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■認知症・高次脳文献レビュー
2016年3月2週号 目次 01. 認知症・・・・・・【d025】 02. 失語症・・・・・・【a038】【a039】 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d025】進行性の意味性呼称障害の訓練語彙をどう統制すればいいのか ☆ 「How to constrain and maintain a lexicon for the treatment of progressive semantic naming deficits: Principles of item selection for formal semantic therapy」 Jamie Reillya, Eleanor M. Saffran Center for Cognitive Neuroscience, and Department of Communication Sciences and Disorders, Temple University, Philadelphia, USA Neuropsychological Rehabilitation Vol 26, Issue 1, 2016 p126-156 著者によると「アルツハイマー病と原発性進行性失語症における意味記憶の訓練として、誤りなし学習条件での呼称課題がよく用いられる。 しかし具体的な材料や方法は定まっていない。そこで意味記憶を5年間維持することを目標に100の単語からなる基本マイクロ語彙セットを提唱した」とのこと。 著者らはさらに語彙の使用頻度と概念構造を生かした繰り返しトレーニング法も提案しています。 米国では失語症治療に当たって、目的別に段階的教材が非常に豊富に市販で用意されています。いかにも失語症治療の歴史が長く合理的な米国らしいといえます。 同様に意味記憶の訓練教材も整備したいというのは当然の流れです。目標が機能の5年間維持というのも少し長いですが比較的妥当なところです。 効果の実証はこれからでしょう。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a038】読みの改善:後天性失読症のためのマルチ要素訓練:ケーススタディ ☆ 「Reading recovery: a case study using a multicomponent treatment for acquired alexia」 Jessica Browna, Karen Huxa, Stephanie Fairbanksa Department of Special Education and Communication Disorders, University of Nebraska-Lincoln, USA Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016 p23-44 左半球脳血管障害により失読症を呈し発症後5ヶ月の86歳女性に、一回1時間、計40回5ヶ月間の治療セッションを実施、 (a)子音・母音・子音(CVC)の言葉の復号化、(b)文字認知、呼称、および関連音素の書記素-音素変換、(c)斉唱・復唱、 (d)アナグラムの解読・模写・想起、(e)機能性教材の読み、を実施したもの。 結果、文字認知、書記素-音素変換、および単一単語の復号化のスキルを向上させるのに有効であったとのこと。 症例は全般に改善し独力で読み書きが可能となったが、時に絵の手がかりが必要であったとのことです。 読みに関するかなり多様な課題を行っています。入力・出力・難易度・特殊規則などほぼ全ての面にアプローチすることにより全般的な改善を図ろうとするものと思われます。 対極には、文字認知・書記素-音素変換・特殊読みなどの情報処理過程のどこに問題があるか分析してピンポイントにアプローチするやり方があります。 どちらが効果的でしょうか。現時点ではなんとも言えません。比較検討が望まれます。 【a039】意味性失語における可逆文の理解 ☆ 「Comprehension of reversible constructions in semantic aphasia」 Olga Dragoy, Mira Bergelson, Ekaterina Iskra ほか National Research University Higher School of Economics, Neurolinguistics Laboratory, Moscow, Russian Federation Aphasiology Vol 30, Issue 1, 2016, p1-22 ロシア語話者の意味失語6名、運動失語12名、感覚失語12名、非脳損傷者12名に文章と画像のマッチング課題を実施、前置詞や可逆文の理解状況について比較したという研究。 結果、意味失語群では可逆文の理解は良好だが非可逆文の理解で困難を示す傾向がみられたとのこと。 意味失語では語順で理解がなされており、ステレオタイプな感覚-運動方略によって障害を補っていると考えられた、と著者らは述べています。 意味失語とは語義失語とも呼ばれ、ある物品の意味理解や呼称ができなくなる障害です。 健忘失語のようですが、意味が失われたように言語理解も呼称もできなくなるのが特徴。意味記憶障害に分類されないのは物品の使用などができるからです。 この研究はあまり言及されない意味失語の文法能力について調べたものですが、理論的に考えてあまり腑に落ちない結果です。 症例数も少ないですし、もう少し慎重に検討したいところです。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号では特に注目の研究はありませんでしたが、三つ目の意味性失語関連のものは少し珍しく懐かしい印象でした。 意味性失語は1960年代頃に今のロシアの高名な神経心理学者ルリヤが提唱した失語症のタイプです。 70〜80年代には日本でもよくその名称を聞きましたが、90年代から情報処理的な分析法が広まるにつれ、徐々に聞かなくなっていきました。 この論文はロシアの研究者によるものであり、なるほど、と妙に納得しました。 ◎認知症・高次脳文献レビュー 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2016年03月2週号(通巻20号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ PR |
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