治療の優先度を理解、(4) 言語聴覚士による失語症とそのマネージメントにおける強い信念、 (5) 急性期失語症マネージメントのファシリテーターを理解、との知見が得られたとのこと。 複雑で多様な要素が言語聴覚士の失語症マネージメントに影響しており、エビデンスに基づいた治療を可能にしていると考えられたとのことです。 珍しい言語聴覚士をテーマにした研究。言語聴覚士の能力や資質には人により随分と差があるのが事実です。 言語聴覚士の職能団体では資質向上を図るために講習会を実施したり、専門認定制度などを設けたりしていますが、どれほどの実効性があるかは不明です。 この論文のような研究はひとつの参考になるでしょう。形だけの講習ではなく、実際にマネージメントができるようになるシステムの構築が望まれます。 PR |
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2016 04,24 06:12 |
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【a041】Eメールによるソーシャルネットワーク:失語症者のEメール使用パターンの研究 ☆☆
「Social networking through email: studying email usage patterns of persons with aphasia 」 Abdullah Al Mahmud & Jean-Bernard Martens Center for Design Innovation (CDI), School of Design, Swinburne University of Technology, Melbourne, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p186-210「Digital Technology and Aphasia」 高齢失語症者とセラピストのコミュニケーションを促進するためにオランダ失語症連合が開発したソーシャルネットワーキングプログラムの使用パターンをログとアンケートにより調査した研究。 結果、登録のみのユーザー、すぐにやめてしまったユーザーもありましたが、9996件のメールのうち80.1%は失語症者からの送信であり、失語症者の大部分が送信と受信の両方をしていたとのこと。 現在の状況は第一歩としてなかなか良い、と著者らは結んでいます。 言語機能の改善に双方向のコミュニケーションは欠かせませんが、そのための電子メールの活用は身近で手軽であり、自己修正も可能、しかも楽しく、24時間可能。 ということで非常に有望な手段です。 オランダでも積極的に利用されているようですね。なんとか日本でも広めたいところですが、日本では保険診療の枠組みの中で行うことになるので、なかなか難しいと思われます。 一部のデイサービスなどでは行われていますが、オランダのようにNPOが主体となって推進するなど、なんらかのシステム構築が必要でしょう。 【a042】コンピュータによる失語症リハビリの効果:文献的検討 ☆☆ 「Effect of computer therapy in aphasia: a systematic review 」 Carmen Zheng, Lauren Lynch & Nicholas Taylor Speech Pathology Department, Eastern Health, Peter James Centre, Burwood East, Victoria, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p211-244 失語症に対するコンピュータによるリハビリと臨床家によるリハビリの有効性を比較するために文献的検討を行った研究。 結果、コンピュータによるリハビリの効果は6つの研究で報告されており、臨床家によるリハビリと比較した3つの研究では双方で改善がみられ、有意な差はなかったとのこと。 コンピュータによるリハビリは有効であり、さらなる研究が必要だろうと著者らは述べています。 コンピュータ的なものを使ったリハビリは以前から少しずつなされていましたが、あくまで教材の一部という位置づけでしかありませんでした。 しかしテクノロジーの進化によりコンピュータで双方向的なやりとりが可能になってきた現在では、臨床家によるリハビリとの完全互換もありうるところまで来ています。 近い将来、失語症リハビリにおける言語聴覚士の役割はプログラムの選択とチェックのみになり、実際のリハビリはコンピュータで自動化されるでしょう。 【a043】動詞健忘性失語症へのスマートタブレットを使った自主トレーニング:2例のケーススタディ ☆☆☆ 「Smart tablet for smart self-administered treatment of verb anomia: two single-case studies in aphasia 」 Sonia Routhier, Nathalie Bier & Joël Macoir a Département de réadaptation, Université Laval, Québec, Québec, Canada Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p269-289 脳卒中後の慢性期動詞健忘性失語症2名にスマートタブレットを使った自宅での自主トレーニングを試みた研究。方法は以下の4過程。 