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2016 04,25 06:23 |
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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年4月4週・最終号 目次 01. 認知症・・・・・・【d028】 02. 失語症・・・・・・【a044】 03. 前頭葉機能ほか・・【f015】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d028】非流暢性失語症との比較における進行性意味性失語症の行動評価 ☆ 「Behavioral Evolution of Progressive Semantic Aphasia in Comparison with Nonfluent Aphasia」 Gómez-Tortosa E, Rigual R, Prieto-Jurczynska C. ほか Departments of Neurology and Epidemiology and Biostatistics, Fundación Jiménez Díaz, Spain Dement Geriatr Cogn Disord Vol. 41 No.1-2, 2016, p1-8 進行性意味性失語41名と非流暢性失語39名について、発症から1〜3年と5〜13年の行動面の症状を比較した研究。結果、進行性意味性失語の方が頻繁に錯乱がみられ抗精神薬の必要性が高く、妄想/幻覚と関連していたとのこと。一方非流暢性失語ではうつ症状が多く、抗うつ薬を要したそうです。グループごとに異なる治療とケアサポートが必要だろうと著者らは結んでいます。 これら認知症に伴って生じる精神行動症状は、適切な薬剤投与やケアによってある程度コントロールが可能です。 非流暢性失語では寡黙になり意思を表示しにくくなるので、ストレスが溜まりうつになりやすいかもしれません。 これらの症状が二次的なものなのかどうかはぜひ知りたいところです。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a044】急性期病院における言語聴覚士はの失語症マネージメントの理解 ☆☆ 「“Communication is taking a back seat”: speech pathologists’ perceptions of aphasia management in acute hospital settings」 Abby Fosterac, Robyn O’Halloranbc, Miranda Rosebc & Linda Worrallac* School of Health and Rehabilitation Sciences, The University of Queensland, Brisbane, Australia Aphasiology Vol 30, Issue 5, 2016, p585-608 脳血管障害急性期担当の14名の言語聴覚士に半構造化インタビューを実施、彼らの経験や思考、マネージメントが失語症治療にどのような影響を与えるか調査した研究。 結果、(1) 急性期言語聴覚士の役割の理解が急性期失語症マネージメントに関連、 (2) プログラムの優先順位の検討がプロ意識に関連、 (3) 失語症に嚥下障害が合併した場合の嚥下障害治療の優先度を理解、(4) 言語聴覚士による失語症とそのマネージメントにおける強い信念、 (5) 急性期失語症マネージメントのファシリテーターを理解、との知見が得られたとのこと。 複雑で多様な要素が言語聴覚士の失語症マネージメントに影響しており、エビデンスに基づいた治療を可能にしていると考えられたとのことです。 珍しい言語聴覚士をテーマにした研究。言語聴覚士の能力や資質には人により随分と差があるのが事実です。 言語聴覚士の職能団体では資質向上を図るために講習会を実施したり、専門認定制度などを設けたりしていますが、どれほどの実効性があるかは不明です。 この論文のような研究はひとつの参考になるでしょう。形だけの講習ではなく、実際にマネージメントができるようになるシステムの構築が望まれます。 ◆04. 前頭葉機能ほか ◆ Frontal function & others 【f015】失行的手指模倣障害における意味の効果 ☆☆☆ 「Effect of meaning on apraxic finger imitation deficits」 Achilles G.R, FinkM.H, FischerA. ほか Cognitive Neuroscience, Institute of Neuroscience and Medicine, Research Centre, Germany. Neuropsychologia February Vol.82, 2016, p74-83 失行的な手指模倣障害における意味の影響を検討するために、まず健常者45名が10種の無意味手指ジェスチャーを有意味か無意味か判定。 結果、10種のうち3つを健常者の98%が有意味と判定。その上で左脳損傷255名、左脳損傷113名、失語症者208名にジェスチャー模倣課題を実施。 結果、全例で有意味な手指ジェスチャーの方が良好であり 、特に失語の重症度と関連があった、とのこと。 動作模倣の検出には無意味ジェスチャーが検出力が高いのではないかと著者らは結んでいます。 失行のテストに手指ジェスチャーは非常によく使われますが、そこに意味があると難易度が下がってしまうという研究。 有意味では意味を手掛かりにできるので当然と思われます。 