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■認知症・高次脳文献レビュー Lite版
2015年12月2週号 目次 01. 認知症・・・・・・レビュー1件 02. 失語症・・・・・・レビュー2件 編集室より ※注目度を☆・☆☆・☆☆☆で表しています ◆01. 認知症 ◆ Dementia 【d019】認知症患者の急性期老年精神科での入院治療は、精神神経症状を改善させるが、機能低下を招く ☆ 「Acute Psychogeriatric Inpatient Treatment Improves Neuropsychiatric Symptoms but Impairs the Level of Functioning in Patients with Dementia」 Alanen H, Pitkänen A, Suontaka-Jamalainen K, ほか Neuropsychiatry and Geriatric Psychiatry, Administration Centre, Tampere University Hospital, Tampere University Hospital, Finland ほか Dement Geriatr Cogn Disord Vol 40, No 5-6, 2015, p290-296 行動障害を持ち急性期老年精神科入院中の認知症患者89名に、入院前後でNPI・MMSE・バーテルインデックス・ADCSADLを測定、入院の影響を調査したという研究。 結果、平均44日間の入院中に、精神神経症状のみ大幅に改善がみられたが、NPIは34.6点から19.5点に、ADLは32.2点から21.7点に低下したとのこと。 抗精神病薬・抗不安薬の用量とMMSEには変化はなかったそうです。これらから精神神経症状の薬物治療を行う際に、入院治療は薦められないと著者らは結んでいます。 確かに認知症の方では、入院時が最も元気で、入院が長引くと徐々に元気がなくなっていったり、反応が悪くなったりということが少なからずあります。 ただし同じ入院生活でも、運動や認知のリハビリを行ったり、食堂で三食を食べたり、集団で歌を歌ったりなどの活動をしている場合と、ベッドで日がな寝ている場合とでは結果が随分違うことが予測されます。 何もしないただの入院であればこのような低下は必然と言えるでしょう。活動的な入院をした場合との比較が望まれます。 ◆02. 失語症 ◆ Aphasia 【a031】 亜急性期ニューロリハビリテーションにおける失語症CI療法 ☆☆ 「 Constraint-induced aphasia therapy in subacute neurorehabilitation」 Lisbeth Frølund Kristensena*, Inger Steensiga, Anders Degn Pedersena, ほか Hammel Neurorehabilitation Centre and University Research Clinic, Denmark Aphasiology Vol 29, Issue 10, 2015, p1152-1163 脳卒中亜急性期の失語症者11名にオリジナルバージョンの失語症CI療法(CIAT)を10日間計30時間実施、修正バージョンとどちらが適しているか検討したという研究。 結果、言語機能と実生活上のコミュニケーションの改善の差は統計的に有意ではなかったが、言語機能全般には改善がみられたとのこと。 これらから亜急性期患者には修正のないオリジナルバージョンでのCIATが使用可と考えられた、と著者らは結論づけています。 失語症CI療法(constraint-induced aphasia therapy)とは、CI療法の考え方を失語症に応用したものです。 身ぶりや描画・書字などの代償戦略の使用を制限、音声言語のみでコミュニケーションをとらせることで改善を促すという考え方です。 一日あたり2〜4時間で10日間を練習に当てますが、2〜4週間で実施するバージョンもあるとのこと。 この論文によると、亜急性期はオリジナル通りで問題なかったとのことです。 上肢へのCI療法の実施には、ある程度動かせる場合にしか適応がないこと、拘束はストレスを過剰に与えないよう6時間以内にすることなど、幾つか注意点があります。 失語症CI療法の適応基準をもう少し詳しく知りたいところです。 【a032】 失文法および健忘失語の名詞・動詞呼称における提示時間と反応時間による音韻促進効果 ☆ 「 Phonological facilitation effects on naming latencies and viewing times during noun and verb naming in agrammatic and anomic aphasia」 Jiyeon Leea & Cynthia K Department of Speech, Language, and Hearing Sciences, Purdue University, USA, ほか Aphasiology Vol 29, Issue 10, 2015, p1164-1188. 30名の失文法失語症者と20名の健忘失語症者に、1)動詞と名詞の呼称課題、2)アイトラッキングパラダイムを用いた音韻誘導による呼称課題を行い、失語症における音韻促進のメカニズムの検討を行った、という研究。 結果、失文法失語症者では動詞で音韻促進効果がみられたが、健忘失語症者では名詞で音韻促進効果がみられた、とのこと。 失文法失語症と健忘失語症では音韻促進に際して異なる語彙活性化システムが働くことが示唆された、と著者らは述べています。 アイトラッキングパラダイムとは視覚提示時間をコントロールしたり視線を計測する研究方法です。 失文法失語症者で動詞、健忘失語症者で名詞に音韻促進効果がみられるというように差が生じた理由はよくわかりません。 健忘失語では名詞の想起困難が主なので動詞の方は天井効果で促進効果が出なかったのかもしれません。 失文法失語症はおそらく運動性失語と考えられます。運動性失語であれば構音プログラム過程の障害が想定されますので、健忘失語と語彙活性化システムが異なるのは当然というべきでしょう。 ─────── ◆編集室より ◆ ─────── 今号では「亜急性期ニューロリハビリテーションにおける失語症CI療法」が興味深い論文でした。 CI療法とは、健側の上肢などを拘束して使えなくしてしまうことにより、麻痺した箇所を強制的に使わせて回復を促すというリハビリ方法です。 日本では兵庫医科大学などで主に取り組まれているようですが、これを失語に応用したのが失語症CI療法です。 ジェスチャーや書字などの代用手段を使えなくして強制的に言葉を使わせることで麻痺のCI療法と同じ仕組みを実現させようという理屈です。 なんとも新しいというべきでしょう。ただし病識やコミュニケーション意欲が乏しいケース、代用手段の使用そのものが難しいケースでは使えないと思われます。 上肢同様に効果を高めるために注意すべき点が他にもありそうです。他法との併用も可能でしょう。研究の進展が望まれます。 ◎認知症・高次脳文献レビュー Lite版 〜 忙しい医療・福祉職のための最新知識 〜 2015年12月2週号(通巻15号) 毎月第2・第4月曜日発行 ◎発行:ブレイン・ボイス・ネットワーク http://brainvoicenet.aikotoba.jp/ ◎次号 発行予定日 2015年12月28日(月) ◎おことわり:記事のレビューおよび解説は執筆者個人の所感であり、 必ずしも学術的な定説に従わない場合があります。その旨必ずご了承ください。 ◎レビューの中でよく分からない箇所や解説を求めたい部分がございましたら下記アドレスまでメールでお気軽にお尋ねください。QAとしてメルマガ内でお答えさせていただきます。 ◎文献レビューは注目度が高いと思われるものを編集室で選択しております。 そのため掲載される文献の領域は毎号異なります。 ◎内容に関するご質問・お問い合わせ先: → brain.voice.net@gmail.com (C). ブレイン・ボイス・ネットワーク PR |
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