1) ベースライン評価、2)タブレット使用訓練、3)タブレットでの自主トレーニング、4)20回の自主トレーニング後評価。 結果、2名とも動詞の呼称で大幅な改善がみられたが、未訓練語への般化はみられなかった、とのこと。また、両者ともタブレットでの自主トレーニングには非常に満足していたとのことでした。タブレットの使用は、リハビリを強化するために興味深い方法である、と著者らは結んでいます。 未訓練語への般化困難はこのような症例に通常見られる現象です。 そこからするとタブレットと通常訓練には特に差はなく、タブレットでまるまる代行が可能ということになります。 しかも満足度が高かったとのことで、いつでもどこでも利用できるタブレットの利便性がその背景にあるのでしょう。 これまでコンピュータといえばマウスとキーボードのついたパソコンでしたが、今後はタブレットやスマホが中心となり、より簡単な操作でいつでも使えるようになるでしょう。 |
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2016 04,24 05:58 |
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【a040】後天性失読症に対するテキスト音読訓練での視線行動 ☆☆☆
「Behavioural and eye-movement outcomes in response to text-based reading treatment for acquired alexia」 Esther S K & Shannon F L Department of Communication Sciences and Disorders, University of Alberta, Edmonton, Canada ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016, p60-86 後天性失読症のケースにMultiple Oral Rereadingと Oral Reading for Language in Aphasia を12週間実施、 治療の前後と5ヶ月後にアイトラッキングと一緒に単一ワードやテキスト読み上げの行動評価を行った研究。 結果、治療後と5ヶ月後には視線位置が開始前より単語の中心方向にずれており、文字-意味読書方略の使用を促進が示唆された、とのこと。 著者らは視線に注目することの有用性が実証された、としています。 アイトラッキングは視線の動きを捉える装置です。これを用いて失読症の回復過程を分析した大変興味深い研究です。 回復とともに視線位置が単語の中心になったということは、それまで一文字ずつみて視覚分析していたものが単語全体をみてパターン認識できるようになったということでしょう。 回復過程を示す非常に面白い結果です。もっと多数例でデータをとれば失読の障害過程による新たなタイプ分類ができる可能性もあります。今後が非常に期待されます。 |
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2016 04,24 05:45 |
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【a038】読みの改善:後天性失読症のためのマルチ要素訓練:ケーススタディ ☆
「Reading recovery: a case study using a multicomponent treatment for acquired alexia」 Jessica Browna, Karen Huxa, Stephanie Fairbanksa Department of Special Education and Communication Disorders, University of Nebraska-Lincoln, USA Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016 p23-44 左半球脳血管障害により失読症を呈し発症後5ヶ月の86歳女性に、一回1時間、計40回5ヶ月間の治療セッションを実施、 (a)子音・母音・子音(CVC)の言葉の復号化、(b)文字認知、呼称、および関連音素の書記素-音素変換、(c)斉唱・復唱、 (d)アナグラムの解読・模写・想起、(e)機能性教材の読み、を実施したもの。 結果、文字認知、書記素-音素変換、および単一単語の復号化のスキルを向上させるのに有効であったとのこと。 症例は全般に改善し独力で読み書きが可能となったが、時に絵の手がかりが必要であったとのことです。 読みに関するかなり多様な課題を行っています。入力・出力・難易度・特殊規則などほぼ全ての面にアプローチすることにより全般的な改善を図ろうとするものと思われます。 対極には、文字認知・書記素-音素変換・特殊読みなどの情報処理過程のどこに問題があるか分析してピンポイントにアプローチするやり方があります。 どちらが効果的でしょうか。現時点ではなんとも言えません。比較検討が望まれます。 