問題は、無意味と思われているジェスチャーでも人によっては意味を見いだしてできてしまうことがある、ということです。 そしてジェスチャーは文化圏によって種類も意味も異なることを我々は忘れてはなりません。ジェスチャーとは意外に奥深い存在なのです。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── さて一年間に渡りお届けして参りましたこのメルマガですが、本号をもちまして終刊とさせていただきます。 もともと20年以上前から個人的に文献を読んではデータベースソフトに要約を入力をしていたものを、メルマガにしてみてはと思い立って始めてみたものです。 おかげさまをもちまして終刊前のこの数号でも新規購読登録をしていただける方が何人もいらっしゃって、ここで終わりにさせていただくのは心苦しいのですが、 個人的な事情などで多忙となり、継続が難しくなってしまいましたので、丸一年というタイミングもあり、終刊とさせていただきました。 サイトの方は残しておきますが、今後こちらをどうするかは全く未定です。 もし新たにメルマガを始めるなど、皆様のお目にとまる時がありましたら、その折にはよろしくお願い申し上げます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年4月4週・最終号(通巻23号) ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ PR |
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2016 04,25 06:22 |
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【d028】非流暢性失語症との比較における進行性意味性失語症の行動評価 ☆
「Behavioral Evolution of Progressive Semantic Aphasia in Comparison with Nonfluent Aphasia」 Gómez-Tortosa E, Rigual R, Prieto-Jurczynska C. ほか Departments of Neurology and Epidemiology and Biostatistics, Fundación Jiménez Díaz, Spain Dement Geriatr Cogn Disord Vol. 41 No.1-2, 2016, p1-8 進行性意味性失語41名と非流暢性失語39名について、発症から1〜3年と5〜13年の行動面の症状を比較した研究。結果、進行性意味性失語の方が頻繁に錯乱がみられ抗精神薬の必要性が高く、妄想/幻覚と関連していたとのこと。一方非流暢性失語ではうつ症状が多く、抗うつ薬を要したそうです。グループごとに異なる治療とケアサポートが必要だろうと著者らは結んでいます。 これら認知症に伴って生じる精神行動症状は、適切な薬剤投与やケアによってある程度コントロールが可能です。 非流暢性失語では寡黙になり意思を表示しにくくなるので、ストレスが溜まりうつになりやすいかもしれません。 これらの症状が二次的なものなのかどうかはぜひ知りたいところです。 |
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2016 04,25 06:20 |
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【a044】急性期病院における言語聴覚士はの失語症マネージメントの理解 ☆☆
「“Communication is taking a back seat”: speech pathologists’ perceptions of aphasia management in acute hospital settings」 Abby Fosterac, Robyn O’Halloranbc, Miranda Rosebc & Linda Worrallac* School of Health and Rehabilitation Sciences, The University of Queensland, Brisbane, Australia Aphasiology Vol 30, Issue 5, 2016, p585-608 脳血管障害急性期担当の14名の言語聴覚士に半構造化インタビューを実施、彼らの経験や思考、マネージメントが失語症治療にどのような影響を与えるか調査した研究。 結果、(1) 急性期言語聴覚士の役割の理解が急性期失語症マネージメントに関連、 (2) プログラムの優先順位の検討がプロ意識に関連、 (3) 失語症に嚥下障害が合併した場合の嚥下障害治療の優先度を理解、(4) 言語聴覚士による失語症とそのマネージメントにおける強い信念、 (5) 急性期失語症マネージメントのファシリテーターを理解、との知見が得られたとのこと。 複雑で多様な要素が言語聴覚士の失語症マネージメントに影響しており、エビデンスに基づいた治療を可能にしていると考えられたとのことです。 珍しい言語聴覚士をテーマにした研究。言語聴覚士の能力や資質には人により随分と差があるのが事実です。 言語聴覚士の職能団体では資質向上を図るために講習会を実施したり、専門認定制度などを設けたりしていますが、どれほどの実効性があるかは不明です。 この論文のような研究はひとつの参考になるでしょう。形だけの講習ではなく、実際にマネージメントができるようになるシステムの構築が望まれます。 |
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2016 04,25 06:17 |
