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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年3月4週号 目次 01. 認知症・・・・・・【d026】【d027】 02. 失語症・・・・・・【a040】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d026】前頭側頭型認知症表現型の生存率 ☆ 「Survival in Frontotemporal Dementia Phenotypes: A Meta-Analysis」 Kansal K, Mareddy M, Sloane K.L. ほか Division of Geriatric Psychiatry and Neuropsychiatry, Johns Hopkins University School of Medicine, USA ほか Dementia and Geriatric cognitive disorder Vol.41, 2016, p109-122 PubMedを用い、27の研究の2462人分のデータから前頭側頭型認知症における 進行性非流暢性失語・意味性認知症・筋萎縮性側索硬化症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症の各タイプの生存率を調査したもの。 結果、筋萎縮性側索硬化症が2.5年で最短であった以外、他のタイプの生存率に差は見られず、年齢や性別も影響していなかったとのこと。 今後さらに潜在的な原因の探求が必要だろうと著者らは述べています。 前頭側頭型認知症と進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症は臨床的には無関係のようですが、病理的にはどちらも神経軸索内にタウ蛋白が蓄積しやすいという似た性質を持っています。 そこでこれらの生存率を比較したもの。筋萎縮性側索硬化症はいずれ呼吸筋の運動障害を起こすので生存率最短になるのでしょう。 他のものは症状の進行というよりは合併症の存在が死因となるため差が出にくいものと思われます。 【d027】アルツハイマー病、軽度認知障害と健常高齢者における記憶の自己参照効果:アイデンティティの影響」☆ 「Self-reference effect on memory in healthy aging, mild cognitive impairment and Alzheimer's disease: Influence of identity valence」 Mona Leblond, Mickaël Laisney,Virginie Lamidey ほか Laboratoire de Neuropsychologie et Imagerie de la Mémoire Humaine, Unité de Recherche Université de Caen Normandie, France. Cortex Vol.74, January, 2016, p177-190 20名の健常者と40名の高齢者(軽度認知障害20名、軽度アルツハイマー病20名)に記憶課題とアイデンティティに関するアンケートを実施、その関連を調査した研究。 結果、健常者ではアイデンティティを記憶に充分利用していたが、軽度認知障害ではポジティブな事項にのみアイデンティティを用いていたとのこと(軽度アルツハイマーのデータは分析不適格)。 これらは自尊心と自己関連記憶が保持されているためではないか、と著者らは推察しています。 アイデンティティの形成には記憶が密接に関連するためこれまで多くの研究がなされています。 ここから逆にアイデンティティの補助で記憶想起のきっかけが得られるのではと発想した研究です。 結局アルツハイマー群はデータが不充分で結論は出なかったようですが、可能性のひとつとして今後が注目されます。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a040】後天性失読症に対するテキスト音読訓練での視線行動 ☆☆☆ 「Behavioural and eye-movement outcomes in response to text-based reading treatment for acquired alexia」 Esther S K & Shannon F L Department of Communication Sciences and Disorders, University of Alberta, Edmonton, Canada ほか Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016, p60-86 後天性失読症のケースにMultiple Oral Rereadingと Oral Reading for Language in Aphasia を12週間実施、 治療の前後と5ヶ月後にアイトラッキングと一緒に単一ワードやテキスト読み上げの行動評価を行った研究。 結果、治療後と5ヶ月後には視線位置が開始前より単語の中心方向にずれており、文字-意味読書方略の使用を促進が示唆された、とのこと。 著者らは視線に注目することの有用性が実証された、としています。 アイトラッキングは視線の動きを捉える装置です。これを用いて失読症の回復過程を分析した大変興味深い研究です。 回復とともに視線位置が単語の中心になったということは、それまで一文字ずつみて視覚分析していたものが単語全体をみてパターン認識できるようになったということでしょう。 回復過程を示す非常に面白い結果です。もっと多数例でデータをとれば失読の障害過程による新たなタイプ分類ができる可能性もあります。今後が非常に期待されます。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号ではアイトラッキングを用いて後天性失読症の視線行動変化を調べた研究が注目されました。 逐次読みからパターン認識への移行は処理の効率化であり、速読などもこれに当たります。 今回の研究では多様な音読課題を行っていますが、パターン認識を誘導するような課題を設定できれば効率もより高まるでしょう。 さて昨年5月より発行を続けて参りましたこのメールマガジンですが、編集長の本業多忙につき、4月25日発行の第23号を持ちまして終刊とさせていただきたいと存じます。 その旨、皆様方にはご承知おきくださいますようお願い申し上げます。なお4月11日発行の第22号は予定通りです。終刊までよろしくお願い申し上げます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年3月4週号(通巻21号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ PR |
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