【a039】意味性失語における可逆文の理解 ☆ 「Comprehension of reversible constructions in semantic aphasia」 Olga Dragoy, Mira Bergelson, Ekaterina Iskra ほか National Research University Higher School of Economics, Neurolinguistics Laboratory, Moscow, Russian Federation Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016, p1-22 ロシア語話者の意味失語6名、運動失語12名、感覚失語12名、非脳損傷者12名に文章と画像のマッチング課題を実施、前置詞や可逆文の理解状況について比較したという研究。 結果、意味失語群では可逆文の理解は良好だが非可逆文の理解で困難を示す傾向がみられたとのこと。 意味失語では語順で理解がなされており、ステレオタイプな感覚-運動方略によって障害を補っていると考えられた、と著者らは述べています。 意味失語とは語義失語とも呼ばれ、ある物品の意味理解や呼称ができなくなる障害です。 健忘失語のようですが、意味が失われたように言語理解も呼称もできなくなるのが特徴。意味記憶障害に分類されないのは物品の使用などができるからです。 この研究はあまり言及されない意味失語の文法能力について調べたものですが、理論的に考えてあまり腑に落ちない結果です。 症例数も少ないですし、もう少し慎重に検討したいところです。 |
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2016 02,08 05:41 |
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【a037】言語聴覚学科学生の失語症グループ療法体験 ☆「Student speech pathologists’ experiences of an aphasia therapy group」
Laura Cubirka, Scott Barnes & Alison Ferguson School of Humanities and Social Science, University of Newcastle, Newcastle, Australia ほか Aphasiology Vol 29, Issue 12, 2015 p1497-1515 言語聴覚学科教官の監督のもと、3名の失語症者と2名の配偶者、4名の言語聴覚学科学生で失語症グループ療法を実施、終了後半構造化インタビューを行い、成果を検討した、というもの。 結果、学生にとっては失語症グループ療法の理解やコミュニケーション方法の学習に約立つことがわかったとのこと。 失語症グループ療法への学生の参加は、学生・参加者いずれにもメリットがある、と著者らは結んでいます。 学生にとって実地での経験は何にも勝る、ということを如実に表した報告ですが、失語症グループ療法はメリットはあるものの治療機関では人員などの問題でなかなか実施しにくいのが現状です。 このように学生の学習の一環として行えば、一石二鳥なのではないかと思われます。ただし教官の監督は欠かせないでしょう。 |
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2016 01,17 04:34 |
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【a034】単語検索のための治療後の接続演説の中で測定効果:原発性進行性失語症の2名による研究 ☆
「Measuring gains in connected speech following treatment for word retrieval: a study with two participants with primary progressive aphasia」 Karen Croot, Cathleen Taylorcd, Stefanie Abele ほか The School of Psychology, University of Sydney, Sydney, Australia ほか Aphasiology Vol 29, Special Issue 11 Generalisation of Aphasia Intervention, 2015, p1265-1288 原発性進行性失語症の2名に、構造化インタビューと呼称課題による事前テストを行った後、自宅で2週間1日10〜15分、コンピュータを用いて目標語の復唱・音読・呼称・書字課題を実施したという研究。 結果、訓練語の呼称で改善がみられたが、構造化インタビューや非訓練語でも改善がみられたとのこと。 急性発症の失語症・進行性失語、双方の会話による喚語訓練の可能性と限界をさらに検討する必要がある、と著者らは結んでいます。 進行性失語症の改善は難しく進行を遅らせるのがやっとというのが一般的な認識です。 コンピュータを用いているとはいえ、ここで採用されているのは特に目新しい方法ではなく、どのような作用で改善が得られたのかよくわかりません。 対象も2名とごく限られたものですので、とりあえず多数例に実施した結果の報告が待たれます。 【a035】失語症における談話の文理解訓練の効果 ☆ 「The effect of a sentence comprehension treatment on discourse comprehension in aphasia」 Swathi Kiran, Carrie Des Roches, Sarah Villard ほか Aphasia Research Laboratory, Speech, Language & Hearing Sciences, Boston University, Boston, MA, USA Aphasiology Vol 29, Special Issue 11 Generalisation of Aphasia Intervention, 2015, p1289-1311 40名の失語症者に口頭命令または文と絵のマッチング課題と可逆文・非可逆文を含むストーリーの理解課題を実施、訓練前後での正答率・反応時間を測定したという研究。 