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【f015】失行的手指模倣障害における意味の効果 ☆☆☆
「Effect of meaning on apraxic finger imitation deficits」 Achilles G.R, FinkM.H, FischerA. ほか Cognitive Neuroscience, Institute of Neuroscience and Medicine, Research Centre, Germany. Neuropsychologia February Vol.82, 2016, p74-83 失行的な手指模倣障害における意味の影響を検討するために、まず健常者45名が10種の無意味手指ジェスチャーを有意味か無意味か判定。 結果、10種のうち3つを健常者の98%が有意味と判定。その上で左脳損傷255名、左脳損傷113名、失語症者208名にジェスチャー模倣課題を実施。 結果、全例で有意味な手指ジェスチャーの方が良好であり 、特に失語の重症度と関連があった、とのこと。 動作模倣の検出には無意味ジェスチャーが検出力が高いのではないかと著者らは結んでいます。 失行のテストに手指ジェスチャーは非常によく使われますが、そこに意味があると難易度が下がってしまうという研究。 有意味では意味を手掛かりにできるので当然と思われます。 問題は、無意味と思われているジェスチャーでも人によっては意味を見いだしてできてしまうことがある、ということです。 そしてジェスチャーは文化圏によって種類も意味も異なることを我々は忘れてはなりません。ジェスチャーとは意外に奥深い存在なのです。 |
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2016 04,24 06:15 |
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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年4月2週号 目次 01. 失語症・・・・・・【a041】【a042】【a043】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 失語症 ◆ Aphasia 【a041】Eメールによるソーシャルネットワーク:失語症者のEメール使用パターンの研究 ☆☆ 「Social networking through email: studying email usage patterns of persons with aphasia 」 Abdullah Al Mahmud & Jean-Bernard Martens Center for Design Innovation (CDI), School of Design, Swinburne University of Technology, Melbourne, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p186-210「Digital Technology and Aphasia」 高齢失語症者とセラピストのコミュニケーションを促進するためにオランダ失語症連合が開発したソーシャルネットワーキングプログラムの使用パターンをログとアンケートにより調査した研究。 結果、登録のみのユーザー、すぐにやめてしまったユーザーもありましたが、9996件のメールのうち80.1%は失語症者からの送信であり、失語症者の大部分が送信と受信の両方をしていたとのこと。 現在の状況は第一歩としてなかなか良い、と著者らは結んでいます。 言語機能の改善に双方向のコミュニケーションは欠かせませんが、そのための電子メールの活用は身近で手軽であり、自己修正も可能、しかも楽しく、24時間可能。 ということで非常に有望な手段です。 オランダでも積極的に利用されているようですね。なんとか日本でも広めたいところですが、日本では保険診療の枠組みの中で行うことになるので、なかなか難しいと思われます。 一部のデイサービスなどでは行われていますが、オランダのようにNPOが主体となって推進するなど、なんらかのシステム構築が必要でしょう。 【a042】コンピュータによる失語症リハビリの効果:文献的検討 ☆☆ 「Effect of computer therapy in aphasia: a systematic review」 Carmen Zheng, Lauren Lynch & Nicholas Taylor Speech Pathology Department, Eastern Health, Peter James Centre, Burwood East, Victoria, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p211-244 失語症に対するコンピュータによるリハビリと臨床家によるリハビリの有効性を比較するために文献的検討を行った研究。 結果、コンピュータによるリハビリの効果は6つの研究で報告されており、臨床家によるリハビリと比較した3つの研究では双方で改善がみられ、有意な差はなかったとのこと。 コンピュータによるリハビリは有効であり、さらなる研究が必要だろうと著者らは述べています。 コンピュータ的なものを使ったリハビリは以前から少しずつなされていましたが、あくまで教材の一部という位置づけでしかありませんでした。 しかしテクノロジーの進化によりコンピュータで双方向的なやりとりが可能になってきた現在では、臨床家によるリハビリとの完全互換もありうるところまで来ています。 近い将来、失語症リハビリにおける言語聴覚士の役割はプログラムの選択とチェックのみになり、実際のリハビリはコンピュータで自動化されるでしょう。 【a043】動詞健忘性失語症へのスマートタブレットを使った自主トレーニング:2例のケーススタディ ☆☆☆ 「Smart tablet for smart self-administered treatment of verb anomia: two single-case studies in aphasia」 Sonia Routhier, Nathalie Bier & Joël Macoir a Département de réadaptation, Université Laval, Québec, Québec, Canada Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p269-289 脳卒中後の慢性期動詞健忘性失語症2名にスマートタブレットを使った自宅での自主トレーニングを試みた研究。方法は以下の4過程。 1) ベースライン評価、2)タブレット使用訓練、3)タブレットでの自主トレーニング、4)20回の自主トレーニング後評価。 結果、2名とも動詞の呼称で大幅な改善がみられたが、未訓練語への般化はみられなかった、とのこと。また、両者ともタブレットでの自主トレーニングには非常に満足していたとのことでした。タブレットの使用は、リハビリを強化するために興味深い方法である、と著者らは結んでいます。 未訓練語への般化困難はこのような症例に通常見られる現象です。 そこからするとタブレットと通常訓練には特に差はなく、タブレットでまるまる代行が可能ということになります。 しかも満足度が高かったとのことで、いつでもどこでも利用できるタブレットの利便性がその背景にあるのでしょう。 これまでコンピュータといえばマウスとキーボードのついたパソコンでしたが、今後はタブレットやスマホが中心となり、より簡単な操作でいつでも使えるようになるでしょう。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号はAphasiologyで特集「Digital Technology and Aphasia」が組まれていましたので、そこから文献を選択しました。 今後高齢化社会になるにつれ、リハビリのニーズは爆発的に増加しますが、マンパワーとコストの問題でセラピストがそれを支えるのは不可能と思われます。 そこでデジタルテクノロジーが代わってそれを支えることになるでしょう。 運動障害系はアシストロボット、高次脳障害系はコミュニケーションロボットが活用されることになるでしょう。 バーチャルリアリティや拡張現実も積極的に使われると思われます。セラピストはその中で管理と運用というエンジニアのような役割を果たすことになるでしょう。 IT技術の進化により今後リハビリも大きくその姿を変えて行くと思われます。 次号が最終号となります。よろしくお願い申し上げます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年4月2週号(通巻22号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ |
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2016 04,24 06:12 |
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【a041】Eメールによるソーシャルネットワーク:失語症者のEメール使用パターンの研究 ☆☆
「Social networking through email: studying email usage patterns of persons with aphasia 」 Abdullah Al Mahmud & Jean-Bernard Martens Center for Design Innovation (CDI), School of Design, Swinburne University of Technology, Melbourne, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p186-210「Digital Technology and Aphasia」 高齢失語症者とセラピストのコミュニケーションを促進するためにオランダ失語症連合が開発したソーシャルネットワーキングプログラムの使用パターンをログとアンケートにより調査した研究。 結果、登録のみのユーザー、すぐにやめてしまったユーザーもありましたが、9996件のメールのうち80.1%は失語症者からの送信であり、失語症者の大部分が送信と受信の両方をしていたとのこと。 現在の状況は第一歩としてなかなか良い、と著者らは結んでいます。 言語機能の改善に双方向のコミュニケーションは欠かせませんが、そのための電子メールの活用は身近で手軽であり、自己修正も可能、しかも楽しく、24時間可能。 ということで非常に有望な手段です。 オランダでも積極的に利用されているようですね。なんとか日本でも広めたいところですが、日本では保険診療の枠組みの中で行うことになるので、なかなか難しいと思われます。 一部のデイサービスなどでは行われていますが、オランダのようにNPOが主体となって推進するなど、なんらかのシステム構築が必要でしょう。 