結果、全般的に改善はみられたものの、口頭命令と文-絵マッチング課題の違いによる差はみられず、著者らの開発した談話理解テスト (TSEDC)でも大きな改善はみられなかったとのこと。 文理解訓練とTSEDCの差が文法能力の般化を妨げているのではないかと著者らは考察しています。 談話理解テスト (Test of Syntactic Effects on Discourse Comprehension:TSEDC)とはLevyらが2010年に発表したもので、 簡単な文と複雑な文、能動文と受動文、可逆文と非可逆文の理解を350〜400語からなる文を用いて調べる構成になっています。 口頭命令と文-絵マッチング課題で差がなかったとのことですが、これらは選択肢の作り方によって差が生じるようになったり生じないようになったりすると思われます。 談話理解テストで改善がみられなかったのは難易度・感度の問題と思われます。この差が実用性の差になるというのは著者らの言う通りと思われます。 【a036】失語症者の文の産生障害に対する前訓練の研究:般化のための動詞ネットワーク強化訓練による多様性の理解に向けて ☆☆ 「Investigation of pretreatment sentence production impairments in individuals with aphasia: towards understanding the linguistic variables that impact generalisation in Verb Network Strengthening Treatment」 Lisa A. Edmonds, Jessica Obermeyer, Brayleah Kernan Department of Communication Sciences and Disorders, Teachers College, Columbia University, New York, NY, USA ほか Aphasiology Vol 29, Special Issue 11 Generalisation of Aphasia Intervention, 2015, p1312-1344 失語症者11名に、動詞ネットワーク強化訓練(VNeST)を前訓練および後訓練として10週間で35時間行い、名詞・動詞の産生能力や文構成の正確さを評価した、という研究。 結果、全てのケースで喚語能力や文構成能力に改善がみられ、非訓練語・非訓練文についても簡略化がみられるなどの工夫はあったが般化がみられた、とのこと。 著者らは、VNeSTはタイプや重症度を問わず適応があり、非常に一般化に有用な手段であると結んでいます。 動詞ネットワーク強化訓練( Verb Network Strengthening Treatment : VNeST)は 動詞を中心とした意味ネットワーク(McRae, Ferretti, & Amyote, 1997) を活性化させることにより名詞・動詞の単語・文の喚語を促進することを目的とした失語症の治療法です。 イメージとしては意味セラピーと統語訓練をミックスしたような方法といった感じでしょうか。 意味セラピーはある程度注目された方法でしたが効果としてはあまり強くないのが残念でした。 これはそれよりもリーチする手がかりが多い分だけ有望と思われます。現時点では期待の方法です。 |
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2015 12,28 09:01 |
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【a033】SECTとMAST:原発性進行性失語症の文法的能力を評価するための新しいテスト☆
「 SECT and MAST: new tests to assess grammatical abilities in primary progressive aphasia」 Ornella V. Billette, Seyed A. Sajjadi, Karalyn Patterson ほか German Centre for Neurodegenerative Diseases (DZNE), Magdeburg Site, Magdeburg, Germany ほか Aphasiology Vol 29 Issue 10, 2015, p1135-1151 原発性進行性失語症(PPA)の下位分類のために、簡単に文法的能力を評価できる文章理解テスト(SECT:聴覚バージョン・視覚バージョン)と文産生テスト(MAST)を作成、 41名のPPA患者と21名のアルツハイマー病患者、30名の健常者に実施したという研究。 結果、患者群ではSECT・MASTとも有意に低下がみられ、自発語・文の省略数との間には強い相関がみられたとのこと。 話し言葉で文法的な難しさをみることのできる簡単なテストとしてSECT・MASTは妥当と著者らは結論づけています。 SECTとMASTは話し言葉に文法的な難しさを反映することのできる簡単なテストです。 進行性失語症では文の省略はあっても文法的能力はあまり低下しないと思われており、文法的能力による下位分類が妥当かどうか分かりません。 このあたりを明らかにするためにも簡便なテストは歓迎すべきでしょう。とりあえず続報が待たれます。 |