【a042】コンピュータによる失語症リハビリの効果:文献的検討 ☆☆ 「Effect of computer therapy in aphasia: a systematic review 」 Carmen Zheng, Lauren Lynch & Nicholas Taylor Speech Pathology Department, Eastern Health, Peter James Centre, Burwood East, Victoria, Australia ほか Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p211-244 失語症に対するコンピュータによるリハビリと臨床家によるリハビリの有効性を比較するために文献的検討を行った研究。 結果、コンピュータによるリハビリの効果は6つの研究で報告されており、臨床家によるリハビリと比較した3つの研究では双方で改善がみられ、有意な差はなかったとのこと。 コンピュータによるリハビリは有効であり、さらなる研究が必要だろうと著者らは述べています。 コンピュータ的なものを使ったリハビリは以前から少しずつなされていましたが、あくまで教材の一部という位置づけでしかありませんでした。 しかしテクノロジーの進化によりコンピュータで双方向的なやりとりが可能になってきた現在では、臨床家によるリハビリとの完全互換もありうるところまで来ています。 近い将来、失語症リハビリにおける言語聴覚士の役割はプログラムの選択とチェックのみになり、実際のリハビリはコンピュータで自動化されるでしょう。 【a043】動詞健忘性失語症へのスマートタブレットを使った自主トレーニング:2例のケーススタディ ☆☆☆ 「Smart tablet for smart self-administered treatment of verb anomia: two single-case studies in aphasia 」 Sonia Routhier, Nathalie Bier & Joël Macoir a Département de réadaptation, Université Laval, Québec, Québec, Canada Aphasiology Vol 30, Issue 2-3, 2016, p269-289 脳卒中後の慢性期動詞健忘性失語症2名にスマートタブレットを使った自宅での自主トレーニングを試みた研究。方法は以下の4過程。 1) ベースライン評価、2)タブレット使用訓練、3)タブレットでの自主トレーニング、4)20回の自主トレーニング後評価。 結果、2名とも動詞の呼称で大幅な改善がみられたが、未訓練語への般化はみられなかった、とのこと。また、両者ともタブレットでの自主トレーニングには非常に満足していたとのことでした。タブレットの使用は、リハビリを強化するために興味深い方法である、と著者らは結んでいます。 未訓練語への般化困難はこのような症例に通常見られる現象です。 そこからするとタブレットと通常訓練には特に差はなく、タブレットでまるまる代行が可能ということになります。 しかも満足度が高かったとのことで、いつでもどこでも利用できるタブレットの利便性がその背景にあるのでしょう。 これまでコンピュータといえばマウスとキーボードのついたパソコンでしたが、今後はタブレットやスマホが中心となり、より簡単な操作でいつでも使えるようになるでしょう。 |
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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年3月4週号 目次 01. 認知症・・・・・・【d026】【d027】 02. 失語症・・・・・・【a040】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d026】前頭側頭型認知症表現型の生存率 ☆ 「Survival in Frontotemporal Dementia Phenotypes: A Meta-Analysis」 Kansal K, Mareddy M, Sloane K.L. ほか Division of Geriatric Psychiatry and Neuropsychiatry, Johns Hopkins University School of Medicine, USA ほか Dementia and Geriatric cognitive disorder Vol.41, 2016, p109-122 PubMedを用い、27の研究の2462人分のデータから前頭側頭型認知症における 進行性非流暢性失語・意味性認知症・筋萎縮性側索硬化症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症の各タイプの生存率を調査したもの。 結果、筋萎縮性側索硬化症が2.5年で最短であった以外、他のタイプの生存率に差は見られず、年齢や性別も影響していなかったとのこと。 今後さらに潜在的な原因の探求が必要だろうと著者らは述べています。 前頭側頭型認知症と進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症は臨床的には無関係のようですが、病理的にはどちらも神経軸索内にタウ蛋白が蓄積しやすいという似た性質を持っています。 そこでこれらの生存率を比較したもの。筋萎縮性側索硬化症はいずれ呼吸筋の運動障害を起こすので生存率最短になるのでしょう。 他のものは症状の進行というよりは合併症の存在が死因となるため差が出にくいものと思われます。 【d027】アルツハイマー病、軽度認知障害と健常高齢者における記憶の自己参照効果:アイデンティティの影響」☆ 「Self-reference effect on memory in healthy aging, mild cognitive impairment and Alzheimer's disease: Influence of identity valence」 Mona Leblond, Mickaël Laisney,Virginie Lamidey ほか Laboratoire de Neuropsychologie et Imagerie de la Mémoire Humaine, Unité de Recherche Université de Caen Normandie, France. Cortex Vol.74, January, 2016, p177-190 20名の健常者と40名の高齢者(軽度認知障害20名、軽度アルツハイマー病20名)に記憶課題とアイデンティティに関するアンケートを実施、その関連を調査した研究。 結果、健常者ではアイデンティティを記憶に充分利用していたが、軽度認知障害ではポジティブな事項にのみアイデンティティを用いていたとのこと(軽度アルツハイマーのデータは分析不適格)。 これらは自尊心と自己関連記憶が保持されているためではないか、と著者らは推察しています。 アイデンティティの形成には記憶が密接に関連するためこれまで多くの研究がなされています。 ここから逆にアイデンティティの補助で記憶想起のきっかけが得られるのではと発想した研究です。 結局アルツハイマー群はデータが不充分で結論は出なかったようですが、可能性のひとつとして今後が注目されます。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a040】後天性失読症に対するテキスト音読訓練での視線行動 ☆☆☆ 「Behavioural and eye-movement outcomes in response to text-based reading treatment for acquired alexia」 Esther S K & Shannon F L Department of Communication Sciences and Disorders, University of Alberta, Edmonton, Canada ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016, p60-86 後天性失読症のケースにMultiple Oral Rereadingと Oral Reading for Language in Aphasia を12週間実施、 治療の前後と5ヶ月後にアイトラッキングと一緒に単一ワードやテキスト読み上げの行動評価を行った研究。 結果、治療後と5ヶ月後には視線位置が開始前より単語の中心方向にずれており、文字-意味読書方略の使用を促進が示唆された、とのこと。 著者らは視線に注目することの有用性が実証された、としています。 アイトラッキングは視線の動きを捉える装置です。これを用いて失読症の回復過程を分析した大変興味深い研究です。 回復とともに視線位置が単語の中心になったということは、それまで一文字ずつみて視覚分析していたものが単語全体をみてパターン認識できるようになったということでしょう。 回復過程を示す非常に面白い結果です。もっと多数例でデータをとれば失読の障害過程による新たなタイプ分類ができる可能性もあります。今後が非常に期待されます。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号ではアイトラッキングを用いて後天性失読症の視線行動変化を調べた研究が注目されました。 逐次読みからパターン認識への移行は処理の効率化であり、速読などもこれに当たります。 今回の研究では多様な音読課題を行っていますが、パターン認識を誘導するような課題を設定できれば効率もより高まるでしょう。 さて昨年5月より発行を続けて参りましたこのメールマガジンですが、編集長の本業多忙につき、4月25日発行の第23号を持ちまして終刊とさせていただきたいと存じます。 その旨、皆様方にはご承知おきくださいますようお願い申し上げます。なお4月11日発行の第22号は予定通りです。終刊までよろしくお願い申し上げます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年3月4週号(通巻21号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ |
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2016 04,24 06:00 |
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【d026】前頭側頭型認知症表現型の生存率 ☆
「Survival in Frontotemporal Dementia Phenotypes: A Meta-Analysis」 Kansal K, Mareddy M, Sloane K.L. ほか Division of Geriatric Psychiatry and Neuropsychiatry, Johns Hopkins University School of Medicine, USA ほか Dementia and Geriatric cognitive disorder Vol.41, 2016, p109-122 PubMedを用い、27の研究の2462人分のデータから前頭側頭型認知症における 進行性非流暢性失語・意味性認知症・筋萎縮性側索硬化症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症の各タイプの生存率を調査したもの。 