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2015 12,14 11:05 |
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【a031】 亜急性期ニューロリハビリテーションにおける失語症CI療法 ☆☆
「 Constraint-induced aphasia therapy in subacute neurorehabilitation」 Lisbeth Frølund Kristensena*, Inger Steensiga, Anders Degn Pedersena, ほか Hammel Neurorehabilitation Centre and University Research Clinic, Denmark Aphasiology Vol 29, Issue 10, 2015, p1152-1163 脳卒中亜急性期の失語症者11名にオリジナルバージョンの失語症CI療法(CIAT)を10日間計30時間実施、修正バージョンとどちらが適しているか検討したという研究。 結果、言語機能と実生活上のコミュニケーションの改善の差は統計的に有意ではなかったが、言語機能全般には改善がみられたとのこと。 これらから亜急性期患者には修正のないオリジナルバージョンでのCIATが使用可と考えられた、と著者らは結論づけています。 失語症CI療法(constraint-induced aphasia therapy)とは、CI療法の考え方を失語症に応用したものです。 身ぶりや描画・書字などの代償戦略の使用を制限、音声言語のみでコミュニケーションをとらせることで改善を促すという考え方です。 一日あたり2〜4時間で10日間を練習に当てますが、2〜4週間で実施するバージョンもあるとのこと。 この論文によると、亜急性期はオリジナル通りで問題なかったとのことです。 上肢へのCI療法の実施には、ある程度動かせる場合にしか適応がないこと、拘束はストレスを過剰に与えないよう6時間以内にすることなど、幾つか注意点があります。 失語症CI療法の適応基準をもう少し詳しく知りたいところです。 【a032】 失文法および健忘失語の名詞・動詞呼称における提示時間と反応時間による音韻促進効果 ☆ 「 Phonological facilitation effects on naming latencies and viewing times during noun and verb naming in agrammatic and anomic aphasia」 Jiyeon Leea & Cynthia K Department of Speech, Language, and Hearing Sciences, Purdue University, USA, ほか Aphasiology Vol 29, Issue 10, 2015, p1164-1188. 30名の失文法失語症者と20名の健忘失語症者に、1)動詞と名詞の呼称課題、2)アイトラッキングパラダイムを用いた音韻誘導による呼称課題を行い、失語症における音韻促進のメカニズムの検討を行った、という研究。 結果、失文法失語症者では動詞で音韻促進効果がみられたが、健忘失語症者では名詞で音韻促進効果がみられた、とのこと。 失文法失語症と健忘失語症では音韻促進に際して異なる語彙活性化システムが働くことが示唆された、と著者らは述べています。 アイトラッキングパラダイムとは視覚提示時間をコントロールしたり視線を計測する研究方法です。 失文法失語症者で動詞、健忘失語症者で名詞に音韻促進効果がみられるというように差が生じた理由はよくわかりません。 健忘失語では名詞の想起困難が主なので動詞の方は天井効果で促進効果が出なかったのかもしれません。 失文法失語症はおそらく運動性失語と考えられます。運動性失語であれば構音プログラム過程の障害が想定されますので、健忘失語と語彙活性化システムが異なるのは当然というべきでしょう。 |
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2015 11,09 04:03 |
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【a028】 文とそれ以上へ:軽度失語症のシングルケースセラピーの報告 ☆
「To the sentence and beyond: a single case therapy report for mild aphasia」 Julie Hickin, Beejal Mehta and Lucy Dipper Aphasiology Vol 29 Issue 9, 2015, p1038-1061 左脳塞栓により軽度失語を呈した発症後2年の22歳女性に対し、機能障害ベース療法を週一回16セッション実施したという報告。 結果、症例はセッション終了後にシンデレラの物語叙述で複雑な文を産生することができるようになったとのこと。 機能障害ベース療法は複雑な文章生産や談話能力を向上させる可能性がある、と著者らは結んでいます。 機能障害ベース療法(Impairment-based therapies)とは、まず動詞を想起し、次いで文の構造を策定することに焦点を当てた治療法です。 我が国で行われている統語的アプローチと類似した方法といえるでしょう。 発症後2年で改善がみられたケースですが、この症例がこれまでどんな治療訓練を受けてきたか、そこの詳細が明らかにならないと、 本当に機能障害ベース療法が良かったのか、なぜ改善したのか、という話に繋がらないと思われます。もう少し情報が欲しいところです。 |