結果、筋萎縮性側索硬化症が2.5年で最短であった以外、他のタイプの生存率に差は見られず、年齢や性別も影響していなかったとのこと。 今後さらに潜在的な原因の探求が必要だろうと著者らは述べています。 前頭側頭型認知症と進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症は臨床的には無関係のようですが、病理的にはどちらも神経軸索内にタウ蛋白が蓄積しやすいという似た性質を持っています。 そこでこれらの生存率を比較したもの。筋萎縮性側索硬化症はいずれ呼吸筋の運動障害を起こすので生存率最短になるのでしょう。 他のものは症状の進行というよりは合併症の存在が死因となるため差が出にくいものと思われます。 【d027】アルツハイマー病、軽度認知障害と健常高齢者における記憶の自己参照効果:アイデンティティの影響」☆ 「Self-reference effect on memory in healthy aging, mild cognitive impairment and Alzheimer's disease: Influence of identity valence」 Mona Leblond, Mickaël Laisney,Virginie Lamidey ほか Laboratoire de Neuropsychologie et Imagerie de la Mémoire Humaine, Unité de Recherche Université de Caen Normandie, France. Cortex Vol.74, January, 2016, p177-190 20名の健常者と40名の高齢者(軽度認知障害20名、軽度アルツハイマー病20名)に記憶課題とアイデンティティに関するアンケートを実施、その関連を調査した研究。 結果、健常者ではアイデンティティを記憶に充分利用していたが、軽度認知障害ではポジティブな事項にのみアイデンティティを用いていたとのこと(軽度アルツハイマーのデータは分析不適格)。 これらは自尊心と自己関連記憶が保持されているためではないか、と著者らは推察しています。 アイデンティティの形成には記憶が密接に関連するためこれまで多くの研究がなされています。 ここから逆にアイデンティティの補助で記憶想起のきっかけが得られるのではと発想した研究です。 結局アルツハイマー群はデータが不充分で結論は出なかったようですが、可能性のひとつとして今後が注目されます。 |
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2016 04,24 05:58 |
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【a040】後天性失読症に対するテキスト音読訓練での視線行動 ☆☆☆
「Behavioural and eye-movement outcomes in response to text-based reading treatment for acquired alexia」 Esther S K & Shannon F L Department of Communication Sciences and Disorders, University of Alberta, Edmonton, Canada ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016, p60-86 後天性失読症のケースにMultiple Oral Rereadingと Oral Reading for Language in Aphasia を12週間実施、 治療の前後と5ヶ月後にアイトラッキングと一緒に単一ワードやテキスト読み上げの行動評価を行った研究。 結果、治療後と5ヶ月後には視線位置が開始前より単語の中心方向にずれており、文字-意味読書方略の使用を促進が示唆された、とのこと。 著者らは視線に注目することの有用性が実証された、としています。 アイトラッキングは視線の動きを捉える装置です。これを用いて失読症の回復過程を分析した大変興味深い研究です。 回復とともに視線位置が単語の中心になったということは、それまで一文字ずつみて視覚分析していたものが単語全体をみてパターン認識できるようになったということでしょう。 回復過程を示す非常に面白い結果です。もっと多数例でデータをとれば失読の障害過程による新たなタイプ分類ができる可能性もあります。今後が非常に期待されます。 |
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2016 04,24 05:53 |
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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年3月2週号 目次 01. 認知症・・・・・・【d025】 02. 失語症・・・・・・【a038】【a039】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d025】進行性の意味性呼称障害の訓練語彙をどう統制すればいいのか ☆ 「How to constrain and maintain a lexicon for the treatment of progressive semantic naming deficits: Principles of item selection for formal semantic therapy」 Jamie Reillya, Eleanor M. Saffran Center for Cognitive Neuroscience, and Department of Communication Sciences and Disorders, Temple University, Philadelphia, USA Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016 p126-156 著者によると「アルツハイマー病と原発性進行性失語症における意味記憶の訓練として、誤りなし学習条件での呼称課題がよく用いられる。 しかし具体的な材料や方法は定まっていない。そこで意味記憶を5年間維持することを目標に100の単語からなる基本マイクロ語彙セットを提唱した」とのこと。 著者らはさらに語彙の使用頻度と概念構造を生かした繰り返しトレーニング法も提案しています。 米国では失語症治療に当たって、目的別に段階的教材が非常に豊富に市販で用意されています。いかにも失語症治療の歴史が長く合理的な米国らしいといえます。 同様に意味記憶の訓練教材も整備したいというのは当然の流れです。目標が機能の5年間維持というのも少し長いですが比較的妥当なところです。 効果の実証はこれからでしょう。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a038】読みの改善:後天性失読症のためのマルチ要素訓練:ケーススタディ ☆ 「Reading recovery: a case study using a multicomponent treatment for acquired alexia」 Jessica Browna, Karen Huxa, Stephanie Fairbanksa Department of Special Education and Communication Disorders, University of Nebraska-Lincoln, USA Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016 p23-44 左半球脳血管障害により失読症を呈し発症後5ヶ月の86歳女性に、一回1時間、計40回5ヶ月間の治療セッションを実施、 (a)子音・母音・子音(CVC)の言葉の復号化、(b)文字認知、呼称、および関連音素の書記素-音素変換、(c)斉唱・復唱、 (d)アナグラムの解読・模写・想起、(e)機能性教材の読み、を実施したもの。 結果、文字認知、書記素-音素変換、および単一単語の復号化のスキルを向上させるのに有効であったとのこと。 症例は全般に改善し独力で読み書きが可能となったが、時に絵の手がかりが必要であったとのことです。 読みに関するかなり多様な課題を行っています。入力・出力・難易度・特殊規則などほぼ全ての面にアプローチすることにより全般的な改善を図ろうとするものと思われます。 対極には、文字認知・書記素-音素変換・特殊読みなどの情報処理過程のどこに問題があるか分析してピンポイントにアプローチするやり方があります。 どちらが効果的でしょうか。現時点ではなんとも言えません。比較検討が望まれます。 【a039】意味性失語における可逆文の理解 ☆ 「Comprehension of reversible constructions in semantic aphasia」 Olga Dragoy, Mira Bergelson, Ekaterina Iskra ほか National Research University Higher School of Economics, Neurolinguistics Laboratory, Moscow, Russian Federation Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016, p1-22 ロシア語話者の意味失語6名、運動失語12名、感覚失語12名、非脳損傷者12名に文章と画像のマッチング課題を実施、前置詞や可逆文の理解状況について比較したという研究。 結果、意味失語群では可逆文の理解は良好だが非可逆文の理解で困難を示す傾向がみられたとのこと。 意味失語では語順で理解がなされており、ステレオタイプな感覚-運動方略によって障害を補っていると考えられた、と著者らは述べています。 意味失語とは語義失語とも呼ばれ、ある物品の意味理解や呼称ができなくなる障害です。 健忘失語のようですが、意味が失われたように言語理解も呼称もできなくなるのが特徴。意味記憶障害に分類されないのは物品の使用などができるからです。 この研究はあまり言及されない意味失語の文法能力について調べたものですが、理論的に考えてあまり腑に落ちない結果です。 症例数も少ないですし、もう少し慎重に検討したいところです。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号では特に注目の研究はありませんでしたが、三つ目の意味性失語関連のものは少し珍しく懐かしい印象でした。 意味性失語は1960年代頃に今のロシアの高名な神経心理学者ルリヤが提唱した失語症のタイプです。 70〜80年代には日本でもよくその名称を聞きましたが、90年代から情報処理的な分析法が広まるにつれ、徐々に聞かなくなっていきました。 この論文はロシアの研究者によるものであり、なるほど、と妙に納得しました。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年03月2週号(通巻20号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ |
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