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2015 10,26 10:54 |
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【a025】発語失行と失語症を伴う5名のためのスピーチ音楽療法(SMTA)の有効性 ☆☆
「The effectiveness of Speech-Music Therapy for Aphasia (SMTA) in five speakers with Apraxia of Speech and aphasia」 Joost Hurkmans, Roel Jonkers, Madeleen de Bruijn, ほか Aphasiology Vol 29, Issue 8, 2015, p939-964 5名の発語失行を伴う失語症者にスピーチ音楽療法(SMTA)を週2回24セッション実施したという報告。 結果、全員のディアドコで改善傾向がみられたが、うち4名はディアドコの構音にも、2名は単語の構音にも改善がみられた、とのこと。 そして5名中3名は比較対照の心理言語学的テストでは変化がなかったそうです。スピーチ音楽療法は構音だけでなく日常生活でのコミュニケーションの改善にも重要と著者らは述べています。 スピーチ音楽療法(Speech-Music Therapy for Aphasia : SMTA)は発語失行の改善を目的に言語リハビリと音楽療法の原理をミックスして作られたものです。 こちらに動画がありますのでご参考にしてください。https://m.youtube.com/watch?v=QA0pNmG8Bfw 発語失行の改善法ではミュージック・イントネーション・セラピーが知られていますが、SMTAの原理はそれと大差ありません。 ただSMTAはリズムに乗せて行う部分が強調されており、その分容易な印象があります。方法はボイスセラピーのアクセント法っぽいですね。試してみるのも面白います。 【a026】地域失語症グループにおける消費者の視点:心理的幸福度の文献分析☆ 「Consumer perspectives on community aphasia groups: a narrative literature review in the context of psychological well-being」 Michelle C. Attard, Lucette Lanyon, Leanne Togher ほか Aphasiology Volume 29, Issue 8, 2015, p983-1019 地域失語症者グループに参加している失語症者とその家族の心理的幸福度を明らかにするために文献的分析を行ったという報告。 結果、地域失語症者グループは失語症者とその家族の心理的幸福に積極的に貢献しており、生活の目的、環境適応力、自律性、個人的成長、および自己受容と正の相関がみられたとのこと。 臨床家はグループの特性をよく考慮し、成果が出るよう指導・助言すべきと著者らは結んでいます。 次も同じ分野のレビューですのでまとめて次でコメントします。 【a027】 失語症・脳卒中・その他のグループ参加への利点の気づき:「私達はちょうど、これがクリスマスだと思いました」 ☆☆ 「 “We just thought that this was Christmas”: perceived benefits of participating in aphasia, stroke, and other groups」 Annette Rotherham, Tami Howe and Gina Tillard Aphasiology Vol 29, Issue 8, 2015, p965-982 10名の失語症者と6名の家族に半構造化インタビューを実施、グループのメリットを調査した研究。 結果、グループに参加することには、心理社会的面、コミュニケーション面、情報面、社会参加面、その他など25項目のメリットが挙げられたが、 これらはグループのファシリテーターが言語聴覚士なのか、仲間なのか、ボランティアなのか、また脳卒中グループか一般人かによって変わったとのことでした。 著者らはグループが適切に進行されるような幅の広さが大切と結んでいます。 上もこれもグループのメリットを強調した報告ですが、ひとくくりにグループといっても構成員やファシリテーターによって雰囲気や進み方などがまるで違い、 全て同列に述べられるものかどうか疑問、というコメントは以前にもしたところです。 ファシリテーターの違いを指摘したこの報告は納得できるものですが、立場だけでなくどのような態度が関与するのかもう少し踏み込みたいところです。 上の報告に関連して言えば、地域ベースと混合で差があるかどうか比較データがあると説得力が増すでしょう。 |
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